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重い荷物を背負っている夢
6.
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「基本的にさ、楽して生きたいんだよね。俺は…」
三戸さんがそう呟いたのは、今日の分の配送を終えて、会社に戻る道の途中だった。その後の配送は順調だった。道の案内は僕がしたけど、それ以外はいつもとは違いテキパキとした動きで、本当にこれが三戸さんなんだろうかと思ってしまった。そんな中で呟いた言葉だった。
「だから、何事にも手を抜きたいんだ。分かる?」
分かるような気もするけど、分かるとは言いたくない気もして、
「はぁ」
と答えた。
「まあ、大概、これ言うと、怒られるんだけど、ははは」
それはそうだろうと思う。
「一生懸命頑張っている人を見てると、凄いと思うんだけど、自分には出来ないんだよね」
どこか悟ったように言った。
「…でも、出来ますよね?」
僕は今日の三戸さんの仕事のやり方を見ていった。
「こういうと、更に怒られるんだけど、意外と何でも出来ちゃうんだよ、俺は…」
何か分かった気がする。三戸さんに感じたイライラと言うのが。この人、意外と何でも器用にこなせるタイプなんだと思う。それを何となく周りに感じさせるんだ。だから、出来るのにやらないと思わせるから、手を抜いているように見えて、周りを苛立たせるんだと思った。
「器用貧乏って奴だよ」
そう言った時にはちょっと苦々しい表情になった。
「…何でやらないんですか?」
あんまり深い事を聞かない方が良いんだろうか。でも、聞きたくなってしまう。
「うーん。何でだろう。…、何かね。すぐに分かっちゃうんだよね。自分が出来る限界みたいなのが…」
「…」
「…、まあ、そんなの言い訳、ただの面倒くさがり、性格がいい加減とか言われると、それまで何だけど…」
「…」
どう言っていいかわからず、言葉を発せられなかった。
「まあ、俺みたく人生、半分ドロップアウトしているような人間に言われたくないと思うけど、楽して生きようとするのも、結構、大変なんだよ」
「楽したいのに大変なんですか?」
「おー、何か難しい哲学だね」
茶化すように言われて、ちょっとむっとしたけど、何だかムキになって恥ずかしいとも思ってしまう。
「まあ、俺みたいな、いい加減の人間の言う事がだから気にしないで、ははは」
どこか誤魔化すようにも聞こえた。
僕は三戸さんの言っていた言葉の意味を考えて黙ってしまった。そんな僕を見て、三戸さんは何かニヤニヤしているようにも思えた。悩める若者を見守っているみたいな雰囲気を醸し出そうとして、でも、その悩める若者を見てるのが可笑しくってしょうがないという感じだった。
何だか、馬鹿らしくなったので、ちょっと目を閉じた。疲れていますという感じで、寝たふりをする事にした。
三戸さんがそう呟いたのは、今日の分の配送を終えて、会社に戻る道の途中だった。その後の配送は順調だった。道の案内は僕がしたけど、それ以外はいつもとは違いテキパキとした動きで、本当にこれが三戸さんなんだろうかと思ってしまった。そんな中で呟いた言葉だった。
「だから、何事にも手を抜きたいんだ。分かる?」
分かるような気もするけど、分かるとは言いたくない気もして、
「はぁ」
と答えた。
「まあ、大概、これ言うと、怒られるんだけど、ははは」
それはそうだろうと思う。
「一生懸命頑張っている人を見てると、凄いと思うんだけど、自分には出来ないんだよね」
どこか悟ったように言った。
「…でも、出来ますよね?」
僕は今日の三戸さんの仕事のやり方を見ていった。
「こういうと、更に怒られるんだけど、意外と何でも出来ちゃうんだよ、俺は…」
何か分かった気がする。三戸さんに感じたイライラと言うのが。この人、意外と何でも器用にこなせるタイプなんだと思う。それを何となく周りに感じさせるんだ。だから、出来るのにやらないと思わせるから、手を抜いているように見えて、周りを苛立たせるんだと思った。
「器用貧乏って奴だよ」
そう言った時にはちょっと苦々しい表情になった。
「…何でやらないんですか?」
あんまり深い事を聞かない方が良いんだろうか。でも、聞きたくなってしまう。
「うーん。何でだろう。…、何かね。すぐに分かっちゃうんだよね。自分が出来る限界みたいなのが…」
「…」
「…、まあ、そんなの言い訳、ただの面倒くさがり、性格がいい加減とか言われると、それまで何だけど…」
「…」
どう言っていいかわからず、言葉を発せられなかった。
「まあ、俺みたく人生、半分ドロップアウトしているような人間に言われたくないと思うけど、楽して生きようとするのも、結構、大変なんだよ」
「楽したいのに大変なんですか?」
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茶化すように言われて、ちょっとむっとしたけど、何だかムキになって恥ずかしいとも思ってしまう。
「まあ、俺みたいな、いい加減の人間の言う事がだから気にしないで、ははは」
どこか誤魔化すようにも聞こえた。
僕は三戸さんの言っていた言葉の意味を考えて黙ってしまった。そんな僕を見て、三戸さんは何かニヤニヤしているようにも思えた。悩める若者を見守っているみたいな雰囲気を醸し出そうとして、でも、その悩める若者を見てるのが可笑しくってしょうがないという感じだった。
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