夢ノコリ

hachijam

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完璧な準備をする夢

9.

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帰りの車はみんな熟睡。運転手の三ヶ嶋君に悪いと思いながらも、眠気にはかなわなかった。

「おーい、着いたぞー」

と三ヶ嶋君が言う声で目を覚ました。まだ、ぼーっとしている気もしたけど、声に反応して起きて、まだ、寝ている充に声を掛ける。後ろの席の二人も起きたようだ。三ヶ嶋君は加山さんに声を掛けていた。帰りは大学の駅のすぐ近くまで送って来てくれたようだ。伸びをして辺りを確認して思った。

「わりぃわりぃ。寝ちまった」

悪びれず、充が言い。

「いえいえ、快適な睡眠をご提供出来て良かったです」

なんて三ヶ嶋君が言う。

「ありがとう」
「ごめんね」
「楽しかった」
「また、今度」

などと言葉が飛んで、僕と充と、赤岡さんと沢島さんが車から降りる。加山さんは行きと同じで三ヶ嶋君が送っていくらしい。

「バイバイ」

と手を振って車を見送る。

帰りの電車、充と沢島さんとも別れて、赤岡さんと二人っきりになる。電車の中は空いていて、二人で並んで座った。楽しかったな、なんてことを思っていたら、また、眠気が襲ってきた。そして、ウトウトと寝てしまう。パッと気が付いて目が覚めたら、降りる駅だった。でも、頭が働かなくて、体も動かなかった。ボーっとしていたら、ドアが閉まる。閉まって、始めて乗り過ごしたと思う。そこで肩に重みを感じている事に気が付く。こういう重み、いつもだったら嫌だなと思うけど、その時には思わなかった。その重みの原因、寄りかかってきている赤岡さんに声を掛ける。

「寝過ごしちゃったみたい」

ぼんやりとしていた赤岡さんだったが、すぐに意味は通じたようだ。可笑しそうに笑った。

「たまにあるよね。こういうの」
「ないでしょ」
「えー。あるよ」

なんて話をしながら、次の駅で降りて、反対側の電車に乗る。今度は寝過ごさないように立ったままだ。

「みんな、楽しそうだったね」

僕が言う。

「羽田君は?」

赤岡さんが聞く。

「…、楽しかったよ」

ちょっと間をあけて答える。何を一瞬考えていたのだろうか。

「なら、良かった」

と赤岡さんが答えた。

「また、みんなでどこか行きたいね」

何気なく僕が言う。

「みんなで?」

「…?」

どういう意味なんだろう。

「そうだ。羽田君には貸しがあったんだ」

何を言っているんだろうと思ったけど、昼間のビーチバレーの事だとすぐに思い出す。

「あれは、ええっと」

「男に二言は無いでしょ」

約束は勝手にされたような気もした。でも、反論は許されない気がした。

「じゃあ、来週、映画に行くのに付き合ってね。約束だよ」

一方的に言われて困惑する。

「ええっと、それは」

とあたふたする僕。そうしている間に降りる駅についてしまった。
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