夢ノコリ

hachijam

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暑い夢

5.

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結局、そのまま帰る事にした。帰る途中、グダグダと考える。何のために行ったのだろうか。でも、入ってもきっとまともには泳げない。でも、入れば入ったで泳げたはずだ。それにしても暑い。何でこの暑い中、歩かないといけないんだ。家にいるべきだった。でも、泳ぎたかった。でも、泳いでいない。などなど、結局、泳ぎたい、プールに行きたいなんて思ったのが間違いだったと結論を出す。

どうして、そんな事を思ったのか、そこに思い至ると、何だろうなと思って、ため息をつきたくなった。柄にもなく調子に乗ってしまった事が原因なんだろうと思う。今日は大人しく家で過ごす日だったんだ。そう最初に決めていたじゃないかと思う。なんか、いろいろと言い訳している自分にも疲れてくる。

それだったら、やっぱり、プールで泳げば良かったんだろうか。別に今から引き返して行っても良いはずだ。何分もかかる訳ではない。そうだ、混んでいるから、一旦、撤退しただけだ。屋内のプールになったからだろう、遅くまでやっている。昔は屋外だったから、夕方になる前に閉まっていたが、そうではない。確か九時ごろまでやっていると書いてあった気がする。

だったら、夕方になれば行けば良いんだ。そのために一時的に帰るだけだ。たぶん、そうはならないだろうなと思いながら、家に帰る。そう思う事で自分を納得させている気になっているけど、当然、ちっとも納得はいっていない。家に戻り、とりあえず、クーラーの電源を入れた。それで頭を冷やすと少し落ち着いた気分になる。そのまま、寝っ転がると、昨日の疲れが出てくるようだった。このまま、グダグダしていればいいんだと思ったら、眠くなっていた。



クーラーを付けているはずなのに暑いなと思った。風を感じているのにちっとも冷えていない。照り付ける太陽が憎いとか思ってしまう。目の前にいる髪の長い女の子はアイスを食べている。冷たくて美味しそうだなと思う。

「やっぱり、暑いね」

そう言う。それはそうだろう、夏なんだから。

「ふふふ」

と、笑う。何か馬鹿にされているみたいに感じる。多分、おめおめとプールから戻って来ている事を笑っているんだと思う。

「少し張り切り過ぎちゃいましたか」

その言い方も馬鹿にしていると思ってしまう。大声を出して、否定したかったけど、暑かったのでやめた。多分、正確に言うと、暑さのせいにして言わなかったというところだろう。

「暇だね」

そんな事を言う。

「うん」

それはそうだなと思い素直に答えてしまった。
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