夢ノコリ

hachijam

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文句を言われる夢

5.

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充はそれでも言い渋っていた。そんなにやばい事なんだろうか、心配になる。何も聞かないでここから去った方が良いのかもしれない。友達が困っているなら、理由も聞かずに助けてやるなんて、男気、僕にはないようだった。割と薄情な奴だなと我ながら思う。一応、言い訳させてもらうなら、理由を聞かされたなら、どういう事でも出来るだけの事はするだろうと思う。何もかも期待に応える何て事は言えないけど、そうするだろうと思う。でも、今はその判断が何も出来なかった。

「じゃあ、ここにいるだけでいいから。お願い」

また、拝まれる。ここにいるだけでいいというのはどういう事なんだろう。誰か、他にも来るんだろうか。その人に僕は会わないといけないのか。それが誰なのか、想像がつかなくて困る。僕を密かに好きな子がいて、その子に会わせたいのか、何て少し想像してしまったけど、それだったら、そう言えば良い。はっきりとは言わなくても、何となく匂わせれば良いし、僕に許可取ることなく、勝手に連れてくればいいだろう。それにそんな可能性は考えるだけ無駄な気がした。

そんな事を考えていたら、席を立つタイミングを逸してしまった。充は僕が一瞬考えたのを見て、了解したと思ったようだ。恐らく充が考えていた事とは違った事を僕は考えていたのだが。

仕方ない。そう思う事にした。ここで会うという事は、変な事にはならないだろう。いきなり、どっかに連れて行かれる事も無いだろう。万が一の時には、充を置いてさっさと逃げてやると、やっぱり、薄情な事を思いながら、

「いるだけで良いの?」

と聞いてみた。

「そうそう。面倒は掛けないから、お願い」

すでに面倒は掛けているだろうと思いながら、しぶしぶ頷く。あくまで納得はしていないという表情をする。

「そう言えばさ、みどりちゃんとデートしたんだって?」

話が飛ぶ。ちなみにみどりちゃんとは赤岡さんの事だ。充は女の子を下の名前でちゃん付けで呼ぶ。いきなり来たカウンターでノックアウトしそうだった。どこから聞いたんだろう。恐らく沢島さん経由だろう。それは分かったけど、それを知っていて、このタイミングで言われるとは思わなかった。

急にニヤニヤし始めて、さっきまでとは立場が入れ替わったようだ。怒ってもう帰ると言いたくなったけど、それも何か違う気がして止めておいた。顔が赤くなっている気がする。落ち着け、落ち着け、別に映画を見に行っただけど、あっ、博物館にも行ったか、でも、それだけだ。知られて困る事は無いし、別に隠していた訳ではない。

その時、ドアが開く音がした。すぐに充が反応して、その表情が変わる。どうやら待ち人が来たようだ。
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