夢ノコリ

文句を言われる夢

４．

待ち合わせ場所は喫茶店を指定された。初めて来たところ、まるでドラマに出てきそうな、ちょっとレトロな雰囲気だった。何となくのイメージとして、白髪の少し年齢を重ねた髭を生やしたマスターがこだわりのコーヒーを淹れてくれるなんて想像してしまったけど、注文を取りに来たのは、若いと言っても、僕と同じくらいの年齢の女の人で、その人がコーヒーを淹れていた。見た目ほど、レトロなお店では無いのかもしれないと思った。

お店には先に充が来ていて、僕を待っていた。こういうのも割と珍しい気がする。それほど、大事な用なんだろうか。コーヒーを注文して、出てくるのを待つ。僕が席についているのは気付いているだろうに、何も言ってこない。沈黙に耐えられないなと思っていたら、コーヒーが来た。

とりあえず、一口飲む。割と美味しい。偉そうに批評できるほどのコーヒーの知識がある訳ではないけど、率直に思った。今日は美味しいコーヒーが飲めたから、それで良い事にしようと思ったりする。カップを置いて、充の方を見たら、僕の事をじっと見ていた。そして、まるで土下座するように頭を下げた。

「頼む」

と言われる。何が何だか、良く分からなくて困惑する。周りに僕たち以外のお客さんはいなかったけど、お店の人はいるし、やっぱり、恥ずかしい。そもそも、何を頼まれているのかも良く分からなかった。

「何？」

そう言う。

「お願いだから、断らないで」

そう言われた。更に訳が分からなくて困る。何か断るような事をしたのだろうか。記憶にない。

「ええっと、何の事？」

「いや、だから、これからお願いする事、絶対に断らないで」

何だ、その怪しい言い方は。内容が分からなければ、返事なんて出来ないだろう。

「何の事か分からないと返事できないよ」

真っ当な返事をする。

「うん。そうだと思うよ。でも、断れると困るんだ」

「だったら、余計に説明してもらわないと…」

急にお金貸してくれとか言われたりするんだろうか。でも、わざわざ僕を呼び出して、そんな事を頼むとは思えない。それほど切羽詰まっているのか。何だか、嫌な予感しかしてこない。

「お願い。本当、頼む」

また、頭を下げられた。

「とりあえず、話聞かない限りは無理。断ります」

僕は、はっきりと言う。

「えー、そんな薄情な奴だったのかよ。親友の俺が頭を下げているんだよ。二つ返事でＯＫなんじゃないの？」

真剣なのか、ふざけているんだか、良く分からない言い方をした。

「親友なら、尚更、理由も分からず返事できないよ」

何だか、もっともらしい事を言ってみた。