夢ノコリ

hachijam

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記憶喪失と言われる夢

1.

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「あなたは記憶喪失です」

目の前に現れた白衣の男に言われた。

「僕がですが?」

そう言われても心当りが無い。あ、でも、記憶喪失だからそうなのかと納得する。でも、

「名前とか憶えていますよ」

と言う。

「では、お名前は?」

「羽田篤郎です」

すんなりと出てくる。

「やはり、重症ですね」

白衣の男は残念そうに首を振った。間違えているのだろうか、そう言われると自信が無い。やっぱり、記憶喪失なんだろうか。

「生年月日は?」

思い出した日付を言う。

「本当に?」

そう聞き返されると自信が無い。

「そうだと思うんですが…」

「職業は?」

「学生です。大学生…」

答えるけど、疑われているような視線で小さな声になってしまう。

「ふーん。そうですか。何か、覚えている事は?」

「覚えている事ですか?」

「そう、ここに来るまでの間に何があったのか、覚えていませんか?」

全然記憶が無い。突然、ここに来たのだ。何かあったのだろうか。白衣の男がいるという事は、病院だろうか。だったら、事故に遭ったとか、病気で倒れたとかだろうか、でも心当りが無い。しかも、体に異変は感じられなかった。

「そうですか。それは重症ですね。うーん」

白衣の男は考え込んでしまう。

「僕は大丈夫なんでしょうか」

「うーん」

しばらく考えた後、白衣の男が言う。

「大丈夫です。私に任せて下さい」

安心させるように言っているんだろうけど、全く安心できない気がした。

「何か、きっかけがあれば、思い出しますよ」

そして、何枚かの写真を見せてきた。

「これが誰か分かりますか?」

見慣れた顔だ。両親や親戚、そして、友達の顔が並んでいた。

「じゃあ、一枚ずつ名前を言ってください」

一枚一枚、浮かんだ名前を答える。つっかえる事もなく、スラスラと浮かぶし、答える事が出来た。唯一分からなかったのが、バイト先の社長の名前だ。下の名前は当然だけど、苗字も怪しかった。普段、社長としか呼んでいないし、周りで名前を呼ぶ人もいないので、出て来なかった。

何となくは知っている。最初に紹介されたからだ。でも、難しい苗字で、漢字も読み方も複雑だったという記憶だけしか残っていない。そういうのだと、逆にインパクトがあって覚えていそうなんだけど、社長の名前だと思ったからなのか、記憶には残らなかったようだ。

でも、そこでは白衣の男は反応を示さなかった。

そして、最後に五枚の写真を見せられる。いつものメンバーと言う感じだ。

「小浜充、沢島岬、三ヶ嶋徹、加山美加、赤岡みどり…」

並べられた順番に言う。言えてホッとする。と、同時に

「本当に?」

と言われてドキッとする。そこで目が覚めた。
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