夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
271 / 275
何かを思い出す夢

1.

しおりを挟む
「それでワタシに聞きたい事があるんでしょ?」

そう髪の長い女の子が言った。その通りだと思う。

「…」

でも、なんて言ったら良いんだろう。言葉が出て来ない。

「?」

そんな僕の様子を見ていると、女の子は首を傾げて、僕の方をじっと見ている。僕が何を聞きたいのかまでは分かっていないのだろうか。

「僕が何を聞きたいのかは分かってるよね?」

なので、そんな風に聞いてみた。

「キミが何を聞きたいのか?そうだなー」

女の子は楽しそうに考える。

「うーん。ワタシの事?」

それはそうだろう。僕は頷く。

「本当に?」

もう一度頷く。

「本当に本当?」

何度も頷く。

「本当かなー」

疑わしそうに聞く。ちょっとしつこいだろう。

「本当だってば」

思わず大きな声になる。女の子はちょっとびっくりしたように止まってしまう。

「そんなに大きな声を出さなくても」

少しふてくされたようにも感じる。慌てて

「ごめん」

と言ってしまう。少し気まずい空気が流れる。

「それで何?」

女の子がそう聞いてくる。さっきまではと違って、ちょっと抑えた感じだ。それで何か聞きづらくなってしまった。

「本当は聞きたい事なんてないんじゃないの?」

女の子が言う。そんな事は無いと言いかけて、何を僕は聞きたいんだろうと思った。女の子の事だ。でも、女の子の何が知りたいんだろう。名前、赤岡さんとの関係、僕との関係。たくさんありそうで、そうでも無い気がする。

「いや、ある…」

自信なさげに僕は答えた。うん、まずは名前を聞けば間違いない。

「ええっと、君の名前は?」

ようやく、それを言葉に出来た。

「えっ」

女の子は驚く。

「ワタシの名前。知らなかったの?嘘でしょ?冗談でしょ?」

僕が恐れていた展開だ。

「いや、あの、そうじゃなくて」

女の子の言う通りなんだけど、僕はそう言って誤魔化そうとした。

「あー、もう。信じられない。だからなんだ」

女の子の怒りは収まらないようだ。

「ごめん」

いろいろ言い訳したかったけど、これ以上は無理だと思って僕は謝る。

「…何で謝るの?」

女の子が言う。

「君の名前が分からなかったから」

「それだけ?」

女の子の言い方が冷たく感じる。何を言われているんだろう。こっちはせっかく謝っているのに。

「本当に悪いと思っている?」

それを言われると、はっきりと返事できない。何で聞いても無い、名前を僕が知っていると思っているのか、逆に聞いてみたくなる。でも、それを言うと、更に怒られそうだとも思う。

「理由が分からなくて謝られてもね」

何だか、最近、似たような事を言われた気がする。何で僕は謝ってしまったんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...