夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
274 / 275
何かを思い出す夢

4.

しおりを挟む
やっぱり、出来る人なんだなと思ってしまった。僕がちょっと説明すると、すぐにやるべき事を分かってくれる。感心してしまうのが、自分が分からない所をちゃんと説明できる所だ。何となく分かった、何となく分からないというのが無いのだ。単純に凄い人なんだなと思ってしまう。

「羽田さんの説明は分かりやすいね」

ようやくひと段落したところで言われた。思わず嫌味なのではと思ってしまう。それぐらい、三戸さんの仕事は完ぺきだった。そんなことないですよと謙遜した方が良いかなと思ったけど、白々しい気がして

「そうですか」

と気のない返事をした。

「あれ、大丈夫?お疲れ?」

僕の返事に三戸さんが聞いてくる。

「いえ、あーでも、そうですかね。ちょっと疲れました」

そう言ってしまった方が良いと思った。

「まあ、大変だったからね」

それはそうだと思う。でも、それだけでも無いなとも思う。

「ん?何かあった?」

僕の顔を見て、三戸さんが言う。何か表情に現れているんだろうか。と言うか、どこかで話を聞いてみたいと思っているのかもしれない。

「いえ、何でもないです」

どこか話を聞いて欲しいという雰囲気を漂わせながら言う。

「いやいやいや、何か聞いて欲しいって顔だよ」

どこかにやにやしている。

「あ、もしかして例の彼女の事?」

「彼女じゃないです…」

そこは否定するけど、聞いて欲しいというところは否定しない。

「いいじゃん、いいじゃん、細かい事は。で、どうなの?どうなってるの?」

三戸さんに話しても大丈夫なのかなと思いながら、そういう聞き方をしてもらえる事に少しホッとするところもある。無理矢理聞かれたから答えているだけだ。そんな風に言い訳する事も出来ると思った。

「実は…」

そう言いながら、どういう風に説明すればいいんだろうと思ったりする。状況だけを言えば、卒業アルバムで気になる女の子が記憶にない子と一緒に写っている写真を見つけたという事だ。詳しく説明するならば、夢の事も話した方が良いんだろうか。でも、それを言い始めると何だかややこしくなりそうな気もしてきた。結局、写真だけの話をする。

「そうだなー」

それだけとか、そんな事とか、言われそうな気がしたけど、そういう事は無かった。僕の話を割と真面目に聞いてくれたようだ。自分だったらどうするかを考えているみたいだった。

「自分だったら、聞かないかなー」

と三戸さんが言った。それは僕にとっては意外だなと思う答えだった。あっさりと聞いちゃえばと言われると思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...