夢ノコリ

hachijam

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何かを思い出す夢

5.

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「何でですか?」

当然のように僕は聞く。

「どうしてだろう。直感的にそう思った」

深い考えと言うよりは、直感的なもののようだ。そういう点では僕の考えに近い気もしてくる。

「そうですか。聞かない方が良いですかね」

思わずそう答えていた。

「いや、ダメでしょ。聞くべきだよ」

そんな僕の答えに三戸さんが返してきた答えはさっきと真逆だった。

「えっ、聞かない方が良いって言ったじゃないですか」

僕は首を傾げながら聞く。

「違う違う。自分だったら、聞かないというだけで、他の人だったら、羽田さんだったら聞いた方が良いって」

と言う。何だろう、その理屈は。でも、僕も多分、自分の行動と人にアドバイスする事は違う気もする。そして、三戸さんが言っている事は、僕が相談を受けたら言いそうな事だとも思った。

「何か、他人事って感じですね」

自分の事は棚に上げて言う。

「それはそうでしょ。他人事なんだから」

確かに正論なんだけど、そういう事じゃないだろうとも思ったりする。もう一度自分の事は棚に上げて。

「よし、じゃあ、今から連絡しよう」

「ん?今ですか?」

その提案に驚く。

「バイト中ですよ」

ごく常識的な事を言ってみる。

「いや、バイトをしているより大事な事だよ。もし怒られたら俺が謝ってあげるから」

バイトより大事というのはあるかもしれないけど、怒られた時に三戸さんが誤ると言ったのは嘘だと思う。だから、

「はい、大丈夫です」

と、割と落ち着いて返す事が出来た。

「何だよ。本気だったんだけどな」

茶化すように言う。

そういうやり取りをしていたら、そんなに大変な事じゃないのかもしれないと思った。そう思うと自然に聞ける気がした。ある意味で三戸さんに相談した事は正解だったのかもしれない。それを狙ってやっているのかは良く分からない。多分、聞いたら、当然だろと言いそうだし、図に乗りそうだったので、何も言わない。心の奥底、ほんのちょっとだけお礼を言った。

そうこうしている間に休憩時間が終わった。さっきまでの忙しさは無くなっていたけど、やる事自体はそれなりにあった。でも、三戸さんの手伝いもあったので、順調に片づいていく。その間、僕と三戸さんは黙々と働いていた。

何か、改めて真面目になったんだなと言うのを感じて、ちょっと感激してしまう。感傷にひたって涙がこぼれそうになるなんて、大げさな事にはならないけど、この人、実は凄い人なんじゃないか、ほんの少し、本当に少しだけ思った。
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