夢ノコリ

踏切を待つ夢

１．

カンカンカンと踏切の音が鳴っていた。そこは開かずの踏切と呼ばれる踏切だった。一度、遮断機が下りると５分、１０分待たされるのは当たり前で、時間帯によっては、３０分、４０分待たされる事もある。その前で僕はじっと踏切が開くのを待っていた。

線路の向こう側、反対側に女の子が立っているのが見えた。あっと思う。最近、夢で見かける長い髪の毛の女の子だ。相変わらず、顔は見えない。ただ、こちらに気づいているのか、じっと僕の方を見ていた。何となくじっと見られているのが恥ずかしいと思いながら、視線をそらしてしまう。

電車が目の前を通過する。電車の音と踏切の音が混じり合い、大きな音になる。僕は顔をしかめながら、電車が通過するのを待つ。これで踏切が開くかなと思う。長い電車が通り過ぎて、ホッとするが、踏切が開く気配はなかった。相変わらず、カンカンカンと踏切の音が鳴っている。前を向くと、そこにはまだ女の子がいて、僕の方をじっと見ていた。

僕も引きつけられるように女の子の事をじっと見つめてしまった。口をパクパクさせて、何かを言っていた。ただ、踏切の音が邪魔をして、何を言っているのか分からない。僕は必死に何と言っているのか、聞き取ろうとする。

「…お願いがあるの」

そう言っているように聞こえた。そう言えば、前にそんな事を言われていたような気もする。僕はもっとはっきりと聞きたいと思う。

「金色のカギを見つけて欲しいの」

そう女の子は言った。

「どこにあるの？どんな形をしているの？」

僕は聞いた。いつの間にか、普通に会話が出来ていた。

「分からない」

「それじゃあ、見つけられないよ」

「でも、きっと見つける事が出来ると思う。それはそこにあるから、見ればきっと分かるから」

謎かけのような返答に僕は困ってしまう。気が付いたら、また、踏切の音が大きくなって、声が聞こえ辛くなっていた。女の子はこちらを向いてニコッと笑う。そんな意味不明な頼まれごとをされても困ると思った。無理だと断った方が良いと思う。でも、その声は女の子には届かない。踏切はまだ開きそうにない。

別の電車が通過する音が聞こえてきた。また、音が重なり大きな音になる。僕は思わず耳を塞いだ。電車は長く通過するまでの時間が掛かった。ようやく、通過してホッとしていたら、目の前に女の子の姿は無くなっていた。お願い事を頼まれた事になるのかと僕は思い、どうしようかと焦る。

踏切の音は続いていて、まだ開く気配は全くなかった。