夢ノコリ

テスト前の夢

４．

いつもとは違ったバイトの雰囲気でやたらと疲れてしまった。その疲れた分、作業が進んでいれば、頑張った甲斐もあると思えるんだけど、そうではないので、更に疲れてしまうという悪い循環にはまってしまうようだった。こういう時は雰囲気も悪くなる。こんな雰囲気が悪いところだったかなと思ってしまった。下山さんがいればなと思う。そもそも、こういう事態にならない気がするけど、なったとしても、的確に指示を与えて、どうにかしてくれそうな気がした。

忙しいという理由で社長も顔を出していたが、実際の所、余り役には立っていない。その事もちょっとイライラさせた。何がイラつかせるかと言うと、作業自体は真面目にやろうとするんだけど、作業のやり方をちゃんと覚えようとしない。そのため、何度も同じことを聞いてきて、そのたびに説明しなければならなくなり、その手間が掛かってしまうのだ。社長だからと言って、偉そうにふんぞり返っているだけでない所は、この社長の良い所なんだけど、どちらかと言えば、有難迷惑と言う感じだった。とは言え、社長である事には間違いないし、張り切っている状況を考えると、何も言えなくなってしまう。ただただ、仕事が早く片づく事だけを考えて作業した。

全ての仕事がようやく終わった時には、本当にぐったりしてしまった。バイト代以上、働いた気分になったけど、実際の所は、普段とそんなに変わらない分しか、仕事はしていないんだなと思ったりする。やっぱり、下山さんがいないとこの会社は回らないんだなと実感してしまった。

「いやー、疲れたね。やっぱり、下山君がいないと大変だね」

社長がそう言った。社長がもっとちゃんと作業してくれれば、早く終わりましたよ、なんて事は口にせず、僕は

「風邪、大丈夫なんですかね」

と、当たり障りのない返事をした。

「少しは良くなっているみたいだよ。熱は下がってきたって言っていたし、明日はこれるんじゃないかな」

「そうですか」

と、ホッとした。下山さんの体調も心配だったし、この会社の事も心配だったからだ。

「そうそう、この間、下山君と第一倉庫見に行ったのって、君？」

と、社長が話を変えてきた。

「はい」

「カギを見つけたって話を聞いたんだけど」

「ええ。箱に入っているのを見つけました」

急に気になっていた話題になって驚く。

「金色のカギって聞いたけど」

「はい。金色のカギでした」

「そうか。そうなんだね。やっぱり、そのカギかな」

とぶつぶつとつぶやいた。

「あの、そのカギが何か？」

僕は恐る恐る尋ねてみる。

「どこにあったか覚えている？」

「ええ、行けば分かりますよ」

「そうか。ちょっと時間越えちゃうかもしれないけど、案内してもらえる？」

「ああ、はい」

はっきりとした状況が分からないまま、僕は社長を第一倉庫にあった金色のカギのところに案内する事になった。