夢ノコリ

hachijam

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スローモーションで走る夢

6.

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「これが噂の…」

興味深そうに、大げさに下山さんはそう言うと、カラクリ箱を手に取った。

「何が入っているんですかね」

そう言いながら、耳元で振っている。

「一応、大事なものなんだから、丁寧に扱ってよ」

社長が少し心配そうに言った。

「ああ、すいません」

と、一旦、元に戻す。そして、もう一度、持ち上げるとどうにかならないかといじくり始めた。乱暴な手つきに社長が慌てる。

「下山君…」

「ああ、すいません」

同じ様に謝るが、多分、反省はしていないんだと思う。そこまで慎重に扱う必要はないと思うけど、下山さんの扱いはさすがに雑だなと思った。

しばらく、いじっても何の変化も無く。だんだんと、下山さんは力を込めていじり始めた。少しイライラしているようにも見えた。

「下山君…」

社長はちょっと泣きそうな顔をし始めた。

「ああ、すいません」

今度は少し申し訳なさそうな顔を下山さんがした。ちょっと調子に乗り過ぎたと思ったようだ。

「思いっきり、ガツンとやったらダメですか」

冗談とも本気ともつかぬ口調で下山さんが言った。ここで思い切ってやって良いよと言ったら、恐らく力任せで壊しそうだなと思った。その様子を見て、

「ダメだよ。大事な箱なんだから」

と、社長は言うと、下山さんの手から守るようにカラクリ箱を持った。

「もう、乱暴に扱いませんよ」

そう言っているが、社長は信じていないようだった。確かに本当に壊してしまいそうな気配があると僕も思った。

「見せてもらって良いですか」

僕は控えめに聞く。

「ああ、構わないよ。大事にしてね」

僕は大丈夫だと思ったのか、簡単に渡してもらえた。ちょっと、下山さんはすねたような表情をした。相手をするのも面倒なので、そこは軽く無視して箱を見てみる、改めて細工が綺麗だなと思う。これを見て、壊して中身を見ようという下山さんも凄いなと思う。人によって価値観が違うというところだろうか。

「あれ?」

模様を良く見ると、一か所だけ、ちょっと違和感を感じる部分があった。何が変なんだろうとじっくりと見る。

「何か分かった?」

社長が言う。

「…」

社長の問いかけに答えずに、ひっくり返したり、斜めにしたりしてみて、気が付いた。そこだけ、模様が左右反転していたのだ。対称性のある図形だったので、全体として見ると、それは小さな違和感なのだが、気が付いてしまえば、明らかに違っていた。その部分に触れてみる。ちょっと、動きそうな感じがしたので、少し力を入れて押してみた。
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