夢ノコリ

hachijam

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スローモーションで走る夢

5.

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「カラクリ箱の話、聞きました?」

そう言えばと思い出して下山さんに聞いてみた。

「カラクリ箱?」

「ええ、この間、第一倉庫に行った時に、見つけた金色のカギ覚えていますか?」

「…そんなのあったっけ。うーん。言われてみるとあった気もするけど」

下山さんは記憶が曖昧なようだ。

「先週、社長が来て、そのカギに心当りがあるって言って、一緒に第一倉庫に行ってカギ取って来たんですよ」

「そうなんだ」

あまり、興味なさそうに言うので、ちょっとがっかりした。でも、とりあえず、話を続けた。

「で、そのカギが社長が持っているカラクリ箱のカギじゃないかって、カラクリ箱も持ってきて、開けようとしたんです」

「ふむふむ」

少し興味が出てきたようだ。

「でも、結局、開かなくて、その後、どうなったのかなと思って」

「聞いてないな、その話。何か、今週やたら忙しかったから、それどころじゃなかったからな。社長ともそんなに話す時間なかったし…」

「そうですか」

僕はちょっとがっかりした。結局、どうなったのか分からないままか、そんな事を考えていたら、

「そう言われると気になるな。社長の所、行ってみる?」

下山さんが提案してきた。

「社長来ているんですか?」

「午前中いたから、午後もいると思うよ。今日はこのまま暇だろうし、問題ないでしょ」

そう下山さんが言ったので、すんなりと話は決まった。そうと決まれば、行動は早い。すぐに移動する。

一応、社長室と呼ばれる部屋に社長はいた。

「あれ、どうしたの?何かあった?」

と、のんきそうに社長は言った。

「羽田が折り入って話があるそうです」

ちょっと真顔になって下山さんが言う。

「えー何。ちょっと怖いな。あんまりいい話じゃない?辞めるとか?バイト代上げろとか?」

下山さんの態度にただならぬものを感じたのか、そんな事を言う。

「いや、そんなんじゃないですよ。この間のカラクリ箱どうなったのかなと思って」

ちょっとノリについていけなくなり、弁明するように言った。

「なんだ、良かったよ。下山君が脅かすから」

ホッとしたように社長が言った。

「せっかくだから、こういう時に言いたい事言っといた方が良いぞ」

下山さんはちょっと意地悪そうに笑った。僕は愛想笑いで誤魔化す。

「それで箱どうなりました?」

「結局、そのまま、何の変化も無しだよ」

そう言うと、社長はカラクリ箱を取り出した。この間と変わらず、カギは刺しっ放しのままだった。本当にそのまま何も変化が無いようだった。
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