夢ノコリ

hachijam

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スローモーションで走る夢

7.

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明らかに動きそうな感触があった。でも、力を入れても動く気配は無かった。

「何か、この部分、動きそうじゃないですか?」

その部分を指さして社長に告げる。

「どれどれ」

そう言いながら、僕が指さした部分に触れる。

「あー確かに」

でも、動かなかった。

「俺にも見せてくださいよ」

と、下山さんが強引に箱を奪った。

「あっ」

社長がそう声を上げたのも気にしなかった。何かどっかのいじめっ子みたいだなと少し思った。

「おー確かにこれは何かありそうだな。よし、思い切って…」

「いやいや、ダメですよ」

僕は箱が壊されないように下山さんから箱を取り戻そうとした。でも、下山さんは手を伸ばして僕の手が届かないようにする。何だ、このやり取り、そんな風に思いながら、

「危ないですよ」

なんて言いながら、僕も取ろうとする。と、僕と下山さんが、ぶつかり、箱が落ちてしまった。やばい、そう思った時には落下していた。幸いにして、ソファの上に落ちたので、箱は大丈夫だった。でも、ちょっと気まずい雰囲気になる。

「少し、ふざけ過ぎじゃないか」

今までとちょっと違ったトーンで社長が言う。

「すいません」
「すいません」

僕と下山さんは同時に謝る。

「全く、これで壊れたらどうしてくれるんだ」

怒りながら箱を拾い上げる。と、ぽろっと、カギが外れた。落ちた時の衝撃で、仕掛けが最初の状態に戻ったようだ。

「ほんとにもう」

社長は怒りながら、カギを拾う。そこで僕はふと思った。

「あの、ちょっと良いですか」

恐る恐る言う。

「もう一度だけ、見せてください」

「今度は気を付けてよ」

そう言いながら渡された箱をもう一度見る、そして、今度はカギが刺さっていない状態で、さっきの場所を押してみた。すると、カチッと言う、音が聞こえた。そして、裏側の板の板をスライドし、カギをさして回してみた。はっきりとした手ごたえがあって、カギが回った。

「社長」

僕は少し非難めいたように言った。社長が最初にカギを刺すと言っていたので、僕はその事について全く疑問を持っていなかった。でも、それが間違いだったようだ。

「あれ、おかしいなカギは最初だと思ったんだけどな…」

面目ないという表情を社長がする。ついさっきまで、怒っていたのは忘れてしまったようだ。

「開いたの?」

状況が良く分かっていない下山さんが聞いてきた。

「多分」

「俺のおかげ?」

「…」

調子に乗った発言は無視して、社長に箱を渡す。やっぱり、開けるのは箱の持ち主だろうと思ったからだ。
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