夢ノコリ

hachijam

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スローモーションで走る夢

8.

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「じゃあ、開けるよ」

社長がちょっと緊張したように、勿体ぶったように言った。緊張の一瞬、下山さんも何が出てくるのか期待しているみたいだった。僕はもちろん、何があるのかワクワクしていた。

社長はゆっくりと箱を開けると中を僕と下山さんにも見えるように傾けた。そこにあったのは折りたたまれていた2枚の紙だった。

「なんだろうね」

そう言いながら、2枚の紙を取り出す。箱は一旦避けて、今度は折りたたまれた紙を社長は開いた。そこには、子供の落書きのような宝箱の絵が描かれていた。どういう意味なのか、分からず、もう1枚の紙が開くのを待った。

社長は続けて、もう1枚の紙を開く。そこにも絵が描かれていた。たぶん、何かの動物だと思うのだけど、その絵は更に子供の落書きのようで、何の動物か一目見ただけでは分からなかった。二本足で立っていて、手足がぐにゃっと曲がっていて、僕には踊りを踊っているように見えた。

「…」

社長が子供の頃に描いた絵が見つかっただけなのかなと僕は思う。とても、ガッカリした気分になると同時に、それもそうかなと思う。結果的に、そのカラクリ箱を開けて良かったのかなとも思った。もし、開かなかったらもっといろいろと想像が出来て、いつまでも大事な思い出になったのではと思った。でも、僕はモヤモヤした気分がスッキリしたというのも事実だった。

社長を見ると、ちょっと複雑そうな表情になっていた。それはそうだろう。僕なんかより、ずっと何かを期待していたのではと思った。下山さんは、じっと動物の絵を見ていた。ちょっと真剣な表情を浮かべていた。その表情を見て、実は何か思い入れがあったのかなと少しだけ思った。

「あっ、そういう事か」

そこで下山さんは何かに気が付いたようだった。

「あれ、下山君も分かった?」

社長が言う。

「なかなか、とんちがきいてますね。社長が考えたんですか?」

下山さんは可笑しそうに言った。

「多分。はっきりと覚えている訳じゃないけど、自分で描いた絵だと思うよ。こんな絵を昔描いていた気がするからね。でも、自分でガッカリさせられる事になるとは思わなかった」

社長は苦笑いを浮かべた。下山さんは更に可笑しそうに笑った。僕は2人が何を話しているのか分からずにきょとんとしてしまった。

「あれ、羽田は分からない?」

僕は何を聞かれているのか良く分からなかった。

「だから、この絵だよ」

そう言って、動物の絵を僕に見せた。

「動物ですよね」

そう言う僕の言葉に下山さんはにやにやと笑っていた。
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