夢ノコリ

hachijam

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スローモーションで走る夢

9.

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「何の動物なんですか、これ?」

僕は恐る恐ると言う感じで聞いてみた。

「ああ、そう言われるとショックだな」

社長は苦笑いのままだった。

「よし、ヒントを上げよう。これ何していると思う?」

すぐに教えてくれる気はないようだった。仕方なく、僕は考えてみた。

「踊っているんですかね?」

社長が傷つかないように慎重に答える。

「そうそう。何しながら踊っている?」

更に聞いてきた。手か足か分からないけど、それを片方は振り上げて、片方はお腹の辺りにあった。

「お腹を叩いているんですかね?」

また、慎重に答える。

「その通り、踊ってお腹叩く動物と言えば?ほら、童謡にもあるでしょ」

そこまで言われて、動物の名前が浮かんだ。浮かんだ名前の動物には見えなかったけど、思いついた動物の名前を言ってみた。

「タヌキですか?」

「そう正解だよ」

下山さんは満足そうだった。とてもタヌキには見えなかったけど、社長が否定しないから正解なのだろう。で、それが何なんだろうと思った。

「…あれ、まだ分からない?」

僕がまだきょとんとしているのを見て、下山さんが言った。

「あっはい」

僕の答えを聞いて、下山さんはもう1枚の絵を見せる。宝箱が描かれている絵だ。

「これは?」

何か引っ掛けがあるのかなと思ったけど、難しく考える事は出来ずに見たままを答える。

「宝箱」

「そう、で、こっちの絵は?」

「タヌキ」

「そう、両方合わせると?」

2枚の絵を並べられて、タヌキ、宝箱、タヌキ、宝箱と何度か頭の中で繰り返してようやく言いたい事が分かった。

「もしかして、タヌキの宝箱と言う事ですか」

下山さんはにやりと笑った。

タヌキの宝箱だから、『たからばこ』から、『た』を抜いて、『からばこ』。子供の頃に聞いた事のあるようなとんちの問題を思い出した。社長の方を見ると、どこか恥ずかしそうに頷いていた。

「はっきりした記憶じゃないけど、昔、宝探しごっこと言うのが流行っていた事があってね。隠した宝を探すというので遊んだことがあったんだよ。その時に、何を宝にするのか考えて、思いついたんじゃないかな」

社長はそう言った。

宝が見つかったと思ったら、空だったという引っ掛けだったという事だろうか。確かにそれは子供が考えそうな引っ掛けのような気がする。そして、その引っ掛けは、それから、随分、時が経ってから効果を発揮したという事のようだ。何だか可笑しくて、僕は自然に笑っていた。下山さんも笑っていて、社長はまだ少し苦い表情をしていたけど、やっぱり笑っていた。
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