夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
98 / 275
4番バッターの夢

1.

しおりを挟む
「4番、センター羽田」

場内にアナウンスが流れて自分の打順が回ってきたことに気が付いた。僕は大きく息を吐いて、ベンチから飛び出した。バットを持ち、ブンブンと振り回す。やたらと気合が入っているのを感じる。場面はツーアウト満塁、点差は2点差で負けているけど、一打同点、逆転のチャンスでもある。しかも、どうやら9回裏みたいだ。4番バッターとしては、最高の見せ場である。

ふといつからプロ野球選手になったんだろうと思う。と言うか、バッターボックスに立って、バットを振るなんていつ以来だろうと思ったりする。何か、はるか遠い、昔の事のような気がしてきた。この試合はいつからやっているんだとか、前の打席はとか、辻褄があっていない事に戸惑うけど、そういうことを言っている場面では無かった。何しろ、4番バッターなんだから。

バッターボックスから見る風景は、まるでテレビゲームのような感じがした。カーソルを合わせて、タイミングよくボタンを押せば、打てる気がしてきた。そう考えると、目の前にカーソルが浮かんでくるようにも思えた。

そんな事を思っていると、ピッチャー方向から見た風景も浮かんでくる。まるで、テレビ中継の画面のようだった。バッターボックスに立つ、自分の姿を見ているようで、何だか不思議な光景だった。ピッチャーは相手チームのエースのようだ。帽子を深くかぶっているからなのか、顔は良く見えなかったけど、にやりと笑っていて、白い歯が光っているようにも思えた。

なぜか悔しいと思ってしまい。僕はバットをピッチャーに向ける。ホームラン予告のつもりだ。大きな歓声が響いた。その歓声でお客さんがたくさんいる事に気が付いた。どうやらスタンドは満員のようだ。満員のお客さんが僕に注目している。やたらと張り切りたくなってきた。僕はバットを素振りして、もう一度、ホームラン予告をする。更に気分が盛り上がってきた。

ピッチャーはそれが気に入らないようで、一度、セットポジションを外した。僕も息を吐いて、バットを構え直す。仕切り直しと言う感じで呼吸を整える。だんだんと、ピッチャーとバッターとしての僕の間の緊張感が高まってきた。

おそらく力任せの豪速球が来るだろう。エースと言われるぐらいだから、あのホームラン予告に対して真っ向勝負を挑んでくるのは間違いないと思った。だったら、初球から狙ってやると思った。ど真ん中に力任せのボール。僕はそのボールをイメージした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...