夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
99 / 275
4番バッターの夢

2.

しおりを挟む
ピッチャーが大きく振りかぶって一球目を投げる。ど真ん中にストレートのボールが投げ込まれる。豪速球で物凄い速いボールのはずだけど、僕にはそれがスローモーションのようにはっきりと見えた。まずはじっくりとボールが見れている事を確認する。そして、これは狙い球とは違っていると思う。ボールひとつ分ぐらい低い気がする。

「ストライク」

と審判が大きく手を上げてコールする。僕はボールは見えていると自分自身に確認するように大きく頷いた。

二球目、また力任せに来るのか、ちょっと迷う。一瞬の迷いがあると、判断が遅れる。あっと思った瞬間にはボールが投げ込まれていた。ボールははっきりと見えていて、さっきよりもイメージしていたボールに近い事は分かったけど、手を出す事は出来なかった。

「ストライクツー」

審判の大きな声が響いた。いつの間にか、歓声は聞こえなくなっていた。緊張感は高まっていて、自分の心臓の音がバクバクと聞こえて来ていた。バッターボックスを外して、頭の中を整理する。普通なら、一球、外してきそうな場面だなと思った。でも、と思う。そのまま、力でねじ伏せてくる予感と言うのを感じた。だったら、思い切って、振ってやろうと思った。見逃し三振と言うのだけは避けたい。最悪でも空振り三振だと思う。

バッターボックスに入り。バットを構える。と、空振り三振が最悪なのかと頭によぎった。アウトになるならどれも同じではとか、いや、空振りだったら格好は付くとかいろいろと頭に浮かんできてしまった。あれ、どうしたら良い。そんな事を思っていたら、三球目が投げられた。

また、ど真ん中のボールだった。見逃したら、三振になってしまう。振らないとだめだ、とっさにバットを振る。完全な振り遅れだったけど、辛うじてバットに当たり、ボールがファウルグラウンドに飛んだ。打球は大きく曲がる。

「ファウル」

審判の声が聞こえて、ホッとする。ダメだ。考え過ぎるな。もう、ど真ん中に絞って思い切り振るだけにしよう。そう覚悟を決めた。中途半端は止めて、打てるイメージだけを固める事にした。

ど真ん中のボールを思いっきり振って、センターバックスクリーンに飛び込む大ホームラン。大きな歓声の中でダイヤモンドを一周して、チームメイトに祝福される。もしかしたら、水とか掛けられるのか、その後、ヒーローインタビューで何をしゃべろうか。そんな事も考え始めていた。

良し、イメージはしっかりと浮かんだ。後は投げてくるボールをしっかりと打てば良い僕は投げてくるボールだけに意識を集中した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...