夢ノコリ

hachijam

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4番バッターの夢

2.

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ピッチャーが大きく振りかぶって一球目を投げる。ど真ん中にストレートのボールが投げ込まれる。豪速球で物凄い速いボールのはずだけど、僕にはそれがスローモーションのようにはっきりと見えた。まずはじっくりとボールが見れている事を確認する。そして、これは狙い球とは違っていると思う。ボールひとつ分ぐらい低い気がする。

「ストライク」

と審判が大きく手を上げてコールする。僕はボールは見えていると自分自身に確認するように大きく頷いた。

二球目、また力任せに来るのか、ちょっと迷う。一瞬の迷いがあると、判断が遅れる。あっと思った瞬間にはボールが投げ込まれていた。ボールははっきりと見えていて、さっきよりもイメージしていたボールに近い事は分かったけど、手を出す事は出来なかった。

「ストライクツー」

審判の大きな声が響いた。いつの間にか、歓声は聞こえなくなっていた。緊張感は高まっていて、自分の心臓の音がバクバクと聞こえて来ていた。バッターボックスを外して、頭の中を整理する。普通なら、一球、外してきそうな場面だなと思った。でも、と思う。そのまま、力でねじ伏せてくる予感と言うのを感じた。だったら、思い切って、振ってやろうと思った。見逃し三振と言うのだけは避けたい。最悪でも空振り三振だと思う。

バッターボックスに入り。バットを構える。と、空振り三振が最悪なのかと頭によぎった。アウトになるならどれも同じではとか、いや、空振りだったら格好は付くとかいろいろと頭に浮かんできてしまった。あれ、どうしたら良い。そんな事を思っていたら、三球目が投げられた。

また、ど真ん中のボールだった。見逃したら、三振になってしまう。振らないとだめだ、とっさにバットを振る。完全な振り遅れだったけど、辛うじてバットに当たり、ボールがファウルグラウンドに飛んだ。打球は大きく曲がる。

「ファウル」

審判の声が聞こえて、ホッとする。ダメだ。考え過ぎるな。もう、ど真ん中に絞って思い切り振るだけにしよう。そう覚悟を決めた。中途半端は止めて、打てるイメージだけを固める事にした。

ど真ん中のボールを思いっきり振って、センターバックスクリーンに飛び込む大ホームラン。大きな歓声の中でダイヤモンドを一周して、チームメイトに祝福される。もしかしたら、水とか掛けられるのか、その後、ヒーローインタビューで何をしゃべろうか。そんな事も考え始めていた。

良し、イメージはしっかりと浮かんだ。後は投げてくるボールをしっかりと打てば良い僕は投げてくるボールだけに意識を集中した。
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