落書きモノ

hachijam

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6.そこに至る道筋

38.

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僕とその存在とのやり取りを、ボクは黙って聞いていた。僕が一番知りたかった事は、ボクが一番知りたかった事でもある。現実として、この状況を受け入れる事はすんなりと出来たし、この状況に満足していたボクだったが、どうしてこの状況になってしまったのかは気になっていた。

もし、そこに何か明確な理由があるのだとすれば、また、すぐに元に戻されてしまうのではないかと思ったからだ。ただ、ボクがそんな風に気にしているとは、僕に気づかれたくはなかった。だから、全く気にしないふりをしていた。でも、本当のところはかなり気になっていた。

だから、僕とその存在とのやり取りにはかなり興味があった。不安を覚えていた事も事実だったが、それでも、本当の事を知りたいという気持ちも強かった。そして、その理由のひとつが分かった。

それと、同時にその存在が問いかけた、僕の存在意義を問う質問の答えもボクは知りたくなった。今の状況を考えれば、意識としての僕が必要な存在なのかと言うのも良く分からなくなっている。身体としてボクがいて、それでどうにかやっているからだ。

もしかしたら、あの無数に現れた存在がいないと、今のボクが支えられていないとしたとしても、意識としての僕が存在する必要はあるのだろうか。ここまで考えてきて、そもそも、意識としての僕が誕生したのはいつだったのかと思ってしまった。

身体としてのボクが誕生した瞬間は分かりやすい。この身体が出来上がった、その瞬間だろう。その記憶が今のボクにある訳ではないが、そう考えるのが自然だと思う。その身体を支える存在が生まれたのは、身体がちゃんと出来上がってからだろう。だったら、意識と言うのはどの瞬間なのだろうか。

身体が生まれたと同時にもう出来上がっているのだろうか。そういう気もするし、それよりもずっと後なのではとも思った。少なくとも、身体より前に誕生していたような気はしない。

もし、ずっと後に生まれたとしたら、それはどうして誕生したのだろう。それを構成している物は何なんだろうかとかいろいろと考え始めてしまった。

そんな質問に僕が答えを見つける事は出来るのだろうか。もしかしたら、その問いかけの答えは僕自身の存在を否定する事になってしまうのかもしれない。それでも求められた問いかけに答える事が出来るのだろうか。そして、その存在がどうして、そんな問いかけをしたのかも気になった。沈黙の時間はまだ続きそうだった。
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