竜探しのお話

hachijam

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4章.竜の研究者

32.

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「ラテアさん。研究所はどうですか?」

ドレロに声を掛けられて、自分が夢中になっていた事にラテアは気が付いた。ちょっと顔が赤くなっているのかもしれない。ちょっと照れたように言う。

「とても、興味深いです。こういう魔法の応用方法があるとは思っていなかったです」

「まだまだ、研究段階で、実用と言う段階には達していないあるのですが、好きなだけご覧になってください」

「ありがとうございます」

ラテアは素直に好意を受け取る事にした。

「…、すいません。ラテアさん、後でお時間を取らせてもらってよろしいでしょうか?」

少し周囲を伺った後、小声でラテアにだけ聞こえるようにドレロが言った。明日の実験の事で何かあるのだろうか、ラテアはそんな事を思いながら、軽く頷いた。



「すいません。こんなところで、あまり大事にはしたくない事なので…」

見学が終わった後、ラテアが案内されたのは、ドレロの研究室だった。あまり広くなく、片づけられてもいなかった。急を要する事なのかとラテアは思った。

「実は明日の実験の事で…」

どうやら気になる事があるようだ。でも、少し迷っているのか、なかなか次の言葉が続かなかった。

「出来る事なら何でも協力しますよ」

元からそのつもりだった、ラテアはそう言った。

「…。はい、ありがとうございます。…。そうですね、お呼び止めしておいて、私が迷っていてもダメですね。…。実は明日の実験で気になる事があって…」

「気になる事ですか?」

「ええ。明日の実験の事はどこまでご存知ですか?」

「大まかな事は知っているつもりですが、細かいところまでは…」

「そうですか。竜の遺物を使う事は?」

「それは聞いています。二つの竜の遺物を使って、片方から竜の力を抽出して、もう片方に移すというのを聞いています」

「そうですか。そうなんですよ。二つの竜の遺物なんですよ」

「何か問題でも…」

「ええ…」

まだ迷っているようだが、ドレロは続けた。

「お恥ずかしい話ですが、今の私たちの研究所であの実験に使える竜の遺物はひとつしかないんですよ…」

それはバナも言っていた事だとラテアは思った。実験のやり方を考えれば、片方の竜の遺物はその力を失う事は確実だろうし、もう片方もどうなるのか分からない、そういう実験に使える竜の遺物が無いというのは理解できる話だった。

「では、どうやって実験を?」

ラテアは単純にそう思った。

「ええ、ですから、どう準備しているのかと思っていたのですが、未だに良く分からないんです」

「…」

自分に何を聞きたいんだろうとラテアは思った。

「ラテアさんたちが来てから、急にこの実験の話が進んだので、もしかしたら、ラテアさんたちに心当りがあるのではと思っていたのですが…」

「いや、それは…」

そんな話は聞いてないし、心当りも無かった。

「そうですよね。じゃあ、何を当てにしているんでしょうか」

「リアリさんには?」

「ええ、もちろん、聞いてみました。でも、大丈夫というだけなんです」

「それじゃあ、別に何か当てがあるんじゃないですか」

「そうかもしれませんが、今日の時点で私は現物を確認していません。明日に実験が控えている状態で、それは考えられない気がします」

「じゃあ、実験は?」

「もしかして、考えていた当てが外れて、実験は中止になるのかと思ったのですが、そういう事も無いようで、むしろ、張り切って準備している感じです。だから訳が分からなくて、もし、ラテアさんに心当りがあればと思って、ご相談した訳です」

「そう言われても…」

ラテアは戸惑って、この町に来てからの出来事を思い出してみた。全く心当たりが無かった。

「もうひとつ、良いですか?」

ドレロはまた少し言いにくそうに言った。

「実は、所長にはちょっと良くない噂がありまして…」
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