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4章.竜の研究者
33.
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「こういうことを相談しても良いのか、私も迷ったんですが…」
どうしていいのか分からないというようにドレロは続けた。
「実は所長が外部の研究所に実験結果を売り渡して資金提供を受けているという話なんです」
「資金提供?」
「ええ、それが正式な手続きを得ているものであれば、問題ないのですが、私の知らない所で極秘に行われているみたいなんです。それに…」
更に声を潜めるように言う。
「その外部の研究所と言うのが、ちょっと曰く付きの所で…」
「曰く付き?」
「ええ、良くない組織と関わりがあるみたいで…」
あまり、はっきりと言わないが、ラテアにはすぐに事情が推測出来た。竜の力は研究者にとって、とても魅力的な力であると同時にその力の価値と言うのはとても高い物として評価されている。そのため、その力をどのように扱うのかと言うのは、微妙な問題だった。その力を良い方向に使えば問題ないが、そうではない事を考える人もいる。ドレロが言う、曰く付きの研究所、良くない組織と言うのは、そういう力を悪用しようとしているところだろうと思った。そういうところと関わりがあるというのは、あまり良い話では無かった。
「それは本当の事なんですか?」
ラテアは慎重に尋ねた。ラテアはリアリが研究者として優れている事は分かっていた。徹底して研究に挑む姿には、反感を覚えながらも、少し憧れる部分もあったので、不正な研究成果の提供、資金提供と言う俗っぽい事に関わるというのが想像できなかったのだ。
「いくつか証拠はあります。だから間違いないと思います。恐らく所長は自分が悪い事をしているとは思っていないんだと思います」
「…」
「得た資金と言うのも自分の懐に収める事は無く、全て研究に回しているようですから、研究のために利用できる事は何でも利用すると考えているんだと思います」
そう言われるとラテアにも心当りがある気がした。確かに自分たちを利用しようとしているところはあった。
「それは分かる気がします」
「…問題はこの不正を問い詰める事が難しい所にあります」
ドレロの表情は厳しいままだった。
「この研究所は所長が全てですから、所長の意見には逆らえません。それに、それだけの才能を持っている人ですから、研究員もあまり強く言えないんです」
そこでドレロはじっとラテアの方を見た。
「でも、私はこのままでは恐ろしい事が起きるのではと心配なんです。あの時、洞窟で作っていた魔法生物が、良くない組織に渡ったらと思うと…」
ドレロが想像している事を考えてラテアもぞっとした。
「ですから、それを止めたいのです。研究所に関わりのないラテアさんたちに頼むのは筋違いなのかもしれませんが、協力してもらえませんか?」
ドレロは決意したように言った。
どうしていいのか分からないというようにドレロは続けた。
「実は所長が外部の研究所に実験結果を売り渡して資金提供を受けているという話なんです」
「資金提供?」
「ええ、それが正式な手続きを得ているものであれば、問題ないのですが、私の知らない所で極秘に行われているみたいなんです。それに…」
更に声を潜めるように言う。
「その外部の研究所と言うのが、ちょっと曰く付きの所で…」
「曰く付き?」
「ええ、良くない組織と関わりがあるみたいで…」
あまり、はっきりと言わないが、ラテアにはすぐに事情が推測出来た。竜の力は研究者にとって、とても魅力的な力であると同時にその力の価値と言うのはとても高い物として評価されている。そのため、その力をどのように扱うのかと言うのは、微妙な問題だった。その力を良い方向に使えば問題ないが、そうではない事を考える人もいる。ドレロが言う、曰く付きの研究所、良くない組織と言うのは、そういう力を悪用しようとしているところだろうと思った。そういうところと関わりがあるというのは、あまり良い話では無かった。
「それは本当の事なんですか?」
ラテアは慎重に尋ねた。ラテアはリアリが研究者として優れている事は分かっていた。徹底して研究に挑む姿には、反感を覚えながらも、少し憧れる部分もあったので、不正な研究成果の提供、資金提供と言う俗っぽい事に関わるというのが想像できなかったのだ。
「いくつか証拠はあります。だから間違いないと思います。恐らく所長は自分が悪い事をしているとは思っていないんだと思います」
「…」
「得た資金と言うのも自分の懐に収める事は無く、全て研究に回しているようですから、研究のために利用できる事は何でも利用すると考えているんだと思います」
そう言われるとラテアにも心当りがある気がした。確かに自分たちを利用しようとしているところはあった。
「それは分かる気がします」
「…問題はこの不正を問い詰める事が難しい所にあります」
ドレロの表情は厳しいままだった。
「この研究所は所長が全てですから、所長の意見には逆らえません。それに、それだけの才能を持っている人ですから、研究員もあまり強く言えないんです」
そこでドレロはじっとラテアの方を見た。
「でも、私はこのままでは恐ろしい事が起きるのではと心配なんです。あの時、洞窟で作っていた魔法生物が、良くない組織に渡ったらと思うと…」
ドレロが想像している事を考えてラテアもぞっとした。
「ですから、それを止めたいのです。研究所に関わりのないラテアさんたちに頼むのは筋違いなのかもしれませんが、協力してもらえませんか?」
ドレロは決意したように言った。
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