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4章.竜の研究者
34.
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ドレロの言葉を聞いて、どう返事をすれば良いのかラテアは迷った。ドレロの言葉が真実だとすれば、リアリの行動を止めるべきだと思ったのだが、その確証は持てなかった。ただ、ドレロの真剣な想いだけは伝わってきた。
「…、分かりました」
ラテアは言葉を選ぶように答えた。
「私たちも実験が危険であれば、止めようとは考えていました。だから、この実験に問題があるのであれば、ドレロさんに協力します」
「ありがとうございます」
ドレロは頭を下げた。
「バナさんにも?」
「ええ、本来なら私から相談しなければいけないのですが、今動くと所長に動きを悟られてしまう可能性があります。そうなると証拠が握りつぶされてしまって、告発が出来なくなってしまいます。ちゃんと証拠を突き付けて、罪を告白させないとこの研究所は正常に戻らないのではと思っています」
ドレロの決意が伝わってきた。
「ただ、ホウミさんには気を付けてください」
「?」
「彼女は所長の事を信頼しているので、情報が知られるとまずいかもしれないです」
そこでラテアはホウミが今日、ファムとリラと出かけている事を思い出し、そのことを告げた。
「それはおかしいですね」
ドレロは首を傾げた。
「彼女は実験の大事な部分を任されているはずです。確かに準備は一通り完了したという話は聞いていますが、責任感が強い彼女らしくない気がします」
「どういう事ですか?」
「…分かりません。でも、何か嫌な予感がします」
ドレロは少し考えていた。ふとラテアは何かが引っかかるような気がした。実験の準備は本当に終わっているのだろうかと言う事だ。ドレロの言う通りなら、責任感の強いホウミが前日に呑気に遊びに出かける事があるだろうか。もしあるとすれば、実験のために必要な事があるのでは、今、実験に必要とされているのは、竜の遺物。…いや、違う。そこで何かが当てはまった気がした。
正確に言えば、竜の遺物に込められた力、竜の力だ。それだったら竜の遺物にこだわる必要がない。その力を持っているのは…、リラだ。しかも、マコトノモノ力を持っている。その力の存在をリアリは気付いていたんだ。
頭の中で、いくつかの場面が浮かぶ。最初にロットフートの洞窟で魔法生物と戦った場面でリアリはその力を見せていた。その後、研究所に再び訪れた際、竜の力を探る鏡にリラが触れてしまった事。そして、二度目の洞窟の戦い。それによって、リアリはリラの竜の力を使う事を思いついたのではないかと考えたのだ。それだと全ての辻褄があうとラテアは考えた。
「リラが危ない…」
そう言うと、ラテアはドレロの部屋から飛び出していった。
「…、分かりました」
ラテアは言葉を選ぶように答えた。
「私たちも実験が危険であれば、止めようとは考えていました。だから、この実験に問題があるのであれば、ドレロさんに協力します」
「ありがとうございます」
ドレロは頭を下げた。
「バナさんにも?」
「ええ、本来なら私から相談しなければいけないのですが、今動くと所長に動きを悟られてしまう可能性があります。そうなると証拠が握りつぶされてしまって、告発が出来なくなってしまいます。ちゃんと証拠を突き付けて、罪を告白させないとこの研究所は正常に戻らないのではと思っています」
ドレロの決意が伝わってきた。
「ただ、ホウミさんには気を付けてください」
「?」
「彼女は所長の事を信頼しているので、情報が知られるとまずいかもしれないです」
そこでラテアはホウミが今日、ファムとリラと出かけている事を思い出し、そのことを告げた。
「それはおかしいですね」
ドレロは首を傾げた。
「彼女は実験の大事な部分を任されているはずです。確かに準備は一通り完了したという話は聞いていますが、責任感が強い彼女らしくない気がします」
「どういう事ですか?」
「…分かりません。でも、何か嫌な予感がします」
ドレロは少し考えていた。ふとラテアは何かが引っかかるような気がした。実験の準備は本当に終わっているのだろうかと言う事だ。ドレロの言う通りなら、責任感の強いホウミが前日に呑気に遊びに出かける事があるだろうか。もしあるとすれば、実験のために必要な事があるのでは、今、実験に必要とされているのは、竜の遺物。…いや、違う。そこで何かが当てはまった気がした。
正確に言えば、竜の遺物に込められた力、竜の力だ。それだったら竜の遺物にこだわる必要がない。その力を持っているのは…、リラだ。しかも、マコトノモノ力を持っている。その力の存在をリアリは気付いていたんだ。
頭の中で、いくつかの場面が浮かぶ。最初にロットフートの洞窟で魔法生物と戦った場面でリアリはその力を見せていた。その後、研究所に再び訪れた際、竜の力を探る鏡にリラが触れてしまった事。そして、二度目の洞窟の戦い。それによって、リアリはリラの竜の力を使う事を思いついたのではないかと考えたのだ。それだと全ての辻褄があうとラテアは考えた。
「リラが危ない…」
そう言うと、ラテアはドレロの部屋から飛び出していった。
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