竜探しのお話

４章．竜の研究者

３６．

「それでホウミさん。内緒の話って何ですか？」

リラはホウミにそう言った。宿に帰る途中で、二人きりで話したい事があるとリラはホウミに言われた。出来れば誰にも聞かれたくない話と聞いて、リラにはピンとくるものがあった。ファムが先に行くのを見て、二人でこっそりと路地裏の道に入った。

ファムは一人になったのにすぐに気が付いたようだったが、熱心に二人を探す事も無く、すぐに宿屋へと向かった。探すよりも宿屋で待っていた方が間違いないと思ったのかもしれない。二人にとってはその方がありがたかった。

「…」

少しうつろな目で申し訳なさそうな表情をしているホウミ。その様子を見て、リラは自分の考えが間違っていないと思った。

「大丈夫です。言わなくても分かっています」

「…？」

リラが突然、そう言って、ホウミは戸惑う。

「バナさんの事でしょ？」

ホウミはきょとんとした顔をする。

「あれ、違った？もしかして、リアリさん？…それとも、まさかドレロさんとか？…私の知らない人？」

「？？？」

「あっ、そうか、もしかして、サントさんとか、ラテアさんとか、そっちですか？」

そっちは思いもしなかったというようにリラが言う。でも、その可能性もあるんだとリラは一人で納得する。しかし、ホウミには意味が通じていないようできょとんとした表情のままだった。

「えっあれ、違いました？早合点ですか？」

一人で盛り上がっていたリラだったが、ホウミの態度に自分は勘違いしていたのかと思い顔を赤くする。

「私、内緒の話って思ったから、恋愛の話だとピンときたんです。でも違うみたいですね。すいません、勘違いしたみたいで…」

そう言われて、ホウミはリラがあげた名前の意味を理解したようだ。それと同時にホウミの顔が心なしか、赤くなっている気がした。リラはそれを見逃さなかった。

「あっ、やっぱりそうなんですね。誰ですか？やっぱり、バナさんでしょ？」

図星のように更に顔を赤くしたホウミだったが、強く否定し、用件は別の事だと言う。

「実は明日の実験の事で…」

まだ、どこか顔を赤くしたまま、ホウミは真面目な口調で言う。

「何だ…」

リラは少しつまらなそうにした。でも、すぐに改まったホウミの態度に何か特別な事情がある事を察する。

「私が出来る事は何でもしますよ」

続きを言いにくそうにしているホウミに対して、リラは先にそう言った。

「ありがとうございます。本当にすいません」

少し涙目になりながら、本当に申し訳なさそうにホウミは言った。