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4章.竜の研究者
52.
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「本当に人間の考える事は面白い」
テテはそう言いながら姿を現すと、ニヤニヤと笑っていた。
「何だいたのか」
随分、久しぶりに現れたテテに対して、サントはそっけない態度を取る。
「こう見えて、僕も忙しいんだよ」
ニヤニヤとしている。
「まさか、竜になってしまう人間がいるとは思わなかったよ。まあ、本物には見えないけど、なかなかだよ」
楽しそうに言う。
「ここまでの事を想定していたのか、どうなのか分からないけどね」
「何を言っている?」
「さあ?」
そうとぼけるように言う。
「何か知っているのか?」
「ん?知ってるも何も、竜の力を与えられて、マガモノになった人がいるだろう」
どうやらサントの事を言っているようだった。
「似たような事を考える人もいるのか、同じ人が別の事を考えたのか…」
呟くように言う。
「何を言いたい?」
「さあ?」
また、とぼけるように言った。
「あいつが近くにいるのか」
サントの脳裏に黒いローブに包まれた者の姿が浮かんだ。
「しっ」
これ以上、言うなと合図してテテはその姿を消した。テテが姿を消したのを見て、もっといろいろと話を聞いておくべきだったと思う。でも、姿を消してしまった後では遅かった。
「どうした?」
サントの様子が変だと感じたファムが尋ねた。
「いや、何でもない」
姿を消したテテの説明をするのが面倒くさくて、サントはそう答えた。
「で、どうする?」
今後の方針についての話し合いが続いていた。リアリ研究所の混乱が続いている中、ただここで待っているのは時間の無駄だと思われた。研究所の立て直しに協力したい気持ちもあったが、サントたちが直接的に役立つ事は限られていた。それだったら、冒険者としての責務を果たした方が良いのではと話し合っていた。
次の目的地をどこにするかは、なかなか決まらなかった。バナが入手していたいくつかの情報から候補地はあったが、どれも噂レベルの情報でこれと言って選べるほどの物では無かったのだ。テテに聞いてみれば良かったと少し思ったが、そんなに有益な情報をくれるだろうかと言う気もしていた。結局、どれも決定打が無く決められなかった。リアリの事もあり、あまりのんびりしていると、変な噂が立って面倒になる心配もあった。
サントはさっきのテテの様子が気になっていた。黒いローブに包まれた者はどこか近くにいるのだろうか。いるとすればどこなんだろう。考えがなかなかまとまらない。
話し合いが進まない中、サントたちの元に、バナとホウミがやってきた。
テテはそう言いながら姿を現すと、ニヤニヤと笑っていた。
「何だいたのか」
随分、久しぶりに現れたテテに対して、サントはそっけない態度を取る。
「こう見えて、僕も忙しいんだよ」
ニヤニヤとしている。
「まさか、竜になってしまう人間がいるとは思わなかったよ。まあ、本物には見えないけど、なかなかだよ」
楽しそうに言う。
「ここまでの事を想定していたのか、どうなのか分からないけどね」
「何を言っている?」
「さあ?」
そうとぼけるように言う。
「何か知っているのか?」
「ん?知ってるも何も、竜の力を与えられて、マガモノになった人がいるだろう」
どうやらサントの事を言っているようだった。
「似たような事を考える人もいるのか、同じ人が別の事を考えたのか…」
呟くように言う。
「何を言いたい?」
「さあ?」
また、とぼけるように言った。
「あいつが近くにいるのか」
サントの脳裏に黒いローブに包まれた者の姿が浮かんだ。
「しっ」
これ以上、言うなと合図してテテはその姿を消した。テテが姿を消したのを見て、もっといろいろと話を聞いておくべきだったと思う。でも、姿を消してしまった後では遅かった。
「どうした?」
サントの様子が変だと感じたファムが尋ねた。
「いや、何でもない」
姿を消したテテの説明をするのが面倒くさくて、サントはそう答えた。
「で、どうする?」
今後の方針についての話し合いが続いていた。リアリ研究所の混乱が続いている中、ただここで待っているのは時間の無駄だと思われた。研究所の立て直しに協力したい気持ちもあったが、サントたちが直接的に役立つ事は限られていた。それだったら、冒険者としての責務を果たした方が良いのではと話し合っていた。
次の目的地をどこにするかは、なかなか決まらなかった。バナが入手していたいくつかの情報から候補地はあったが、どれも噂レベルの情報でこれと言って選べるほどの物では無かったのだ。テテに聞いてみれば良かったと少し思ったが、そんなに有益な情報をくれるだろうかと言う気もしていた。結局、どれも決定打が無く決められなかった。リアリの事もあり、あまりのんびりしていると、変な噂が立って面倒になる心配もあった。
サントはさっきのテテの様子が気になっていた。黒いローブに包まれた者はどこか近くにいるのだろうか。いるとすればどこなんだろう。考えがなかなかまとまらない。
話し合いが進まない中、サントたちの元に、バナとホウミがやってきた。
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