竜探しのお話

hachijam

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5章.盗賊見習いと竜見習い

11.

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その言葉を聞いて、コトは馬鹿にされたと思ってしまった。

「何だ、お前、ふざけるなよ」

ついそう言ってしまった。さっき感じた怖れと言うのは無くなっていた。言葉を聞いた瞬間は驚いたが、言葉が通じるという事は意思が通じるというのを直感的に理解したからだった。だったら、文句を言っても良いと思った。しかも、利口そうなふりをしている気がして、それがコトを苛立たせた。

コトにとって恐ろしいのは、何を考えているのか分からない存在だった。動物や魔物を恐いと感じる理由はそこにあった。人でも何を考えているのか分からない人は恐い。でも、目の前にいる、得体のしれない物は、見た事は無くても、意思は通じると理解できたので、そう言っても大丈夫だと本能的に理解したようだった。

そう言われて、戸惑ってしまったのは、リアリの方だった。

「な、何だと、私は竜だぞ。分かっているのか」

威厳ある感じでその場を収めなかったのに、まるで子供のような反論しか出来なかった。

「竜?本当?」

疑わしそうにコトが言った。

「そうだ。竜だ。知っているだろう」

少し冷静さを取り戻してリアリが言う。

「竜は知ってるけどさ。お前が?本当に?」

コトも少し落ち着いたようだ。でも、疑いはちっとも消えていなかった。

「だって、竜って、もっとこう、大きな物だろ」

と、手を広げて説明する。

確かに物語で語られる竜と比較されると、リアリがちっぽけである事は否めなかった。

「ふん。いいさ、勝手にしろ」

今度はリアリがへそを曲げたように言う。

「お、おい。そんなに落ち込むなよ」

そんな様子に今度はコトが戸惑った。

「…、まあ、いいや。竜って事で、で、何でお前はここにいるんだ?」

話題を変えようという感じでコトが言った。

「…」

釈然としない気持ちが残ったままのリアリだったが、それとは別にその質問にどう答えるのか迷っていた。正直に偵察に来たことを告げるのは馬鹿らしい。偵察がばれてしまっては、自分の役割は果たせないし、偉そうにした手前、人に使われていると思われるのも嫌だと思ったのだ。

「愚かな人間に話す事は無い」

再び、威厳を取り戻したようにそう言ってみた。

「はいはい、分かりました」

威厳が無い事を見透かされたようにコトが言う。

その態度、苛立ちを感じたリアリは、このまま、焼き殺してやろうかと少し思った。でも、ここでこの人間を殺して大丈夫なのだろうかと考える。一人で山に入った旅人とかであれば、さほどの影響はないだろう。後で発見されても魔物に襲われたですむ話だと思った。ただ、ここは盗賊団の本拠地に近い。仮に見回りだとしたら、行方が分からなくなるのはまずいだろう。

それが理由で警戒されて、サントたちを危険な目にあわせるわけにはいかなかった。それは自分の役割と違うと思ったのだ。
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