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6章.隠された都市
18.
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「意外と筋は良さそうだな」
突然、そう言われてラテアは驚いた。ヌラを紹介されて、その指示に従うように言われた後、ヌラは黙々と作業を続けた。最初は黙って見ていただけのラテアだったが、ヌラに黙って睨まれて、手伝えと言われていると感じた。何をどう手伝えばいいのか分からなかったが、見様見真似で作業してみた。すると、舌打ちが聞こえる。どうやら、やり方が違うらしい。もう一度、じっくりと作業を見て真似をする。また舌打ちがする。それを何度か繰り返した。上手くいっているのかどうなのか、そもそも、何の作業をしているのかも良く分からなかったが、繰り返していく内に、少しずつコツみたいなのが見えてきた。何をやっているのかもだんだんと分かってくる。そんな時に言われた一言だった。
「あ、ありがとうございます」
認められた気がして、嬉しくなってしまったラテアはそう答えた。
「…ふっ」
しかし、ヌラにはと不機嫌そうに返された。何か癇に障ったのだろうか。分かりやすく気難しい人なんだろうとラテアは納得する事にした。ここでの作業、その物はラテアにとって初めての事だったが、こういう環境と言うのは、どこか懐かしい気もした。厳しい親方と言うのであれば、自分の師匠であるマイットの事も思い出す。無駄な事はしゃべらないヌラとは全く違うような気もしたが、醸し出す雰囲気と言うのが似ているのかもしれないと思った。
「それで何をしにここに来たんだ?」
ヌラはまた唐突に言った。自分の目的がばれたのかとラテアは思った。何かばれるような事を言ったのかと、頭の中で考える。
「やっぱりな、大方、ゴーレムの秘術でも知りたいんだろ」
「ゴーレムの秘術?」
思わず聞き返してしまったラテア。
「何だ、違うのか?」
「いや、ええっと」
「まあ、良い。ここに来る奴は大概そうだからな」
どうやら、ゴーレムの技術を盗みに来た技術者だと思われたらしい。それは厄介かもしれない。でも、言い訳するのも苦しいと思った。腹をくくる。
「分かりますか?」
「…。盗めるものなら、勝手に盗めば良い…」
ヌラはそういうと、不敵に笑った。技術者としての自信を見せられた気がした。その姿を見ると、技術者として、それだけの価値がある物の正体を知りたいとラテアは思ってしまった。
ヌラはそれからは何も言葉を発さず、ただ、黙ったまま作業を続けた。ラテアもその作業を見ながら、自分が盗めるものが何なのかを考えるようになった。
突然、そう言われてラテアは驚いた。ヌラを紹介されて、その指示に従うように言われた後、ヌラは黙々と作業を続けた。最初は黙って見ていただけのラテアだったが、ヌラに黙って睨まれて、手伝えと言われていると感じた。何をどう手伝えばいいのか分からなかったが、見様見真似で作業してみた。すると、舌打ちが聞こえる。どうやら、やり方が違うらしい。もう一度、じっくりと作業を見て真似をする。また舌打ちがする。それを何度か繰り返した。上手くいっているのかどうなのか、そもそも、何の作業をしているのかも良く分からなかったが、繰り返していく内に、少しずつコツみたいなのが見えてきた。何をやっているのかもだんだんと分かってくる。そんな時に言われた一言だった。
「あ、ありがとうございます」
認められた気がして、嬉しくなってしまったラテアはそう答えた。
「…ふっ」
しかし、ヌラにはと不機嫌そうに返された。何か癇に障ったのだろうか。分かりやすく気難しい人なんだろうとラテアは納得する事にした。ここでの作業、その物はラテアにとって初めての事だったが、こういう環境と言うのは、どこか懐かしい気もした。厳しい親方と言うのであれば、自分の師匠であるマイットの事も思い出す。無駄な事はしゃべらないヌラとは全く違うような気もしたが、醸し出す雰囲気と言うのが似ているのかもしれないと思った。
「それで何をしにここに来たんだ?」
ヌラはまた唐突に言った。自分の目的がばれたのかとラテアは思った。何かばれるような事を言ったのかと、頭の中で考える。
「やっぱりな、大方、ゴーレムの秘術でも知りたいんだろ」
「ゴーレムの秘術?」
思わず聞き返してしまったラテア。
「何だ、違うのか?」
「いや、ええっと」
「まあ、良い。ここに来る奴は大概そうだからな」
どうやら、ゴーレムの技術を盗みに来た技術者だと思われたらしい。それは厄介かもしれない。でも、言い訳するのも苦しいと思った。腹をくくる。
「分かりますか?」
「…。盗めるものなら、勝手に盗めば良い…」
ヌラはそういうと、不敵に笑った。技術者としての自信を見せられた気がした。その姿を見ると、技術者として、それだけの価値がある物の正体を知りたいとラテアは思ってしまった。
ヌラはそれからは何も言葉を発さず、ただ、黙ったまま作業を続けた。ラテアもその作業を見ながら、自分が盗めるものが何なのかを考えるようになった。
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