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6章.隠された都市
29.
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ラテアが屋敷に戻ったのは、翌日の早朝だった。結局、作業は夜を徹して行われた。ヌラに教えられたゴーレムの核の作り方と言うのは、とても興味深い物だった。付与師としては、魔法石を扱う知識を持っていたラテアはそこに共通する部分もあった。応用すれば、その技術を発展させる事が出来るかもしれないと思った。反対に付与師としての知識も役に立つかもしれないと思った。
その事をヌラに話すと、とても興味深げに話を聞いてくれて、話が盛り上がったのだ。その結果、作業にも熱が入り、徹夜となってしまったのだった。疲れたラテアはそのまま寝てしまった。
起きた時には、リアリ以外みんな出掛けていた。徹夜明けとは言え、のんびりしている時間はそんなには無かった。しかし、ラテアはどうしても、昨日のヌラに言われたことが気になっていた。本来であれば、サントに相談するべきだろう。そう思ったが、今はいない。相談出来ないことを歯がゆいと感じたが、少し、自分でも考えた方が良いのかとも思った。ハレンパルスでの出来事があったからだ。結果はともかくとして、自分が利用されたという事実があった事をラテアは忘れていなかった。それと同じような状況になっていないか、考えるべきだと思ったのだ。
こういう時、リアリの存在はありがたいと思った。リアリに語り掛ける事によって、何がどうなっているのかを整理する事が出来た。しかも、リアリは聞き流すだろう。だったら、丁度良いと思ったのだ。一通り、話し終えてみると、問題が整理できた。ひとつは、ヌラに言われた事だ。このまま協力して良いのか、そして、自分たちの事を話すべきなのか。もうひとつはドンゴの事である。本当に信頼して良いのかどうかというところだ。何も解決出来ていないが改めて問題を認識した事で、スッキリとした気分になる。そして、自分のやるべき事が少しわかった気がする。とりあえずはヌラに協力すれば良いだろう。技術者としての興味もあった。自分の出来ることしかできないとラテアは思った。その時、
「巨大なゴーレム、魔法石の組み合わせ、…」
と、リアリが言った。聞き間違いかと思ったが、それははっきりとした声だった。
「何のために作るのか?」
また、独り言のように呟く。
「単純に作りたいため?それもある。でも、それだけじゃなかったら?」
一人で問答するようにリアリは続けた。ラテアが何かを言った気がしたが、リアリの耳には入っていなかった。
「その技術の源泉は?」
そして、そのまま黙ってしまった。
その事をヌラに話すと、とても興味深げに話を聞いてくれて、話が盛り上がったのだ。その結果、作業にも熱が入り、徹夜となってしまったのだった。疲れたラテアはそのまま寝てしまった。
起きた時には、リアリ以外みんな出掛けていた。徹夜明けとは言え、のんびりしている時間はそんなには無かった。しかし、ラテアはどうしても、昨日のヌラに言われたことが気になっていた。本来であれば、サントに相談するべきだろう。そう思ったが、今はいない。相談出来ないことを歯がゆいと感じたが、少し、自分でも考えた方が良いのかとも思った。ハレンパルスでの出来事があったからだ。結果はともかくとして、自分が利用されたという事実があった事をラテアは忘れていなかった。それと同じような状況になっていないか、考えるべきだと思ったのだ。
こういう時、リアリの存在はありがたいと思った。リアリに語り掛ける事によって、何がどうなっているのかを整理する事が出来た。しかも、リアリは聞き流すだろう。だったら、丁度良いと思ったのだ。一通り、話し終えてみると、問題が整理できた。ひとつは、ヌラに言われた事だ。このまま協力して良いのか、そして、自分たちの事を話すべきなのか。もうひとつはドンゴの事である。本当に信頼して良いのかどうかというところだ。何も解決出来ていないが改めて問題を認識した事で、スッキリとした気分になる。そして、自分のやるべき事が少しわかった気がする。とりあえずはヌラに協力すれば良いだろう。技術者としての興味もあった。自分の出来ることしかできないとラテアは思った。その時、
「巨大なゴーレム、魔法石の組み合わせ、…」
と、リアリが言った。聞き間違いかと思ったが、それははっきりとした声だった。
「何のために作るのか?」
また、独り言のように呟く。
「単純に作りたいため?それもある。でも、それだけじゃなかったら?」
一人で問答するようにリアリは続けた。ラテアが何かを言った気がしたが、リアリの耳には入っていなかった。
「その技術の源泉は?」
そして、そのまま黙ってしまった。
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