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序章.竜探し
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サントの殺気に反応したのか、魔物が姿を現した。さっきと同じコボルトだったが、その数は先ほどとはくらべものにならないくらい多かった。普通の状態でも、今のサントでは苦戦する数だった。まして、今の体の状態でどこまで戦えるのか分からなかった。逃げるかと一瞬考えたが、周囲を完全に覆われていた。これではどうにもならない。せっかく助かったと思ったのに、またやられてしまうのか、サントは不安に思う。
「だから力を使えば良いんだよ。簡単だよ。自分の中の竜の声に従えば良いんだ。落ち着いて耳を澄ませてみな」
サントの不安をかき消すようにそう言うテテ。サントは状況を考え、その言葉に従うしかないと思った。意識を集中してみると、その声は確かに聞こえた。
イシキヲシュウチュウシテチカラヲカイホウセヨ。
唸り声のような声でそう言っている。落ち着けと自分に言い聞かせながら、大きく息を吐き、その言葉通り、意識を集中していく。すると身体を不思議な緑色の光が包んでいき、高揚感と共に力がみなぎってきた。
(これなら戦える)
そう思った瞬間、体が動いていた。考えるよりも素早く的確にコボルトの急所を突き、一匹ずつ着実に倒していった。コボルトはおそらくどうやって自分が倒されたのかも分からなかったのではと思うほど、サントの動きは素早かった。
あっという間にコボルトは全て倒された。
「だから言っただろ。力を使えば問題ないって」
まだ、どこか意地悪そうにテテは言う。サントは自分が手に入れた力の大きさに驚いていて、その言い方に込められた意味に気が付いていなかった。まだ、高揚した気分が続いていた。ただ、すぐにその意味に気が付く事になる。
「そうそう言い忘れていたけど、マガモノが竜の力を使うとペナルティがあるから」
「ペナルティ?」
そう聞き返したところでサントを激しい痛みが襲った。さっき、感じた痛みと同種の物だった。
「そう、君の場合は痛みのようだね。力を使った分だけ、その痛みを味わう事になる。しかも、呪いによる痛みだから、逃げる事は出来ないよ。ただし、それでダメージを受ける事は無いから、その辺は心配しないで良いよ。純粋に、ただ痛いだけだから」
激痛に苦しむサントを見ながらどこか嬉しそうにテテは言った。激しい痛みの中、冒険者としてのこれからの自分の事を考えるサント。竜の呪い、手に入れた力、激しい痛み、様々な事を思いながら必死にその痛みに耐えていった。
こうしてサントの竜探しとしての物語が始まる事になる。
「だから力を使えば良いんだよ。簡単だよ。自分の中の竜の声に従えば良いんだ。落ち着いて耳を澄ませてみな」
サントの不安をかき消すようにそう言うテテ。サントは状況を考え、その言葉に従うしかないと思った。意識を集中してみると、その声は確かに聞こえた。
イシキヲシュウチュウシテチカラヲカイホウセヨ。
唸り声のような声でそう言っている。落ち着けと自分に言い聞かせながら、大きく息を吐き、その言葉通り、意識を集中していく。すると身体を不思議な緑色の光が包んでいき、高揚感と共に力がみなぎってきた。
(これなら戦える)
そう思った瞬間、体が動いていた。考えるよりも素早く的確にコボルトの急所を突き、一匹ずつ着実に倒していった。コボルトはおそらくどうやって自分が倒されたのかも分からなかったのではと思うほど、サントの動きは素早かった。
あっという間にコボルトは全て倒された。
「だから言っただろ。力を使えば問題ないって」
まだ、どこか意地悪そうにテテは言う。サントは自分が手に入れた力の大きさに驚いていて、その言い方に込められた意味に気が付いていなかった。まだ、高揚した気分が続いていた。ただ、すぐにその意味に気が付く事になる。
「そうそう言い忘れていたけど、マガモノが竜の力を使うとペナルティがあるから」
「ペナルティ?」
そう聞き返したところでサントを激しい痛みが襲った。さっき、感じた痛みと同種の物だった。
「そう、君の場合は痛みのようだね。力を使った分だけ、その痛みを味わう事になる。しかも、呪いによる痛みだから、逃げる事は出来ないよ。ただし、それでダメージを受ける事は無いから、その辺は心配しないで良いよ。純粋に、ただ痛いだけだから」
激痛に苦しむサントを見ながらどこか嬉しそうにテテは言った。激しい痛みの中、冒険者としてのこれからの自分の事を考えるサント。竜の呪い、手に入れた力、激しい痛み、様々な事を思いながら必死にその痛みに耐えていった。
こうしてサントの竜探しとしての物語が始まる事になる。
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