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1章.出会い
5.
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リラ・テイアートと言うのが、その少女の名前だった。サウステイルに住んでいて、たまに竜の遺跡に遊びに来ているらしい。遺跡の静かな雰囲気が好きなようだ。サントが旅人だと知ったリラは竜の遺跡を案内してくれた。それほど大きな遺跡では無かったが、案内があるのはサントにとってはありがたかった。特に内部の入り口は少し分かりにくい所があって、リラの案内が無ければ見逃していたかもしれないと思った。
「ここが祭壇で昔はいろいろと儀式が行われていたんだ。今は年に一度のお祭りの時ぐらいかな」
そこは更に神聖さが増しているようだった。祭壇は竜の形をしていていた。なぜか心惹かれる物があった。気が付いたら手を触れていた。ぞくっとした感覚が走った。体の中の何かが反応しているような気がした。かつていた何かの気配を感じるようだった。
「旅人さんも不思議な力を感じる?」
リラはサントの様子を見て、そう言った。サントと同じ様に祭壇に触れる。
「昔、ずっと大昔。竜がここにいて、最後の時を迎えたという話があるの。だから、その竜の魂がここに眠っているとも言われているんだ」
リラはサウステイルに伝わっている話を教えてくれた。
「そう言えば、竜がまだいるなんて噂を聞いたんだけど」
リラだったら何か知っていれば話してくれるかもしれないとサントは思った。
「竜?どこに?」
「この遺跡に…」
「ふふふ。それが本当だったら素敵だけど、私は見たことない」
リラは何も知らないようだった。
「じゃあ、途中にあった丸く切り取られたような跡がある木は何なのか知ってる?」
「あっ、あれは…」
ちょっと言いよどむ。何か知っているのかと思いサントが言葉を続けようとすると、
「そろそろ帰らないと遅くなると怒られる」
と、急にそわそわし始めた。何か秘密があるのかもしれないとサントは思ったが、そろそろ戻らないと遅くなってしまうのは事実だと思い、そこでの追及は諦める事にした。帰りがてら、もう少し話を聞いてみようと思った。
竜の遺跡を後にして、そう言えばと気になった事を思い出した。
「テテの事は見えているの?」
「テテ?」
「僕の事だよ」
テテが姿を現した。
「へぇ、妖精さん。そういう名前なんだ。よろしくね、テテ」
「おっ、礼儀正しいお嬢さんだ。どっかの誰かさんとは大違いだ」
「やっぱり、見えているんだ」
テテを無視するようにサントは言った。
「心清らかな人には見えるんだよ」
テテが気まぐれで、誰にも見えるように姿を現しているのかもしれないとサントは思った。どうやら、テテはリラの事を気に入ったらしい。リラも妖精が珍しいようで、興味を示していた。仲良さそうに会話を続けていた。
「ここが祭壇で昔はいろいろと儀式が行われていたんだ。今は年に一度のお祭りの時ぐらいかな」
そこは更に神聖さが増しているようだった。祭壇は竜の形をしていていた。なぜか心惹かれる物があった。気が付いたら手を触れていた。ぞくっとした感覚が走った。体の中の何かが反応しているような気がした。かつていた何かの気配を感じるようだった。
「旅人さんも不思議な力を感じる?」
リラはサントの様子を見て、そう言った。サントと同じ様に祭壇に触れる。
「昔、ずっと大昔。竜がここにいて、最後の時を迎えたという話があるの。だから、その竜の魂がここに眠っているとも言われているんだ」
リラはサウステイルに伝わっている話を教えてくれた。
「そう言えば、竜がまだいるなんて噂を聞いたんだけど」
リラだったら何か知っていれば話してくれるかもしれないとサントは思った。
「竜?どこに?」
「この遺跡に…」
「ふふふ。それが本当だったら素敵だけど、私は見たことない」
リラは何も知らないようだった。
「じゃあ、途中にあった丸く切り取られたような跡がある木は何なのか知ってる?」
「あっ、あれは…」
ちょっと言いよどむ。何か知っているのかと思いサントが言葉を続けようとすると、
「そろそろ帰らないと遅くなると怒られる」
と、急にそわそわし始めた。何か秘密があるのかもしれないとサントは思ったが、そろそろ戻らないと遅くなってしまうのは事実だと思い、そこでの追及は諦める事にした。帰りがてら、もう少し話を聞いてみようと思った。
竜の遺跡を後にして、そう言えばと気になった事を思い出した。
「テテの事は見えているの?」
「テテ?」
「僕の事だよ」
テテが姿を現した。
「へぇ、妖精さん。そういう名前なんだ。よろしくね、テテ」
「おっ、礼儀正しいお嬢さんだ。どっかの誰かさんとは大違いだ」
「やっぱり、見えているんだ」
テテを無視するようにサントは言った。
「心清らかな人には見えるんだよ」
テテが気まぐれで、誰にも見えるように姿を現しているのかもしれないとサントは思った。どうやら、テテはリラの事を気に入ったらしい。リラも妖精が珍しいようで、興味を示していた。仲良さそうに会話を続けていた。
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