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2章.付与師
5.
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「お呼びですか」
青年が言う。
「用事があるから鈴を鳴らしたんだ」
「はい」
「全く無駄口が多いんだから」
と老人がブツブツと言う。
「あの、次の仕事って?」
リラが恐る恐る尋ねる。
「ああ、そうだった。全く余計な事を言われるから、…」
何だこの爺さんはとサントは思った。リラも困ったような顔をしていた。青年はいつもの事と言うように慣れているようで黙っていた。
「まあいい。とにかく、もう少し純度を高める必要がある。ラテア、月見の水を汲んできておくれ」
「…でも、私では月見の水は汲めません」
「はぁ」
ラテアと呼ばれた青年が言った言葉に老人はため息をつく。
「だから、この二人と一緒に行って来いと言っているんだ。早くしないと今日中に間に合わなくなるよ。今日を逃すともうしばらくはチャンスはないのは分かっているだろ。だいたい、あんたらも無いと困るんだから、さっさと行きなさい」
老人は一気にそう言うと目をつぶって黙ってしまった。
また、急な変化に戸惑うサントとリラだったが、ラテアが無駄だというように首を振ったので、追及を諦めた。何だか分からないが、ラテアと共に月見の水を汲みに行くことになった。
「マイット様は偉大な魔法使いで、占い師で、予言者です」
月見の水を汲みに行くことになったサントとリラはラテアからそう聞いた。マイット・リドと言うのがその名前だそうだ。
「少々、変わったところがありますが、予言の水晶で全てを見通せる力をお持ちです」
「少々ですか」
「大分の間違いでは?」
リラとサントはそれぞれ反応した。
「まあ、そうかもしれませんが、悪い人では無いですよ」
同じ様な事をダイタが言っていたのをサントは思い出していた。
月見の水とは、ここから少し離れたところにある泉にある水で、月明かりを浴びる事で不思議な魔力を秘める水だという。十日ほど月明かりを浴び続けた時が一番魔力が高まると言われていて、ここ十日あまり晴れが続いている事を考えると最高の状態だと言えるらしい。このタイミングを逃すとまたしばらくはお目に掛かれなくなるらしい。その上、その魔力はとても繊細で、強い魔法の力を持たない者が汲むとただの水になってしまうのだという。
「残念ながら、私の魔力ではどうにもならないんです」
ラテアはそう言った。
「と言う事は、リラが汲むという事なのかな」
サントは考えながら言った。
「私がですか」
「俺も魔力がある方じゃないし、偉大な魔法使いって事は見ただけで、リラの魔力に気が付いたって事かもしれない」
「そうなんですか?」
リラはラテアに聞いた。
「さあ、私には分かりませんが、マイット様は全てを見通しているお方ですから、何か考えがあるのかもしれません」
青年が言う。
「用事があるから鈴を鳴らしたんだ」
「はい」
「全く無駄口が多いんだから」
と老人がブツブツと言う。
「あの、次の仕事って?」
リラが恐る恐る尋ねる。
「ああ、そうだった。全く余計な事を言われるから、…」
何だこの爺さんはとサントは思った。リラも困ったような顔をしていた。青年はいつもの事と言うように慣れているようで黙っていた。
「まあいい。とにかく、もう少し純度を高める必要がある。ラテア、月見の水を汲んできておくれ」
「…でも、私では月見の水は汲めません」
「はぁ」
ラテアと呼ばれた青年が言った言葉に老人はため息をつく。
「だから、この二人と一緒に行って来いと言っているんだ。早くしないと今日中に間に合わなくなるよ。今日を逃すともうしばらくはチャンスはないのは分かっているだろ。だいたい、あんたらも無いと困るんだから、さっさと行きなさい」
老人は一気にそう言うと目をつぶって黙ってしまった。
また、急な変化に戸惑うサントとリラだったが、ラテアが無駄だというように首を振ったので、追及を諦めた。何だか分からないが、ラテアと共に月見の水を汲みに行くことになった。
「マイット様は偉大な魔法使いで、占い師で、予言者です」
月見の水を汲みに行くことになったサントとリラはラテアからそう聞いた。マイット・リドと言うのがその名前だそうだ。
「少々、変わったところがありますが、予言の水晶で全てを見通せる力をお持ちです」
「少々ですか」
「大分の間違いでは?」
リラとサントはそれぞれ反応した。
「まあ、そうかもしれませんが、悪い人では無いですよ」
同じ様な事をダイタが言っていたのをサントは思い出していた。
月見の水とは、ここから少し離れたところにある泉にある水で、月明かりを浴びる事で不思議な魔力を秘める水だという。十日ほど月明かりを浴び続けた時が一番魔力が高まると言われていて、ここ十日あまり晴れが続いている事を考えると最高の状態だと言えるらしい。このタイミングを逃すとまたしばらくはお目に掛かれなくなるらしい。その上、その魔力はとても繊細で、強い魔法の力を持たない者が汲むとただの水になってしまうのだという。
「残念ながら、私の魔力ではどうにもならないんです」
ラテアはそう言った。
「と言う事は、リラが汲むという事なのかな」
サントは考えながら言った。
「私がですか」
「俺も魔力がある方じゃないし、偉大な魔法使いって事は見ただけで、リラの魔力に気が付いたって事かもしれない」
「そうなんですか?」
リラはラテアに聞いた。
「さあ、私には分かりませんが、マイット様は全てを見通しているお方ですから、何か考えがあるのかもしれません」
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