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2章.付与師
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「さて、そろそろ出来る頃かな」
サントの表情に気づいているのか分からないまま、そう言った。するとタイミング良く奥からラテアが現れた。
「出来ました」
そう言いながら手に持っていた物をマイットに差し出す。それは翠色の魔封じの石がはめ込まれた腕輪だった。不思議な模様が刻まれていて、魔封じの石も独自の形に加工されていた。
「なかなか、良い出来だ。ほれ、お嬢さん。これを付けてみなさい」
そう言いながら、リラに付けるように促した。リラは戸惑いながらその言葉に従った。その腕輪はピタッとリラの腕にはまった。
「さすが、付与師としての腕は間違いない」
どこか嬉しそうにマイットが言った。
「この腕輪は?」
「魔力を制御するための腕輪です」
ラテアが答える。
「これで魔法の力を抑えて、魔法を使う事が出来るはずだ」
「魔法の力を抑える?」
「そう、いくら危機的状況になったからと言って、いつもあんな暴走するような魔法を使われたんじゃ困るだろ。それを自分の思ったように制御できるという事だ」
「そうなんですか?」
「本当か、それは助かる」
リラもサントも半信半疑ながら、それが本当ならかなりありがたいと思った。
「大丈夫。ラテアの付与師としての腕は私が保証するから」
マイットが言うには、通常、魔法石をはめた道具は、その魔法石以上の力を持たない。ただ、その魔法石を特定の形に加工し、配置する事でその力とは別の力を持たせる事が出来る。その技術を持っているのが付与師であり、その付与師として、ラテアはマイットに認められた存在だという。今回の場合、魔封じの力を持った魔法石を用いたので、通常であれば魔法の力を封じ込める力しか持たないはずである。それをラテアの技術によって、魔力を制御できるようにしたというのだった。
「ただ、ひとつだけ問題が…」
ラテアが申し訳なさそうに言う。
「竜の力がどこまであるのか分からないので、どこまで制御できるかは自信が無いです」
「うむ。まあ、そうだろうな。確かに良い魔封じの石で純度が高いと言っても、出回っている物ではたかが知れているだろう。それに、そんな簡単に出来たら、誰も苦労しない」
「ですから」
「分かっている何を言いたいのか。私は偉大なる魔法使いで占い師で予言者だよ」
「自分で言っているじゃないか」
「否定はしないと言っただろ」
テテの言葉をマイットは軽くいなす。
「その二人と共に旅したいのだろう?」
「はい」
力強くラテアが返事した。
「さて、お二人さん。ラテアはこう言っているが一緒に連れていってもらえないかね。私が言うのも何だが、便利で役に立つ男だ」
これまでと違った態度を見せるマイット。断りづらい空気が流れた。
サントの表情に気づいているのか分からないまま、そう言った。するとタイミング良く奥からラテアが現れた。
「出来ました」
そう言いながら手に持っていた物をマイットに差し出す。それは翠色の魔封じの石がはめ込まれた腕輪だった。不思議な模様が刻まれていて、魔封じの石も独自の形に加工されていた。
「なかなか、良い出来だ。ほれ、お嬢さん。これを付けてみなさい」
そう言いながら、リラに付けるように促した。リラは戸惑いながらその言葉に従った。その腕輪はピタッとリラの腕にはまった。
「さすが、付与師としての腕は間違いない」
どこか嬉しそうにマイットが言った。
「この腕輪は?」
「魔力を制御するための腕輪です」
ラテアが答える。
「これで魔法の力を抑えて、魔法を使う事が出来るはずだ」
「魔法の力を抑える?」
「そう、いくら危機的状況になったからと言って、いつもあんな暴走するような魔法を使われたんじゃ困るだろ。それを自分の思ったように制御できるという事だ」
「そうなんですか?」
「本当か、それは助かる」
リラもサントも半信半疑ながら、それが本当ならかなりありがたいと思った。
「大丈夫。ラテアの付与師としての腕は私が保証するから」
マイットが言うには、通常、魔法石をはめた道具は、その魔法石以上の力を持たない。ただ、その魔法石を特定の形に加工し、配置する事でその力とは別の力を持たせる事が出来る。その技術を持っているのが付与師であり、その付与師として、ラテアはマイットに認められた存在だという。今回の場合、魔封じの力を持った魔法石を用いたので、通常であれば魔法の力を封じ込める力しか持たないはずである。それをラテアの技術によって、魔力を制御できるようにしたというのだった。
「ただ、ひとつだけ問題が…」
ラテアが申し訳なさそうに言う。
「竜の力がどこまであるのか分からないので、どこまで制御できるかは自信が無いです」
「うむ。まあ、そうだろうな。確かに良い魔封じの石で純度が高いと言っても、出回っている物ではたかが知れているだろう。それに、そんな簡単に出来たら、誰も苦労しない」
「ですから」
「分かっている何を言いたいのか。私は偉大なる魔法使いで占い師で予言者だよ」
「自分で言っているじゃないか」
「否定はしないと言っただろ」
テテの言葉をマイットは軽くいなす。
「その二人と共に旅したいのだろう?」
「はい」
力強くラテアが返事した。
「さて、お二人さん。ラテアはこう言っているが一緒に連れていってもらえないかね。私が言うのも何だが、便利で役に立つ男だ」
これまでと違った態度を見せるマイット。断りづらい空気が流れた。
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