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2章.付与師
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「ダメダメダメ。これは竜探しの旅なんだから、余計な人がくっついて来たら邪魔になる」
テテがそう言う。
「その腕輪だって、僕は気に入らないよ。竜の力は抑える物じゃない。もっと派手に思いっきり使って良いんだよ。与えられた力だよ、使わないと勿体ないじゃないか」」
「でも、それじゃ、みんなに迷惑かけちゃう」
テテにリラは答える。
「私は別に良いよ。この腕輪で魔法の力が抑えられるなら助かるし」
サントは少し考えてマイットに言った。
「ひとつだけ聞かせてくれ」
「ん?」
「どこまでが分かっていた事なんだ?」
「なかなか難しい問いだね。偉大なる魔法使いで占い師で予言者でも全てが見通せる訳ではない。私は困っているお嬢さんがここに来ると知って、その手助けをしたいと思っただけ。ただ…」
「ただ?」
「こうなる事を期待していたのかもしれない」
「期待?」
マイットはニヤッと笑って、その後は何も言わなかった。
「この先の未来の事も分かっているのか?」
サントは別の気になっている事も聞いた。
「さあ、それは何とも言えない。未来を予言したとして、それが確定した物かどうかは誰にも分からないからね。それに、その竜の魂の子がこれ以上、何か言うと怒りそうだしな」
どこか楽しそうにマイットは言った。テテの方を見ると、かなり不機嫌そうで、そのまま姿を消した。
「ひとつだけ助言しておこう。これはただの年寄りが言う事だ、それぐらいは許してもらえるだろう」
マイットは少しだけ真剣な表情をして続けた。
「旅には希望もあるが、絶望もある。困難な出来事を乗り切るには、力が必要となる。ただ、その力は己自身の物で無ければならない。自分の力が何なのかは問い続けなさい。そうすれば道は開けるだろう」
サント、リラ、ラテアの三人は黙ってその言葉を聞いていた。
「分かった。一緒に行こう」
サントはそう決断するとラテアに向かって手を出した。ラテアはその手をしっかりと握りしめた。こうして付与師である、ラテア・ツードがサントたちの仲間となった。
「ああ、そうそう。ひとつだけ、お使いを頼まれてくれ」
そう言うとマイットは、懐から丸薬のようなものを取り出した。
「これは?」
「怪我に効く丸薬だ。パスの村のダイタに飲ませてやってくれ」
サントはダイタが偏屈だけど悪い人じゃないと言っていたのを思い出した。だいぶ、偏屈な爺さんだけど、確かにそんなに悪い人ではない、むしろ良い人なのかもしれないとサントも思うようになっていた。
テテがそう言う。
「その腕輪だって、僕は気に入らないよ。竜の力は抑える物じゃない。もっと派手に思いっきり使って良いんだよ。与えられた力だよ、使わないと勿体ないじゃないか」」
「でも、それじゃ、みんなに迷惑かけちゃう」
テテにリラは答える。
「私は別に良いよ。この腕輪で魔法の力が抑えられるなら助かるし」
サントは少し考えてマイットに言った。
「ひとつだけ聞かせてくれ」
「ん?」
「どこまでが分かっていた事なんだ?」
「なかなか難しい問いだね。偉大なる魔法使いで占い師で予言者でも全てが見通せる訳ではない。私は困っているお嬢さんがここに来ると知って、その手助けをしたいと思っただけ。ただ…」
「ただ?」
「こうなる事を期待していたのかもしれない」
「期待?」
マイットはニヤッと笑って、その後は何も言わなかった。
「この先の未来の事も分かっているのか?」
サントは別の気になっている事も聞いた。
「さあ、それは何とも言えない。未来を予言したとして、それが確定した物かどうかは誰にも分からないからね。それに、その竜の魂の子がこれ以上、何か言うと怒りそうだしな」
どこか楽しそうにマイットは言った。テテの方を見ると、かなり不機嫌そうで、そのまま姿を消した。
「ひとつだけ助言しておこう。これはただの年寄りが言う事だ、それぐらいは許してもらえるだろう」
マイットは少しだけ真剣な表情をして続けた。
「旅には希望もあるが、絶望もある。困難な出来事を乗り切るには、力が必要となる。ただ、その力は己自身の物で無ければならない。自分の力が何なのかは問い続けなさい。そうすれば道は開けるだろう」
サント、リラ、ラテアの三人は黙ってその言葉を聞いていた。
「分かった。一緒に行こう」
サントはそう決断するとラテアに向かって手を出した。ラテアはその手をしっかりと握りしめた。こうして付与師である、ラテア・ツードがサントたちの仲間となった。
「ああ、そうそう。ひとつだけ、お使いを頼まれてくれ」
そう言うとマイットは、懐から丸薬のようなものを取り出した。
「これは?」
「怪我に効く丸薬だ。パスの村のダイタに飲ませてやってくれ」
サントはダイタが偏屈だけど悪い人じゃないと言っていたのを思い出した。だいぶ、偏屈な爺さんだけど、確かにそんなに悪い人ではない、むしろ良い人なのかもしれないとサントも思うようになっていた。
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