竜探しのお話

hachijam

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3章.槍使い

4.

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ギルドの紹介で来たことを告げると、すぐに中に通された。そこには、大柄の男が偉そうに椅子にふんぞり返っていた。この男がガルトのようである。

「ギルドの紹介ね。最近はこんなのしかいないのか」

サントたちを見るなり、そう言う。一瞬、ムカッとした表情が顔に出てしまうサント。それを見て、不機嫌そうにガルトが言う。

「まあいい。こちらとしては仕事をしてくれば何でも良い。サフィス、後は頼むぞ」

そう言うと、あっさりと奥に引っ込んでしまった。サフィスと呼ばれた男が後を続ける。

「私がこの屋敷の警備すべてを任されているサフィス・ソポズだ」

サフィスが言うには、最近、この屋敷に侵入者があったそうだ。幸い、盗まれた物は無かったそうだが、大事な取引を控えているらしく、警備を強化する事を決めたそうである。



「それにしても厳重な警備ですね」

屋敷の中を案内されながらラテアが言った。

「大事な取引があるからな」

そう言って案内されたのが、屋敷の一番奥で一番厳重に警備されている部屋だった。部屋の中央に大きな槍が飾ってあった。少しいびつな形をしていて、無骨な印象を受ける。

「これは?」

その槍を見た時、サントはぞくっとした感覚を感じた。思わず手を触れたい衝動に駆られる。

「触れるな」

サフィスの声にビクッとなる。しかし、それはサントでは無く、リラに向けて言った言葉だった。リラは、はっとして、

「すいません」

と謝る。

「もしかして、竜の魔槍ですか?」

ラテアが言う。

「ほう、これの価値が分かるのか?」

サフィスは少し感心したように言った。

「竜の魔槍?」

サントが小声でラテアに尋ねた。

「竜の骨から作られたと言われている槍だよ。世界中探しても、数本しかないと言われている物だよ」

ラテアが小声で返した。

「竜の骨…」

そう言われて、サントとリラは何か惹かれた理由が分かった気がした。

「さて、行くぞ」

サフィスはそう言うとその部屋を後にする。サントたちも慌てて後に続いた。

「あの竜の魔槍を守るのが仕事ですか?」

サントは恐る恐る尋ねた。

「ん?ははは、面白い奴だな。ギルドの紹介とは言え、いきなりあんな大事な所の警備を任されると思ったのか?」

少し安心したような、がっかりしたような気持ちが交差した。

「見た所、まだ駆け出しだろ。お前たちの持ち場は違うところだよ」

そう言って案内されたのは、屋敷の外れにある倉庫だった。

「ここがお前たちの持ち場だよ」

「ここですか?」

サントはちょっと拍子抜けした気分になった。そこにあったのは、よくある大量生産された武器や防具ばかりだったからだ。
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