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3章.槍使い
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リラは一人でノリントバーグの町を探索していた。しばらくはラテアと一緒にいたが、人ごみの中、気が付いたら見失っていた。ラテアを探した方が良いか、一瞬考えたが、宿屋の位置は分かっているし、時間はまだ大丈夫なはずだから、一人でうろついても大丈夫だと思った。ラテアはラテアでやりたい事があるだろうしと思った。
見るものすべてが珍しくて、ただ歩いているだけでも楽しかった。しばらく歩いた後、少し人込みに疲れたリラは、人通りが少ない道を見つけて入った。丁度、裏通りに通じる道だった。これまでと違った静かな雰囲気がまた新鮮に感じた。賑やかな町にもこういう風景があるんだと思う。
目の前から男が歩いてきた。表通りでは混んでいたので、人にぶつからないように意識して注意する必要があった、でも、この道はそんなに広くは無かったが、他に人はいなかったので、そこまで気にする必要はないと思った。でも、なぜか、その男にぶつかってしまった。ガシャンと男が持っていたガラスのビンが落ちて割れる音がした。中身の液体がこぼれる。
「おいおいおい。どうしてくれるんだよお嬢さん」
険しい顔をして男が近づいてきた。
「すいません」
リラはとっさに謝る。
「すいませんじゃないよ。大事な薬なのにどうしてくれるんだよ」
「本当にごめんなさい」
リラはひたすら謝った。
「ごめんじゃすまないんだよ。おい」
男が声を荒げて、リラの腕を掴んだ。
「この薬にいくら掛かったと思っているんだ。弁償してもらわないと困るんだよ」
更に男が強い口調で責めてきた。
「ごめんなさい。私、お金そんなに持っていないです」
「そんなんですむと思ってんのか」
男はリラの腕を更に強く掴んだ。
「痛っ」
リラは顔をしかめる。
「へぇ、なかなか良さそうな腕輪持っているじゃないか。それで勘弁してやろうか」
男がリラの腕輪に気が付いて言う。
「あぁ、ダメです。この腕輪は」
そう言いながら、リラは男の腕を振り払った。同時に手が顔に当たる。
「なんだ、お前。俺に逆らうのか」
男は怒って拳を振り上げた。リラは身の危険を感じる。すると自分の意識しない所で魔力が集まっているのを感じた。
(ダメダメ。ここで魔法を使っちゃ)
そう思うが、魔力が集まるのを止める事は出来なかった。男の拳が当たる、と思った瞬間、
「おい、そこまでにしておきな」
と、男の後ろから声が聞こえてきた。男の動きが一瞬止まり、何だという顔をして振り返る。と同時に、男の顔に綺麗に一発パンチが決まった。
見るものすべてが珍しくて、ただ歩いているだけでも楽しかった。しばらく歩いた後、少し人込みに疲れたリラは、人通りが少ない道を見つけて入った。丁度、裏通りに通じる道だった。これまでと違った静かな雰囲気がまた新鮮に感じた。賑やかな町にもこういう風景があるんだと思う。
目の前から男が歩いてきた。表通りでは混んでいたので、人にぶつからないように意識して注意する必要があった、でも、この道はそんなに広くは無かったが、他に人はいなかったので、そこまで気にする必要はないと思った。でも、なぜか、その男にぶつかってしまった。ガシャンと男が持っていたガラスのビンが落ちて割れる音がした。中身の液体がこぼれる。
「おいおいおい。どうしてくれるんだよお嬢さん」
険しい顔をして男が近づいてきた。
「すいません」
リラはとっさに謝る。
「すいませんじゃないよ。大事な薬なのにどうしてくれるんだよ」
「本当にごめんなさい」
リラはひたすら謝った。
「ごめんじゃすまないんだよ。おい」
男が声を荒げて、リラの腕を掴んだ。
「この薬にいくら掛かったと思っているんだ。弁償してもらわないと困るんだよ」
更に男が強い口調で責めてきた。
「ごめんなさい。私、お金そんなに持っていないです」
「そんなんですむと思ってんのか」
男はリラの腕を更に強く掴んだ。
「痛っ」
リラは顔をしかめる。
「へぇ、なかなか良さそうな腕輪持っているじゃないか。それで勘弁してやろうか」
男がリラの腕輪に気が付いて言う。
「あぁ、ダメです。この腕輪は」
そう言いながら、リラは男の腕を振り払った。同時に手が顔に当たる。
「なんだ、お前。俺に逆らうのか」
男は怒って拳を振り上げた。リラは身の危険を感じる。すると自分の意識しない所で魔力が集まっているのを感じた。
(ダメダメ。ここで魔法を使っちゃ)
そう思うが、魔力が集まるのを止める事は出来なかった。男の拳が当たる、と思った瞬間、
「おい、そこまでにしておきな」
と、男の後ろから声が聞こえてきた。男の動きが一瞬止まり、何だという顔をして振り返る。と同時に、男の顔に綺麗に一発パンチが決まった。
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