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3章.槍使い
7.
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「ぐへぇ」
男がひっくり返る。リラは何が起こったのか一瞬分からなかったが、男が倒れたので、心配して声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「なんだお前は」
男はリラを無視して、立ち上がると、声の方に向き直った。そこにいたのは一人の女だった。
「せこい事、やっているんじゃないよ」
女の声に男が反応する。
「ふざけんなバカ野郎」
そう言いながら、女に殴りかかる。女は男の攻撃を軽くかわすと、足を払って転ばせる。
「なんだてめぇ、クソ」
もう一度、起き上がると女に体当たりを喰らわせようとした。それを女は軽くかわして、再び足を払う。男は叶わないと悟ると、途端に逃げ出した。
「大丈夫か。お嬢ちゃん」
男が去っていたのを確認して女がリラに声を掛けた。
「あっはい。大丈夫です」
そう言いながら、女が差し出して手を握ってリラは立ち上がった。
「…あの、私。弁償しなくていいんでしょうか?」
リラは男が逃げていった方向を見て言った。
「弁償?」
「はい、私。ぶつかって、大事なお薬をダメにしちゃったんです」
暗い顔をしてリラが言う。
「ははは、面白いお嬢さんだね」
女が愉快そうに笑った。
「あれはただの水の入ったビンだよ。あんたみたいな田舎者からお金をせしめるためにわざとぶつかって弁償しろって騒ぐんだよ」
「そうなんですか」
「そうだよ。全く同じ手口でやられた奴を知っているからね。この辺じゃ良くあるんだ」
少し不愉快そうに女は言った。
「それなら良かった」
ホッとするリラ。
「良かった?」
「はい。あれがお薬だったら、私のせいで病気の人が助からなくなるんじゃないかと思って…。でも、そういう病気の人もいないという事ですよね」
「まあ、そうだろうな」
「じゃあ、良かった。安心しました」
嬉しそうなリラの姿を見て、女は困惑する。
「いやいやいや、あんた、被害者だよ?騙されかかったんだよ?」
「えっあそうか。でも、騙されてはないですから」
リラは何事も無かったように言った。
「いや、そうかもしれないけど」
女は力説しようとしてため息をついた。
「まあ、いいや。何だか馬鹿らしくなってきたよ。何にしろ、何もなくて良かったよ。これからは、気をつけてな」
そう言うと、リラの返事を待たず、その女は足早に姿を消した。
「あっ」
その女の姿が見えなくなって、リラはちゃんとお礼も言っていない事に気が付いた。何だか、親切で格好良い人がいるんだなとリラは思った。そして、それがとても嬉しい事のように思えた。
男がひっくり返る。リラは何が起こったのか一瞬分からなかったが、男が倒れたので、心配して声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「なんだお前は」
男はリラを無視して、立ち上がると、声の方に向き直った。そこにいたのは一人の女だった。
「せこい事、やっているんじゃないよ」
女の声に男が反応する。
「ふざけんなバカ野郎」
そう言いながら、女に殴りかかる。女は男の攻撃を軽くかわすと、足を払って転ばせる。
「なんだてめぇ、クソ」
もう一度、起き上がると女に体当たりを喰らわせようとした。それを女は軽くかわして、再び足を払う。男は叶わないと悟ると、途端に逃げ出した。
「大丈夫か。お嬢ちゃん」
男が去っていたのを確認して女がリラに声を掛けた。
「あっはい。大丈夫です」
そう言いながら、女が差し出して手を握ってリラは立ち上がった。
「…あの、私。弁償しなくていいんでしょうか?」
リラは男が逃げていった方向を見て言った。
「弁償?」
「はい、私。ぶつかって、大事なお薬をダメにしちゃったんです」
暗い顔をしてリラが言う。
「ははは、面白いお嬢さんだね」
女が愉快そうに笑った。
「あれはただの水の入ったビンだよ。あんたみたいな田舎者からお金をせしめるためにわざとぶつかって弁償しろって騒ぐんだよ」
「そうなんですか」
「そうだよ。全く同じ手口でやられた奴を知っているからね。この辺じゃ良くあるんだ」
少し不愉快そうに女は言った。
「それなら良かった」
ホッとするリラ。
「良かった?」
「はい。あれがお薬だったら、私のせいで病気の人が助からなくなるんじゃないかと思って…。でも、そういう病気の人もいないという事ですよね」
「まあ、そうだろうな」
「じゃあ、良かった。安心しました」
嬉しそうなリラの姿を見て、女は困惑する。
「いやいやいや、あんた、被害者だよ?騙されかかったんだよ?」
「えっあそうか。でも、騙されてはないですから」
リラは何事も無かったように言った。
「いや、そうかもしれないけど」
女は力説しようとしてため息をついた。
「まあ、いいや。何だか馬鹿らしくなってきたよ。何にしろ、何もなくて良かったよ。これからは、気をつけてな」
そう言うと、リラの返事を待たず、その女は足早に姿を消した。
「あっ」
その女の姿が見えなくなって、リラはちゃんとお礼も言っていない事に気が付いた。何だか、親切で格好良い人がいるんだなとリラは思った。そして、それがとても嬉しい事のように思えた。
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