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3章.槍使い
9.
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警備は思っていた以上に暇だった。倉庫と言ってもそれほど大きな物では無くて、見回りはすぐに終わってしまうのに加えて、守っている物が大した物では無いと言われてしまった事で緊張感もすぐに失われてしまった。それでも、初日はある程度は緊張感を保たないといけないと考えていた、二日目になると、そういう考えすら怪しくなっていた。
サントはすっかり暇で、辛うじて寝てはいなかったが、半分、眠っているような感じだった。リラは倉庫の中の物をいろいろと見ていた。商品だから、あまり勝手にいじらない方が良いと、サントは思っていたが、これだけ暇だと他にする事もないだろうとも思っていた。ラテアはガラクタと言われていた武具がやはり気になるようで、時折、眺めていた。
三人とも仕事だという事で、必死に緊張感を保とうとしていたが、それにも限界があるなと思っていた。三日目、四日目となるとますます緊張感を保つのが厳しくなった。仕事として、こんなに暇で良いのかと考えるようになっていた。そして、五日目を迎えていた。
具体的な日付までは明らかにされていなかったが、そろそろ、取引が行われるという話を交代の時に聞いて、三人はホッとした気分になった。取引が終われば、役目が終わる。先が見えてきたことで少しだけやる気が戻ってきた。もうひと頑張りしようという気分になってきた。そんな五日目の深夜、突然、慌ただしい声が聞こえてきた。
「侵入者だ」
その声ははっきりと聞こえた。急に緊張感が漂ってきた。
「どうする?」
サントはラテアにそう尋ねた。
「どうするも何も、持ち場を離れるわけにはいかないだろ」
当たり前の事のようにラテアは答える。
「そうだけど、ここで何もしないで、じっとしていて良いのか?」
サントが少しワクワクしているのが気になったラテアだったが、状況が分からないというのも困るなとも思っていた。騒がしさは伝わってきたが、どこに侵入者がいるのかはさっぱりわからなかった。
「少し様子を探ってきた方が良いかもしれない」
恐らくサントが期待している事をラテアは言った。
「そうだな。俺が見てくる。リラとラテアはここをしっかりと守っていてくれ」
サントはすぐにそう言うと、声がした方向に向かっていった。
「大丈夫かな」
少し心配そうにリラが言った。
「分からない。あっちはサントに任せて、とりあえず、自分たちの役目を果たそう」
自分に言い聞かせるようにラテアは言った。とにかく落ち着いて対処する事が重要だと思う。
サントはすっかり暇で、辛うじて寝てはいなかったが、半分、眠っているような感じだった。リラは倉庫の中の物をいろいろと見ていた。商品だから、あまり勝手にいじらない方が良いと、サントは思っていたが、これだけ暇だと他にする事もないだろうとも思っていた。ラテアはガラクタと言われていた武具がやはり気になるようで、時折、眺めていた。
三人とも仕事だという事で、必死に緊張感を保とうとしていたが、それにも限界があるなと思っていた。三日目、四日目となるとますます緊張感を保つのが厳しくなった。仕事として、こんなに暇で良いのかと考えるようになっていた。そして、五日目を迎えていた。
具体的な日付までは明らかにされていなかったが、そろそろ、取引が行われるという話を交代の時に聞いて、三人はホッとした気分になった。取引が終われば、役目が終わる。先が見えてきたことで少しだけやる気が戻ってきた。もうひと頑張りしようという気分になってきた。そんな五日目の深夜、突然、慌ただしい声が聞こえてきた。
「侵入者だ」
その声ははっきりと聞こえた。急に緊張感が漂ってきた。
「どうする?」
サントはラテアにそう尋ねた。
「どうするも何も、持ち場を離れるわけにはいかないだろ」
当たり前の事のようにラテアは答える。
「そうだけど、ここで何もしないで、じっとしていて良いのか?」
サントが少しワクワクしているのが気になったラテアだったが、状況が分からないというのも困るなとも思っていた。騒がしさは伝わってきたが、どこに侵入者がいるのかはさっぱりわからなかった。
「少し様子を探ってきた方が良いかもしれない」
恐らくサントが期待している事をラテアは言った。
「そうだな。俺が見てくる。リラとラテアはここをしっかりと守っていてくれ」
サントはすぐにそう言うと、声がした方向に向かっていった。
「大丈夫かな」
少し心配そうにリラが言った。
「分からない。あっちはサントに任せて、とりあえず、自分たちの役目を果たそう」
自分に言い聞かせるようにラテアは言った。とにかく落ち着いて対処する事が重要だと思う。
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