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3章.槍使い
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屋敷の中は思っていたよりも混乱していた。あちこちから、声が聞こえてきた。侵入者だという声は聞こえてくるのだが、状況はさっぱりわからなかった。サントはどうするべきか考えたが、すぐに難しく考える事は止めた。侵入者の目的が竜の魔槍だったら、そこに向かうはずだ。だったら、そこに向かえば良いと素直に考えたのだ。
まだ、少し騒がしい気配はしたが、それが広がっている感じでは無かった。やはり、こちらには来ないのかとちょっと安心したようながっかりしたような気分にラテアはなっていた。とりあえず、自分の役割を果たせば良いと思う事にした。
その時、足音が聞こえてきた。サントが戻って来たのかと思うが、そういう感じの足音では無かった。他の警備の者でもないと直感する。ラテアはリラに視線で合図を送り、その足音が近づくのに備えた。緊張感が高まる中、姿を現したのは一人の女だった。明らかに警備の者とは違う格好で、侵入者だとすぐに分かった。ここに逃げて来たのか、そう思い、構えたラテアに対して、女もすぐにラテアに気が付き構えた。
「あれ、あなたは」
そう言ったのは、リラだった。その声に女はすぐに気が付いた。
「なんだ珍しい所で会うな」
その女は何日か前にリラの事を助けた女だった。
「そうかそうか」
馴れ馴れしくリラに話しかける女。どことなくリラも嬉しそうな表情を浮かべていた。ラテアはこの状況をどうするべきか考えていた。でも、二人のやり取りを見ていると、真剣に構えているのも馬鹿らしく感じた。
「こっちに逃げたぞ」
その時、声が聞こえてきた。やっぱり、侵入者だったんだなと再び構えるラテア。それに対して、リラはどうしたら良いのか戸惑っていた。とりあえず、女が追われているというのは理解したらしい。結果、リラが取った行動は、ラテアの想像していたのとは違っていた。
「ここに隠れてください」
そう言って、倉庫の中にかくまったのだった。呆気に取られるラテア。そのラテアに対して、人差し指を口の前に立てて黙っててと合図を送るリラ。ラテアがどうしようかと考えている時に、他の警備の者がやってきた。
「誰かこっちに来なかったか」
「…」
とっさに声が出ないラテア。それに対して、リラは
「何かあったんですか?」
と、何事も無かったように尋ねた。
「侵入者だ。こっちの方に逃げて来たんだと思ったんだけど」
リラの落ち着いた姿に戸惑う。
「こっちは特別なもの無いですから、来ないんじゃないんですか?」
なんて事をサラッと言う。
「そうか、そうだな。見間違いかもしれない」
あっさりと納得してしまった。
「そこら辺、うろついているかもしれないから、注意してくれ」
と、言い残してその場から去っていった。その姿を見て、冷や汗を流すラテア。
「そんなんじゃ。怪しまれますよ」
と軽く言うリラにちょっと怖さを感じたラテアだった。ラテアは何か言おうとしたが、女が現れたので、言う事が出来なかった。
まだ、少し騒がしい気配はしたが、それが広がっている感じでは無かった。やはり、こちらには来ないのかとちょっと安心したようながっかりしたような気分にラテアはなっていた。とりあえず、自分の役割を果たせば良いと思う事にした。
その時、足音が聞こえてきた。サントが戻って来たのかと思うが、そういう感じの足音では無かった。他の警備の者でもないと直感する。ラテアはリラに視線で合図を送り、その足音が近づくのに備えた。緊張感が高まる中、姿を現したのは一人の女だった。明らかに警備の者とは違う格好で、侵入者だとすぐに分かった。ここに逃げて来たのか、そう思い、構えたラテアに対して、女もすぐにラテアに気が付き構えた。
「あれ、あなたは」
そう言ったのは、リラだった。その声に女はすぐに気が付いた。
「なんだ珍しい所で会うな」
その女は何日か前にリラの事を助けた女だった。
「そうかそうか」
馴れ馴れしくリラに話しかける女。どことなくリラも嬉しそうな表情を浮かべていた。ラテアはこの状況をどうするべきか考えていた。でも、二人のやり取りを見ていると、真剣に構えているのも馬鹿らしく感じた。
「こっちに逃げたぞ」
その時、声が聞こえてきた。やっぱり、侵入者だったんだなと再び構えるラテア。それに対して、リラはどうしたら良いのか戸惑っていた。とりあえず、女が追われているというのは理解したらしい。結果、リラが取った行動は、ラテアの想像していたのとは違っていた。
「ここに隠れてください」
そう言って、倉庫の中にかくまったのだった。呆気に取られるラテア。そのラテアに対して、人差し指を口の前に立てて黙っててと合図を送るリラ。ラテアがどうしようかと考えている時に、他の警備の者がやってきた。
「誰かこっちに来なかったか」
「…」
とっさに声が出ないラテア。それに対して、リラは
「何かあったんですか?」
と、何事も無かったように尋ねた。
「侵入者だ。こっちの方に逃げて来たんだと思ったんだけど」
リラの落ち着いた姿に戸惑う。
「こっちは特別なもの無いですから、来ないんじゃないんですか?」
なんて事をサラッと言う。
「そうか、そうだな。見間違いかもしれない」
あっさりと納得してしまった。
「そこら辺、うろついているかもしれないから、注意してくれ」
と、言い残してその場から去っていった。その姿を見て、冷や汗を流すラテア。
「そんなんじゃ。怪しまれますよ」
と軽く言うリラにちょっと怖さを感じたラテアだった。ラテアは何か言おうとしたが、女が現れたので、言う事が出来なかった。
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