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3章.槍使い
11.
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「助かったよ。お嬢ちゃん」
女はゆっくりと様子を伺いながら倉庫から出てきた。
「いえ、この間のお礼です。ちゃんとお礼も言えて無かったし」
「良いのかい。警備をしているんだろ?侵入者を見逃しちゃって」
そうだとラテアは声に出さずに思う。
「うーん。分からないですけど、そんなに悪い人じゃなさそうだし。それに、ここには盗むようなもの無いし、まだ盗んでいないみたいですし、だったら良いかなって」
リラが何を言っているのかラテアは良く分からなかったが、女とリラは知り合いらしい。お礼と言っているから、何か助けてもらったという事なんだろうか。
「ははは、本当、面白いお嬢さんだね。でも、間違っているよ」
「えっ」
「私が探していたのは、これ」
そう言って取り出したのは、倉庫の中のガラクタに含まれていた、真黒な槍だった。ラテアはあっと思う。ガラクタと言われた中にあって、あの槍だけは少し違うと感じていたからだった。
「価値が分からない物にはいらない物に見えるのかね」
そう言いながら、くるくると回している。それは手に馴染んでいて、愛用の槍と言う感じだった。
「それは?」
「大事な私の槍さ。いや、恥ずかしい話、借金の方に取られてしまってね。どうにか取り戻そうとしたんだけど、ダメで、結局、こういうことになったという訳だよ」
何だか自分勝手な言い訳だなと思った。でも、その槍だったらガラクタと思われているので、無くなっても分からないのではと思う。さっさと盗ませて、どっかに行かせた方がマシなのではとも思った。リラの事を考えるとその方が良さそうだとも思った。ところが、
「と、言う事は、それを盗むってことですか?」
「ん?まあ、そうだね。でも、こっちも騙されて借金背負わされて、取られたものだからおあいこだろ?」
「うーん」
ちょっと考えてリラが言う。
「事情はどうあれ、物を盗むことは悪い事です。返してください」
この展開にラテアは驚く。言っている事は間違っていないが、さっきまでと言い分が違い過ぎるのではと思った。
「なんか良く分からない子だね。いいじゃんか。別に対して価値のないものだと思っているんだろう。じゃなきゃ、こんなところ置いておかないよ」
「それは関係ありません。私たちはここの警備を任されている以上、物を盗まれるわけにはいかないんです」
どうやらリラは本気のようである。
「そうかい。そっちがその気なら、こっちも本気で相手しようか」
そう女は言うと、槍を構えた。
女はゆっくりと様子を伺いながら倉庫から出てきた。
「いえ、この間のお礼です。ちゃんとお礼も言えて無かったし」
「良いのかい。警備をしているんだろ?侵入者を見逃しちゃって」
そうだとラテアは声に出さずに思う。
「うーん。分からないですけど、そんなに悪い人じゃなさそうだし。それに、ここには盗むようなもの無いし、まだ盗んでいないみたいですし、だったら良いかなって」
リラが何を言っているのかラテアは良く分からなかったが、女とリラは知り合いらしい。お礼と言っているから、何か助けてもらったという事なんだろうか。
「ははは、本当、面白いお嬢さんだね。でも、間違っているよ」
「えっ」
「私が探していたのは、これ」
そう言って取り出したのは、倉庫の中のガラクタに含まれていた、真黒な槍だった。ラテアはあっと思う。ガラクタと言われた中にあって、あの槍だけは少し違うと感じていたからだった。
「価値が分からない物にはいらない物に見えるのかね」
そう言いながら、くるくると回している。それは手に馴染んでいて、愛用の槍と言う感じだった。
「それは?」
「大事な私の槍さ。いや、恥ずかしい話、借金の方に取られてしまってね。どうにか取り戻そうとしたんだけど、ダメで、結局、こういうことになったという訳だよ」
何だか自分勝手な言い訳だなと思った。でも、その槍だったらガラクタと思われているので、無くなっても分からないのではと思う。さっさと盗ませて、どっかに行かせた方がマシなのではとも思った。リラの事を考えるとその方が良さそうだとも思った。ところが、
「と、言う事は、それを盗むってことですか?」
「ん?まあ、そうだね。でも、こっちも騙されて借金背負わされて、取られたものだからおあいこだろ?」
「うーん」
ちょっと考えてリラが言う。
「事情はどうあれ、物を盗むことは悪い事です。返してください」
この展開にラテアは驚く。言っている事は間違っていないが、さっきまでと言い分が違い過ぎるのではと思った。
「なんか良く分からない子だね。いいじゃんか。別に対して価値のないものだと思っているんだろう。じゃなきゃ、こんなところ置いておかないよ」
「それは関係ありません。私たちはここの警備を任されている以上、物を盗まれるわけにはいかないんです」
どうやらリラは本気のようである。
「そうかい。そっちがその気なら、こっちも本気で相手しようか」
そう女は言うと、槍を構えた。
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