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3章.槍使い
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「さすがギルドから派遣されてきた者たちは違うな」
ガルトは愉快そうに笑っていた。最初に会った時とは大違いだなとサントは思う。サント、リラ、ラテア、そして、その女、ファムがそこにいた。サントたちが捕まえた盗賊は黒狐と言う名前で知られていた盗賊だった。近頃、ノリントバーグを騒がしていた盗賊で、その盗賊を捕まえた事でガルトはご機嫌だった。
「取引も無事に終わったし、お前らの事を気に入ったよ。ギルドの報酬以外にも褒美をやろう。何が欲しいか言ってみろ」
ここで竜の魔槍と言ったらくれるんだろうかと、ラテアは意地悪い事を考えたが言うとややこしくなりそうなので口にはしなかった。
「あの」
リラが控えめに言う。
「おう、何だ」
「この槍を頂けないでしょうか」
そう言って、ファムの持っていた槍を指さす。
「なんだ、その槍は」
「倉庫にあった物で…」
サフィスがガルトに耳打ちする。借金の方に取り上げたものだと説明しているみたいだった。
「そんなもので良いのか。それだったら、構わんよ。そんな小汚い槍。興味ないからな」
その言い方にムッとするファム。そもそもそれを無理矢理、奪い取ったのは誰だとファムは思った。リラはそれをなだめながら言う。
「ありがとうございます」
「それだけで良いのか?欲が無いな」
「あっ、それだったら、ひとつお願いが」
ラテアが思い出したように言う。
「竜にまつわるお話を知らないでしょうか?」
「竜にまつわる話?」
「はい。私たちは竜にまつわる話を求めて各地を冒険していまして、この辺りの事情に詳しいガルト様であれば、何かご存じなのではと思いました」
やたらと丁寧な聞き方をラテアはした。
「そうだな」
ガルトは少し考える。そして、サフィスと二言三言、言葉を交わす。
「ここらあたりには、竜にまつわる話と言うのも限られている。竜の遺跡がいくつかあるくらいだ。竜に関してもっと詳しい事を聞きたければ、ハレンパルスに行くと良い」
「ハレンパルス?」
「ああ、竜の研究をしている者たちが多くいる町だ。そこで研究者たちに、話を聞けば、いろいろと分かるかもしれない。竜の魔槍もそこから来た話だから、お前たちのおかげで盗まれずに無事に取引が行われたと知れば、快く話を聞かせてくれるだろう。丁度、うちの船がハレンパルスまで向かうから、行くのであれば、乗っていくと良い」
「ありがとうございます。それは助かります」
それは本心から出た言葉だった。
「お前たちにはいくら感謝してもしきれん。困った事があれば、いくらでも相談に乗ろう。また尋ねるが良い」
そう言うと、ガルトは再び豪快に笑った。
ガルトは愉快そうに笑っていた。最初に会った時とは大違いだなとサントは思う。サント、リラ、ラテア、そして、その女、ファムがそこにいた。サントたちが捕まえた盗賊は黒狐と言う名前で知られていた盗賊だった。近頃、ノリントバーグを騒がしていた盗賊で、その盗賊を捕まえた事でガルトはご機嫌だった。
「取引も無事に終わったし、お前らの事を気に入ったよ。ギルドの報酬以外にも褒美をやろう。何が欲しいか言ってみろ」
ここで竜の魔槍と言ったらくれるんだろうかと、ラテアは意地悪い事を考えたが言うとややこしくなりそうなので口にはしなかった。
「あの」
リラが控えめに言う。
「おう、何だ」
「この槍を頂けないでしょうか」
そう言って、ファムの持っていた槍を指さす。
「なんだ、その槍は」
「倉庫にあった物で…」
サフィスがガルトに耳打ちする。借金の方に取り上げたものだと説明しているみたいだった。
「そんなもので良いのか。それだったら、構わんよ。そんな小汚い槍。興味ないからな」
その言い方にムッとするファム。そもそもそれを無理矢理、奪い取ったのは誰だとファムは思った。リラはそれをなだめながら言う。
「ありがとうございます」
「それだけで良いのか?欲が無いな」
「あっ、それだったら、ひとつお願いが」
ラテアが思い出したように言う。
「竜にまつわるお話を知らないでしょうか?」
「竜にまつわる話?」
「はい。私たちは竜にまつわる話を求めて各地を冒険していまして、この辺りの事情に詳しいガルト様であれば、何かご存じなのではと思いました」
やたらと丁寧な聞き方をラテアはした。
「そうだな」
ガルトは少し考える。そして、サフィスと二言三言、言葉を交わす。
「ここらあたりには、竜にまつわる話と言うのも限られている。竜の遺跡がいくつかあるくらいだ。竜に関してもっと詳しい事を聞きたければ、ハレンパルスに行くと良い」
「ハレンパルス?」
「ああ、竜の研究をしている者たちが多くいる町だ。そこで研究者たちに、話を聞けば、いろいろと分かるかもしれない。竜の魔槍もそこから来た話だから、お前たちのおかげで盗まれずに無事に取引が行われたと知れば、快く話を聞かせてくれるだろう。丁度、うちの船がハレンパルスまで向かうから、行くのであれば、乗っていくと良い」
「ありがとうございます。それは助かります」
それは本心から出た言葉だった。
「お前たちにはいくら感謝してもしきれん。困った事があれば、いくらでも相談に乗ろう。また尋ねるが良い」
そう言うと、ガルトは再び豪快に笑った。
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