12星座のたからもの

花咲 葉穏

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第1話 思い出のタイムカプセル

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 職場のデスクでお日様の温もりを感じながら、私は大好きな大学の頃のサークルのことを思い返していた。そろそろ、私たち十三人が集まる日。私はサークル仲間の大半と、就職の関係で離れてしまった。強いて言うのなら、偶然就職先が同じだったサークルの副部長とは毎日顔を合わせている。早く皆に会いたいな、そんな気持ちを抑えて仕事に集中するように、グラスに注がれたアイスティーを一口飲む。


「このみ、この前作ってもらった資料、次の会議で使ってもいいか?」


 アイスティーを飲んでいれば、唐突に後ろから声をかけられ肩を震わす。バクバクとうるさくなる心臓を押さえつつ、アイスティーを吹き出していないか心配になると返事はせずに一旦自分の周りを確認した。


「あー、悪い悪い。このみはビビりだったこと、すっかり忘れてた。アイスティー零してないか心配してんだろ?零してないから安心しろー。」


「いい加減ビビりなの覚えてくれない?大学の頃からほぼ毎日顔合わせてるのに…。毎回後ろから声掛けてきて、本当に寿命が縮みまくってるんだからね!あと、私の作った資料なら会議で勝手に使っていいから、許可毎回取りに来ないでくれる?」


「は?何でだよ。別にいいだろ、一瞬こっちにお邪魔するだけなんだし。」


「はぁ…。花楓かえでといると、なんか目立つから嫌なの。そのぐらい察してくれない?」


「あー…、悪い悪い。大学の時は普通に話せたのに、職場となると色々気にしないといけないなんて面倒だよな。じゃあ、これからは資料勝手に使わせて貰うから文句言うなよー。」


「はいはい…。」


 中性的な顔立ちでいながらも、どこか頼りになる男という雰囲気のある彼。乙女花楓おとめかえで、大学のサークルが同じでサークル内では部長と副部長という関係だった。サークルの為に、二人で行動することが多くその癖が彼は抜けない。私と彼は偶然就職先が同じだが、部署違いだ。私の部署と彼の部署はあまり関わりが無かったが、彼からの願いで彼の会議資料の作成は特別に私が引き受けている。私の部署は女性が多いことから、彼が部署に来るとうるさくなるのだ。猫のような整った顔立ちに、淡い髪色は暑い日になると一つに束ねられていて可愛いと社員にからかわれている。彼ほどの広い心の持ち主は、適当に流して終わりだが昔はからかわれる事が嫌だったと大学の頃聞いていた。そのため、こちらの部署にあまり寄らないようにメッセージで伝えたことがある。もちろん、それ以外にも女性特有の恋愛話に発展されてしまっていることが面倒という理由もある。すると、パソコンに一通のメールが届いた。


『お疲れ様、花楓です。さっきは悪かったな。資料の大体後半部分だけ使わせてもらうから、念の為報告しておく。』


 このためだけにメールまで送ってくるところが、彼のいい所というか信頼できる仲間という感じがする。


『お疲れ様です、羊川このみひつじかわこのみです。資料の件は承知致しました。お好きにどうぞ。』


 メールは形に残るため、念には念をという意味も込めて堅苦しい返信をした。そして、その後に自分のスマホを取り出した。会社であれど、しっかりと仕事をしていればスマホは必要最低限使っていいと言われている。彼へメッセージを送ろうと思えば、サークルのグループに通知が入っていた。どうやら、画像のようだ。サークルのグループのチャットを開くと丁寧にデザインされた画像に目を惹かれる。【十三人の思い出を掘り返そう!無人島の美しい星空とキャンプ場~大学サークル『星空愛好家』にて五年越しのタイムカプセル探しを開催!~】と記載されている。

この手の物が得意な人は、メンバーの一人である山羊谷美織やぎたにみおりだろう。
しかし、企画をしたのは別メンバーの獅子渡要ししどかなめ。二人で頑張って作ったらしい。主催と副主催に彼女達の名前が記載されている。可愛らしいデザインにほっこりとした気持ちになるが、参加可否のアンケートを取っているらしいので、投票をしようとした。すると、選択肢が、【いける!】または【行ける!】しかなかった。やはり彼女達は愉快だなと笑みを零しながら、平仮名の方に投票した。そして、花楓の個人チャットへメッセージを入れる。


『グループチャットみた?可愛くない?プレゼント交換会やるって書いてるし、折角なら二人でメンバー全員へのお土産でも買ってく?』


 彼は業務中はあまりスマホは見ない。真面目に業務に取り組んでいるはずだ。返信はすぐ来ないと思っていたが、すぐに既読がついて驚いた。先程の出来事があったからか、緊急だと思ったのかもしれないと考えれば僅かに申し訳なくなる。


『見た。選択肢バグってるやつだよな。いつ買いに行く?土曜日空いてる。』


『おけ、土曜日お昼ぐらいでどう?ランチ食べてから探そ。』


 彼からは、可愛い猫スタンプで【了解にゃ!】と返された。そして、再びグループを見てデザインを眺めた。料金完全無料の二泊、貸切コテージで疲れを癒そう。ご飯は各自持ってきてください!これは、主催と副主催が困った末の懇願さがうかがえる。コテージ貸切はもちろんだが、無人島に行くための費用は彼女達で負担するつもりなのだろう。十三人分の費用はとてもじゃないが、お金がかかる。その上食費もとなれば、流石に厳しいと考えお願いしたんだろうなと予想した。プレゼント交換の費用も考えたら、とてもじゃないが怖くて二人の負担した金額を聞けない。そんな彼女達のためにも、食料は多めに私と花楓で出そうかと考えながら、業務に再び集中した。
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