花の存在価値

花咲 葉穏

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【鬼灯】

第11話 アルストロメリア

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 私は、ハンカチで口を覆いながらナスタチウムのメンバーを外へ運ぶ。私たちを運ぶためのヘリコプターが、屋上に着いているらしい。まさか、シロがここまでするとは思っていなかった。しかし、シロのあの渋々といった表情は嘘には見えなかった。屋上に全員運び終え、そのままヘリコプターに乗せていく。そして、私とシロは隣同士で座った。


「メイ、そんな暗い顔してないで普通に聞いてくれていいんだよ?僕がどうしてあそこまでしたのか知りたいんだよね?」


「まあ、そうね。私の予想では、アルストロメリア上層からの命令に従っただけのように思えたわ。」


「なるほどね。予想は半分当たり、半分はずれ。命令はそんなに上の人からのものでは無いよ。僕の上長にあたる人間からの指示。僕なんかより、ずっと冷酷で人間とは思えない人。上の人の命令って、従う以外に選択肢が無いからこうするしか無かった。メイの大切な部下達まで、こんな目に合わせてしまって本当にごめんなさい。」


 シロは、普段の明るい様子とは裏腹にしおらしい様子でこちらに向かって頭を下げてきた。大切な部下、そう言われるとよく分からない感情になる。
 オミとシオは、ナスタチウムが出来てから遅れて配属された二人。その二人の指導役として、私が面倒をみていた。二人と過ごす時間は、どことなく懐かしさを感じられたのだ。希望も楽しさも、生きる意味すら感じられなかった頃に、二人の存在はとても大きなものだった。当時から、シオは気に食わないと思っていたが。シロから言われると、確かに二人は大切な部下という言葉にあてはまるのかもしれないなと考える。私は、アルストロメリアの指示に従い、そんな大切な部下を裏切るような行動をしてしまっているのだろうか。そう思うと、自分はどうしようもない人間なのだなと自嘲した。


「シロは謝る必要はないわ。部下に謝るべきな人間は、私よ。」


「大丈夫!そこは、僕に任せてよ。メイの居場所は僕が守ってあげる。僕達、似た者同士だしさ!分かち合えない部署同士かもしれないけど助け合っていこうよ。」


 シロの笑顔は、薄暗い感情をかき消してしまうようなものだ。彼女は自信に満ち溢れていて、彼女から言われた言葉は信頼できると思ってしまう。彼女の立場も、難しいだろうに私のことを気にかけてくれている。シロから力強く肩を組まれると、自然と笑顔が零れた。


「それにしても、まさかミツさんを殺そうとするなんてね。流石の僕でもびっくりしちゃったよ。」


「シロも知っていると思うけれど、ナスタチウムのメンバーはみんなミツを恨んでいるわ。日頃の鬱憤が、スズランとの遭遇で悪い方向に向いてしまったんだと思う。みんな、ある種興奮状態だったわ。一日で、膨大な情報を教えられて、それと重なって色々な出来事が起きた。例えば、私が殺されかける、とかね。」


 そこで、シロが険しい顔をした。状況把握の能力に長けている彼女であっても、まさか私が殺されかける可能性は感じられなかっただろう。


「そのことなんだけど、もしかするとね……。僕の予想になってしまうから、あまり本気にしないで欲しいんだけど。多分、メイを殺そうとした人物はミツじゃないよ。」


 シロから告げられた言葉には、驚きを示さなかった。私も薄々分かっている。ミツは確かに、この世の終わりのような人間だ。しかし、人を殺すというより人の嫌がる顔をずっと見ていたい人間なのだと思う。そんな生粋のクズという部類の人間が、わざわざ人を殺す理由がわからない。


「僕の予想では、ミツさんとシオ、あとオミ以外は犯人候補かな」


「そうね、あとハルも無理だと思うわ。直前にオペナビでやり取りしているし」


「……なるほどね。あと、申し訳ないけど僕の上司も候補にいれさせてもらおうかな」


「上司……?」


「うん。あの人は多分、ミツさんよりずっと酷い人間だよ」


 そう告げるシロは、悔しそうに唇を噛み締めている。そんな人の元で指示に従うシロは、どんな気持ちなのだろう。ナスタチウムもナスタチウムで、抱えてるものが大きい。しかし、アルストロメリアの事情を知らない身からすると、もしかするとアルストロメリアの方も酷い状態のかもしれない。アルストロメリアの人間で、まともに話せる相手はシロしかいない。


「ねえ、メイ。アルストロメリアは、ナスタチウムを都合よく使っていると思う?」


 唐突に問いかけられ、少し考える。アルストロメリアの事情は分からない。ナスタチウムは元々救いようがない人間の集まり。しかし、そこに少しでも希望を見せてくれた。


「私は、アルストロメリアのやっている事は妥当だと思うわ。ナスタチウムのみんなは、利用されていると言っているけれど……。でも、それって普通の事じゃないかしら。私たちは決して自由になれる身ではないわ。それを自覚しているのなら、利用されているなんて発想にはならないと思う。みんなは、アルストロメリアへ甘えすぎよ。私たちはアルストロメリアに守られ、限られた自由の中で生涯を過ごす。アルストロメリアの実情は分からないけれど、都合よく使われて当然なのが私たちってことよ」


 問いかけに答えたが、シロからの反応はない。沈黙がうまれると、それ以上こちらからは何も言わずに待っていた。



「ねえ、メイ……。僕は、どうすればいいんだろう」


 数分待ったのか、数十分待ったかは分からない。シロから、助けを求められるようにそう告げられる。シロの方を見つめると、シロは今にも涙を零しそうな瞳でこちらを見つめていた。その手には、拳銃。








そして、拳銃を、私の額に押し当てた。
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