花の存在価値

花咲 葉穏

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【鬼灯】

第13話 作戦開始

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 私たちはアルストロメリアへ到着した。ヘリコプターの中から見たアルストロメリアは、外と遮断されるように西洋の頑丈な城塞のようになっている。しかし、中はこの世の花を全て詰め込んだように、色鮮やかな光景が広がっていた。どうやら、色別に分けられているのか、上空から見た際にごちゃごちゃとした印象にならないようになっている。ここで、花の調査を行っているのだろう。スズランの研究には、これだけ多くの花を調べる必要があると予想した。
 スズランの発生から、花の都であるヘリクリサムは活気を失った。都市の至る所には様々な花が咲いており、人々も日頃から花を愛でる週間があったものの、それらの日常は全て失われた。唯一、アルストロメリアのみ花を育てている状況だ。アルストロメリアへ初めて訪れた時は、この素晴らしい花景色も目に入らない程に心の余裕がなかった。
 そして、ヘリコプターはヘリポートへ着陸した。私とシロはヘリコプターから降り、真っ先にヘリコプターの操縦士に銃を向ける。


「ごめんねえ、空気のように存在を消していたみたいだけれど……。もしかして、僕たちの話バラすつもりとか?」


「私はここで口止めした方がいいと思うわ。あぁ、もちろんこの場で口をきけなくしてあげてもいいのよ?死ぬか生きたいか選んでちょうだい」


 出口を塞ぐように、左右から銃を向けられた操縦士は顔を真っ青にして首を縦に振った。


「あれ?怖くて声もでないのかな?死にたいのなら、何も言わなくても構わないよ?ちゃんと自分の口で、どうするのか言ってくれるかな?」


「何もいいません!」


「おりこうさんね。もしもバレた場合は、真っ先に貴方を疑い死ぬことになるから気をつけなさいね」


「はっ、はい……」


 操縦士は、体を震わせながら頷いた。今は殺すことはしない。なぜなら、この場で殺すメリットが何も無いからだ。操縦士が出動した際に死ぬことはない。ヘリコプターに乗っている限り、墜落を除けば比較的安全だからだ。もしも、ヘリコプターが墜落したとすれば私やシロが無傷な事も違和感が残る。この場で殺した場合も同じだ。すぐに犯人がバレてしまう。しかし、とても残念だが操縦士を生かしておく訳にはいかない。拷問を受け、うっかり口を開いてしまう可能性だってある。私とシロは、お互いアイコンタクトを取る。今は、そのときでは無いと。


「よし、それじゃあメイも寝たふりをしておいてね。僕が運んであげるから、安心して身を任せてていいよ」


 そう呟くシロは、ひょいっと私を俵のように持ち上げた。相変わらず、スズランを討伐する者は力持ちだなと思い身を任せた。


***


 シロと共に何処かの部屋に向かう。アルストロメリアの内部は、人が誰もいないのではないかと言うほど静かだ。シロの足音が廊下に響く。その後に続く足音は、ナスタチウムのメンバーを抱えて運ぶ操縦士のものだ。少しすると、シロが部屋に到着した。部屋の中に入ると、そっと冷たい床に降ろされる。降ろされる瞬間、耳元で囁かれる。


「操縦士のことは任せて」


 シロはにっこりとした笑みを浮かべた。きっと、帰還報告をした後に黙っていてもらうために、なにかをするのだろう。そこは彼女に任せることにした。そして、操縦士も部屋に到着すると、両腕に抱えていたシオとオミを床に降ろす。二人ともよく眠っているようで微動だにしない。寝顔だけ見ると、まだまだ彼らは若いのだなと感じる。その後、シロと操縦士は全てのメンバーを部屋に連れてきた。みんなよく眠っているようで、目覚める気配がない。私もみんなが起きるまで、じっとこの場で待つことにした。薄目で部屋の中を見回す。壁紙も床も白く、物が何も無い。強いて言うなら、監視カメラが天井の隅に設置されているようだ。迂闊に動けないことを確認するとそっと瞳を閉じた。


***


「うぅ……」


 時間がどれほど経ったかわからないが、一つの呻き声が聞こえた。声だけで判断するのならば、ユリだろうか。衣服の擦れる音が聞こえることから、体を起こしたことが分かる。


「ちょっと!みんなおきて!」


 ユリはすぐに周りを確認して異変に気付いた。誰かの体を揺する音。


「ん……?ここは……?」


 真っ先に起こされた人は、どうやらシオのようだ。次第に他のメンバーも起き始めたようで、声が増えていく。私は最後まで起き上がらず、じっとしていた。すると、肩を軽く揺すられる。



「メイさん、起きてください……。どうやら、オミ達は捕まっているようです」



 オミの珍しくか細い声に、ゆっくりと瞼を開いていく。オミは普段から凛としているが、不安が勝るのかもしれない。ゆっくりとゆっくりと体を起き上がらせていく。気だるそうに辺りを見回した。天井の四隅に監視カメラがある。それ以外は本当に何も無いようだった。そして、その時閉じられた扉が開く。武器を構えようとしたが、予め全員分の武器はシロに預けている。丸腰のメンバーは、僅かに怯むが扉を開けた人物を睨んでいた。


「こわいこわい……、そう怒らないでよ。僕もみんなには悪いことをしたなって思ってるんだから……」


 シロは、悲しげに表情を歪めた。シロの言葉に、ユリは食い気味に反論する。


「あんたね、こんな手荒な真似されて誰がその言葉を信じると思うわけ?頭悪すぎ、もっとマシな言葉言えなかったの?」


「たしかに、俺たちは眠らされてここに連れられてきたみたいですが……。強制的にここに連れてくる理由が分かりません」


「だって、話したところで……。どうせ信じてもらえないから、こうするしかなかったの……」


「信じてもらえないなんて当たり前です。それなのに、信じさせようということもせずオミたちを連れ去った。そんな人を信じろという方が無理です」


 ユリに続いて、シオやオミも信じられないと告げる。まさに予想通り。私も彼らに同調するように、深く頷いた。すると、シロはその瞳から一筋の涙を零した。



「おねがい、信じて……。僕も上の人に脅されて、君たちを連れてこないと僕だけじゃなくて、家族の命も奪うって言われているんだよ……」
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