俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第16話 精霊達の誕生日

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 ディメールで冒険者となった俺は剣の鞘を作って貰い、皆んなの服を作って貰うためにパラキ村に戻る事にした。
 街の外を歩く時は魔物がいつ出て来ても良いように2人召喚してパラキ村へ向かっている。

「今日は天気があまり宜しくは無いですわね」
 
 シルクは空を見上げて雲の流れを見ている。

「この位なんて事ないだろ?」

 エルザは天気の事はあまり気にしていないようだ。

「雨降らないと良いけどな」

 遠くの雲がどんよりとしているのを見ると、雨降りそうだ。 早くパラキ村に行かないと。
 パラキ村までは精霊達を交代しながらたどり着いた。
 途中マリスが花畑を見つけては寄り道し、シャルはディメールで買った本を読む事に没頭しすぎて時間を忘れて日が暮れるしで4日はかかったがなんとかたどり着いた。

「これは凄いな……」
 
 前回は見る事が出来なかった色鮮やかに染められた服や生地が風に靡いて家々の間に干してある光景はとても綺麗だ。 特に日の光で淡く透き通る生地が美しい。

「これは綺麗ですね」
「凄いよ兄ちゃん!」
「美しいですわね」
「そんなことより早く酒場行こうぜ」
 
 エルザは相変わらずだな。

「お、久しぶりじゃないか」
「どうも」
「ん? お仲間さんが増えたようだな。 しかもこんな別嬪さんばかりで兄ちゃんやるな」
「いや、そう言うわけでは……」
「まぁ良い。 戻って来たのは服の事だろ? 良い店紹介してやるよ。 もちろんタダでな」
「ありがとうございます」
 
 タダより高い物は無いが、この服は前の報酬の一つと考えれば素直に受け取れる。

 マスターに紹介された服飾を扱う店に入る。

「あら~、お客様かしらぁ。 もしかしてビルちゃんの紹介の子かしら?」
 
 結構ガタイが良いおじさんがメジャーを首にかけ出て来た。
 ビルちゃんってもしかして酒場のマスターの事か?

「え、ええ、多分そうです……」
「やっぱり! なら、そちらのお嬢様方の服がご所望かしら?」
 
 グイグイ来るな。 顔近い!

「そ、そうです。 服は4人分でお願いします。 どんな服がいいかは皆んなに任せるよ」
 
 俺が皆んなに服のデザインを任せてみたが、そもそも服を着ない精霊達ではデザインが良く分からず悩んでいる。

「翔様にお任せ致しますわ」
「あたしもよくわからんから翔、頼む」
「僕もよくわかんないから兄ちゃんにお任せ~」
「私はそうですね……、う~ん……」

 俺に任せられても女性の服なんてよくわからん。
 俺も悩んでいると、店員が4人をジロジロと全身を見ている。

「うん、いいわぁ! アタシに任せてちょうだい! いい服を作ってあげるわよ!」

 餅は餅屋だ。 プロに頼むとしよう。 そして顔が近い!

「よ、宜しくお願いします……」
「じゃあ、サイズを測るからこっちに来てちょうだい」

 4人は店員に連れられて奥の部屋に。
 俺は1人で女性の服を売っている店の中にポツンと取り残され、他のお客からはジロジロ見られて居心地が……デートで買い物に行くとこんな感じなのか……デートなんてした事無いけど。
 正直いたたまれないが、勝手に出て行く訳にもいかず、店の隅で待つ事にした。

「翔、待たせたな」
「翔様お待たせ致しました」
「兄ちゃんお待たせ~」
「翔さんお待たせしました」
 
 奥の部屋から4人が戻って来た。 そしてさっきの店員が俺の元へ駆け寄って来る。 だから顔近いって!

「いいわよぉ! この子達。 アタシのインスピレーションが高まっちゃうわ! 楽しみに待っててちょうだい」
 
 そう言うと店員は俺の前でバチコーンとウインクしてくる。

「よ、宜しく……お願いします……」

 服飾屋を後にするとシャルが聞いてきた。

「私の服も作って頂いて宜しかったのでしょうか?」
「もちろんさ。 もし追加分にお金かかるならちゃんと払うし」
「本当ですか! 翔さんありがとうございます」
「皆んなにはいつもお世話になってるからたまにはこんなプレゼントね」
「プレゼントですか? ありがとうございます」
 
 皆んなの服が出来上がるのは俺も楽しみだ。
 プレゼントで思い出したが、精霊って誕生日あるのだろうか?

「なぁ、皆んなは誕生日ってあるの?」
「わたくし達の誕生日ですか?」
「そう」
「私達に誕生日と言うのはありませんね」
「いつの間にかそこに居たって感じだからな」
「僕も知らない」
 
 そうか、誕生日が無いのか。 それはそれでちょっと寂しいな。
 よし。

「ならどうかな? せっかくだから皆んなの誕生日を作ろうと思う」
「わたくし達のですか?」
「そうそう。 誕生日が無いのはやっぱり寂しいしね」
「そう言う事なら今日、あたしの誕生日にしようぜ! あたしが最初に召喚されたんだから良いだろ?」
「エルザずるい~」
「まぁまぁ、なら今日皆んなの誕生日って事で、お祝いしよう!」
 
 そして宿のおかみさんに話をし、誕生日を祝う事になった。

「「カンパーイ!!」」
 
 今回の料理はおかみさんの協力もあったが、奮発した。
 エルザは酒とつまみを楽しみ、シルクは山の幸、マリスは肉を頬張ってリスのようになっている。 シャルはパンとシチューなど色々と楽しんでいるようだ。
 だがしかし、これはあくまで前座。 本命はここからだ!

 食事も一通り食べ終わった後、俺はおかみさんに合図を送る。

「さぁさぁ、お待たせ」
 
 俺がメインとして注文しておいた特大ケーキが登場だ!

「すっご~い! 何これ! なにこれ!」
「これは……見事ですわね」
「……ごくん……」
「甘ったるそうだな……だがこれにはあの酒が合いそうだ……ブツブツ……」
 
 白い生クリームに包まれたケーキを初めて見た皆んなは各々テンションが上がっている。

「これはバースデーケーキって言って、誕生日を迎えたら皆んなで食べるのさ」
 
 ローソクはデカいのしか無かったので、1人一本のローソクを持ってもらった。

「ローソクで何をいたしますの?」
「このローソクは願いを込めて吹き消す物なんだよ」
「お願いするの? するする~!」
「あたしは翔と酒が有れば良いや」
「私は色々な本が読みたいです」
「声に出さなくて良いんだよ。 心の中で願って吹き消してみてよ。 じゃあいくよ。 せーの!」
「「フー」」

 皆んな1発でローソクの火を消し、バースデーケーキを食べ始めた。
 甘いケーキが美味しかったのか、エルザ以外良く食べる。
 特にシャルは三分の一は食べたのでは……?
 そして今日この日をもって皆んなの誕生日が決まった。
 明日には服も出来上がる予定なので、それを楽しみにして早々と宿で眠る事にした。
 今回は誕生日だからと全員で寝ると思ったが、皆んなは自分から魔法陣の中に戻って行っく。
 俺にはよくわからなかったけど、今日はゆっくり寝れそうだ。
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