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第18話 服とダンスとイカ退治 その2
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港町ストークレイルへ向かうためにディメールを旅立つ。
ギルドでリアスに挨拶しておきたかったが依頼で出かけてしまっているらしい。
仕方ない、俺達もストークレイルに向かうか。
日数もかかるのでエルザ以外は魔法陣に戻ってもらい、エルザとの2人旅。
「なぁ翔」
「なに?」
「ストークレイルに着いたら酒場に行こうぜ。 港町だからこの辺とは違った酒が飲めるってディメールで聞いたんだよ」
「少しくらいならな」
「やったぜ! さすが翔!」
エルザが珍しく俺に抱きついてきた。
「ど、どうしたんだよ」
俺が聞くとエルザは顔を赤らめてうつむいて話してくる。
「あ、あたしの服装はどうだったかちゃんと聞きたくてな……」
エルザの新しい服装はもちろん綺麗だったし、着ている姿はもちろん綺麗だった。
「綺麗だったよ」
「本当か! よしっ!」
エルザは嬉しそうに腰でガッツポーズをしている。
『エルザさんばかりずるいですわ』
『そうだよ兄ちゃん』
『…………』
もちろん皆んな綺麗だったし、可愛かったに決まっている。
「せっかく作ってもらった服は着ないのか?」
「汚したく無いからな」
確かに魔物と戦闘になれば服も汚れてしまうだろうから仕方ないか。
エルザと2人で1日かけて街道を歩き、山道の入口まで辿り着く。
「ここから上り坂だな」
ゴツゴツした岩と緩やかな勾配が続くのを見るとエルザは「あたしパス」と魔法陣に戻ってしまった。
山賊が出るかもしれないので、誰か召喚しないと。
『兄ちゃん僕、僕!』
『わたくしなら疲れも癒せますますわ』
う~ん、水はまだたっぷりあるし、そんなに疲れてはいないな。
ごめん。 今回はシャルに頼むよ。
『私ですか?』
ああ、万が一岩が崩れてきたりしてもシャルなら対処できるかもしれないからな。
『わかりました。 召喚をお願いします』
「緑の優しき土の恵みよ 盟約に基づきその姿を見せよ!」
魔法陣より出てきたシャルと2人旅が始まった。
ゴツゴツした岩を縫うように山道が続いている。
だいぶ登った所で景色を眺める。
「すげぇ……」
絶景だ。
遠くの方にディメールが見える。
「良い景色ですね」
「そうだな」
しばらく休憩も兼ねて景色とご飯を楽しむ。
頂上付近から回り込んで反対側へ。
反対側の山道は森林となっていて、山から降りれば背の高い木々がある森の中だ。
「翔さん、ここから先は気を付けて下さい」
「何かあるのか?」
「おそらく山賊がいます」
シャルは山賊の見張りに気がついたらしく、見張りは本隊に伝えに行ったようだ。
「わかった」
俺はシャルと用心しながら森の中を進む。
「ちょっと待ちな」
山道の横の木々から6人の男が現れた。
見るからに山賊だな。
「なにか?」
「へへ、見てわかるだろ? 金目の物を置いていけば命は助けてやるよ。 全裸になるけどな」
山賊達はナイフをチラつかせ笑いながら喋る。
「お、おお! そこの女、良いツラしてるじゃねぇか。 その女も頂こうか」
俺が剣に手をかけると、背後の木々から更に5人程山賊の仲間が出てきた。
「この人数に勝てるか?」
山賊の1人がナイフを突きつけながらジリジリと詰め寄ってくる。
俺だって少しは戦える!
「男はやっちまえ! 女は捕らえろよ!」
山賊が襲ってくると同時に拳程の石が山賊の1人の顔を捉えた。
そして次々と拳大程の石が山賊目掛けて飛んでいく。
「な、なんだこいつ!」
「魔術師か!」
「くそ! 一旦引け!」
山賊はさっさと逃げてしまった。
「シャル大丈夫か?」
「はい。 あんな女性を物としか考えない輩は私が成敗します! 翔さんも大丈夫ですか?」
「シャルのおかげでな」
また剣を振るう機会がなかったな……。
山道を下って中腹まで行くと、広い場所に山賊が20人ほど待ち構えている。
「お頭来ましたぜ」
「待ってたぜ! そこの女と金目の……」
先手必勝!
山賊が喋っている間にシャルが石を飛ばし、俺が剣を構えて山賊に突進する。
「ぐっ!」
「がぁ!」
「やろう! こっちがまだ喋ってるのに!」
シャルが飛ばす石が山賊の顔面や腹部を捉え、体勢の崩れた山賊を俺が切っていく。
「ま、まて! お前ら! これを見ろ!」
奥から縛られナイフを首に当てられた男性と女性、男の子が山賊に連れて来られていた。
「それ以上抵抗するならこいつらの命は無いぞ!」
「人質とは卑怯だぞ!」
「山賊に卑怯もなにもねぇ!」
「くそっ!」
これでは手出しできない。
「よし、そのまま動くなよ」
「へへ、形勢逆転だな」
山賊がにじり寄ってくる。
山賊の意識が俺達に集中していると、捕まっていた男の子が行動した。
「いてぇ!」
男の子を捕まえていた山賊が足を踏みつけられ、手を離した隙に男の子が走って逃げた。
「この餓鬼ー!」
足を踏まれた山賊が男の子に向かってナイフを投げる。
ナイフは男の子の背中に命中し倒れてしまう。
「「タケル!!」」
男性と女性はこの男の子の両親なのだろう。
男の子が倒れる所を見ると暴れて山賊の手から抜け出し男の子の元へ駆け寄る。
今だ!
俺は剣を握りしめて山賊に駆け寄ろうとした。
「翔さんはあと親子の元へ行って下さい。 この山賊は私が!」
シャルに言われたように俺はすぐに親子の元へ駆け寄り、シルクを召喚する。
「青く澄んだ清流の流れよ 盟約に基づきその姿を見せよ!」
シルクは召喚されると男の子に駆け寄り回復魔法をかける。
「あ、あの!?」
「大丈夫です! 任せて下さい」
俺は3人の縄を切ると3人とシルクを守るために山賊の前に立ちはだかる。 シャルを確認するとシャルは山賊に囲まれている。
「大丈夫ですわ」
心配したが、シルクに言われ剣を山賊に向け構え直す。
「どうすんだ? ねぇちゃんを守る騎士様は向こうに行っちまったぜ」
「…………」
「安心しな。 その顔には傷つけねぇ。 けど、さっきの仕返しはさせてもらうぜ」
「……ません……」
「あ?」
「許しません! あんなに幼い子を傷つけるなんて!」
シャルは両手を天に掲げると足元に魔法陣が現れ、石飛礫がシャルの周りを舞い次々と山賊に向けて発射される。
山賊は切られるより酷い状態で、石飛礫が山賊の顔、腕、足など体の肉を削り取って行く。
魔法がおさまるとシャルの周りには山賊だった物が転がり血溜まりが出来ていた。
「な、なんだこいつ!?」
「バケモノだ!」
「ならこいつだけでも!」
山賊の頭は剣を手に俺の方に走って来るが、シルクは魔法で山賊達はあっさり首を切られた。
逃げる山賊もシャルは石飛礫で全員を山賊だった物に変えた。
「もう大丈夫ですよ」
俺は男の子の両親に笑顔で伝えるが、この惨状を見ていた2人はドン引き。
シャルがこちらに来るも、足元の血溜まりを見て、その場にふせて「命ばかりは……」と……。
とりあえず落ち着くまで待って、事情を聞いてみた。
その間に血で汚れてしまっていたシャルには一度魔法陣に戻ってもらいもう一度召喚した。
聞いた所、なんでもストークレイルからディメールに商品を買いに行った帰りに山賊に襲われたようで、ギルドで用心棒として雇った冒険者は山賊に殺されたという。
「俺達もこれからストークレイルへ行く所なんで、よければ一緒に行きませんか?」
「本当ですか?! 助かります」
「お兄ちゃんありがとう」
男の子も元気になったようで、ストークレイルまでランダ親子と一緒に行く事になった。
「お姉ちゃん強いね」
男の子はシャルの隣りに行き話しかける。
「そ、そうですか?」
シェルは少し驚いたように返事をしている。
「僕タケルって言うんだ!」
「わ、私はシャルです」
タケル君はシャルと歩きながらずっと喋っている。
「ところでカケルさんはストークレイルに何しに?」
「ストークレイルで何かあるって聞いたので」
「ああ、なら漁場祭に?」
「漁場祭?」
「ええ、漁場祭はストークレイルで年に一度のお祭りなんですよ」
「祭り!」
異世界で初めての祭り! これはワクワクが止まらない!
『祭りってなんだ?』
聞いてたのか。 祭りってのは神様にお供えをして今年のお礼と収穫をお願いする行事だよ。
『収穫?』
沢山ご馳走が食べれますようにってお祈りするのさ。
『へ~』
「それでカケルさんはそちらの女性と踊られるのですか?」
シルクを見て父親のエリオさんが聞いてくる。
「踊る?」
「そうですよ。 漁場祭は海の神様に収穫を祝うお祭りですが、神様の前で一緒に踊った2人は結ばれると言われています」
「しかも今年の豊穣の巫女に選ばれるのですよ」
母親のケリーさんはうっとりしながら何か思い出しているようだ。
「私もエリオとお祭りで踊ったのよ」
ケリーさんとエリオさんは少し照れくさそうにしている……仲がいいことだな。
「翔様、踊りましょう!」
海、水と言えばシルクは適任なのかも知れない。
『翔! あたしだろ!』
『兄ちゃん僕だよね?!』
決めるのが難しい……。
「俺は踊りなんて出来ませんけど……」
「大丈夫、大丈夫。 リズムに合わせて楽しく体を動かせば良いだけですから」
そうは言ってもな……。
山道を抜け、広い草原まで出ればストークレイルまであと少し。
「今日はここで一泊しましょう」
「しかし、私達は荷物を山賊に取られてしまい何も持っていないのです」
「大丈夫ですよ」
俺は荷物からテントを取り出し、ランダ親子に使って下さいと差し出した。
「いえ、助けて頂いたのにそこまでして頂くわけには……」
「良いんですよ。 ついでに見張りもやっておきますから」
「ありがとうございます。 お言葉に甘えさせて頂きます」
そして今日はランダ親子もいる事だし夕飯を多めに作る事にし、ランダ夫妻は食事処を経営しているらしく、夕飯は任せる事にした。
「でもなんであんな山賊がいる山を越えようとしたんですか?」
普通は山道を迂回して行くのが一般的だと言う。
「はい、お祭りに間に合わせたくて近道をしたんですけど、まさか山賊に襲われるとは……甘かったです」
「でもお兄ちゃんやお姉ちゃんが山賊をやっつけてくれたから助かったよね」
「でももうあんな危ない事してはダメですよ」
「は~い、シャル姉ちゃん」
タケルくんはシャルにだいぶ懐いてるようだな。
ランダ夫妻が作ってくれた芋と肉のスープとパンで食事を済ませると夜も更けてきた。
タケル君はシャルの膝上に頭を乗せて眠ってしまっている。
「カケルさん達はストークレイルで泊まる所はあるんですか?」
エリオさんが白湯を飲みながら聞いてくる。
「いえ、着いてから探そうと思ってます」
「今から宿を探すのは難しいと思いますよ」
「このお祭りの時期は何処の宿もいっぱいですから。 もし宜しければうちに泊まりませんか?」
「え? でも……」
「助けて頂いた恩もありますし、護衛だけでなく食事までご馳走になってしまいましたので、そのくらいはさせて下さいな」
ケリーさんもそう言ってくれるならご厄介になろう。
「よろしくお願いします」
「食事の方も楽しみにしていて下さいね。 腕によりをかけますよ」
「それは楽しみですわ」
シルクは美味しい食事が出来ると聞いて笑顔で体を左右に揺らし2つの山も揺れている。
「楽しみにしています」
『あたしも楽しみにしとくぜ』
『僕も僕もー!』
食事に反応する辺り、精霊ってのは皆んな食いしん坊なのか?
『今まで食べ物なんて必要無かったからな』
そうか、体が無ければ食べれないか。
シャルがタケル君をテントで寝かせると、ランダ夫妻もテントへ。
俺は焚き火の番をしながら横になりウトウトしはじめる。
明日はやっとストークレイルに着くな。
港町か……どんな……街なんだろ……う……。
俺は期待を胸に眠りについた。
ギルドでリアスに挨拶しておきたかったが依頼で出かけてしまっているらしい。
仕方ない、俺達もストークレイルに向かうか。
日数もかかるのでエルザ以外は魔法陣に戻ってもらい、エルザとの2人旅。
「なぁ翔」
「なに?」
「ストークレイルに着いたら酒場に行こうぜ。 港町だからこの辺とは違った酒が飲めるってディメールで聞いたんだよ」
「少しくらいならな」
「やったぜ! さすが翔!」
エルザが珍しく俺に抱きついてきた。
「ど、どうしたんだよ」
俺が聞くとエルザは顔を赤らめてうつむいて話してくる。
「あ、あたしの服装はどうだったかちゃんと聞きたくてな……」
エルザの新しい服装はもちろん綺麗だったし、着ている姿はもちろん綺麗だった。
「綺麗だったよ」
「本当か! よしっ!」
エルザは嬉しそうに腰でガッツポーズをしている。
『エルザさんばかりずるいですわ』
『そうだよ兄ちゃん』
『…………』
もちろん皆んな綺麗だったし、可愛かったに決まっている。
「せっかく作ってもらった服は着ないのか?」
「汚したく無いからな」
確かに魔物と戦闘になれば服も汚れてしまうだろうから仕方ないか。
エルザと2人で1日かけて街道を歩き、山道の入口まで辿り着く。
「ここから上り坂だな」
ゴツゴツした岩と緩やかな勾配が続くのを見るとエルザは「あたしパス」と魔法陣に戻ってしまった。
山賊が出るかもしれないので、誰か召喚しないと。
『兄ちゃん僕、僕!』
『わたくしなら疲れも癒せますますわ』
う~ん、水はまだたっぷりあるし、そんなに疲れてはいないな。
ごめん。 今回はシャルに頼むよ。
『私ですか?』
ああ、万が一岩が崩れてきたりしてもシャルなら対処できるかもしれないからな。
『わかりました。 召喚をお願いします』
「緑の優しき土の恵みよ 盟約に基づきその姿を見せよ!」
魔法陣より出てきたシャルと2人旅が始まった。
ゴツゴツした岩を縫うように山道が続いている。
だいぶ登った所で景色を眺める。
「すげぇ……」
絶景だ。
遠くの方にディメールが見える。
「良い景色ですね」
「そうだな」
しばらく休憩も兼ねて景色とご飯を楽しむ。
頂上付近から回り込んで反対側へ。
反対側の山道は森林となっていて、山から降りれば背の高い木々がある森の中だ。
「翔さん、ここから先は気を付けて下さい」
「何かあるのか?」
「おそらく山賊がいます」
シャルは山賊の見張りに気がついたらしく、見張りは本隊に伝えに行ったようだ。
「わかった」
俺はシャルと用心しながら森の中を進む。
「ちょっと待ちな」
山道の横の木々から6人の男が現れた。
見るからに山賊だな。
「なにか?」
「へへ、見てわかるだろ? 金目の物を置いていけば命は助けてやるよ。 全裸になるけどな」
山賊達はナイフをチラつかせ笑いながら喋る。
「お、おお! そこの女、良いツラしてるじゃねぇか。 その女も頂こうか」
俺が剣に手をかけると、背後の木々から更に5人程山賊の仲間が出てきた。
「この人数に勝てるか?」
山賊の1人がナイフを突きつけながらジリジリと詰め寄ってくる。
俺だって少しは戦える!
「男はやっちまえ! 女は捕らえろよ!」
山賊が襲ってくると同時に拳程の石が山賊の1人の顔を捉えた。
そして次々と拳大程の石が山賊目掛けて飛んでいく。
「な、なんだこいつ!」
「魔術師か!」
「くそ! 一旦引け!」
山賊はさっさと逃げてしまった。
「シャル大丈夫か?」
「はい。 あんな女性を物としか考えない輩は私が成敗します! 翔さんも大丈夫ですか?」
「シャルのおかげでな」
また剣を振るう機会がなかったな……。
山道を下って中腹まで行くと、広い場所に山賊が20人ほど待ち構えている。
「お頭来ましたぜ」
「待ってたぜ! そこの女と金目の……」
先手必勝!
山賊が喋っている間にシャルが石を飛ばし、俺が剣を構えて山賊に突進する。
「ぐっ!」
「がぁ!」
「やろう! こっちがまだ喋ってるのに!」
シャルが飛ばす石が山賊の顔面や腹部を捉え、体勢の崩れた山賊を俺が切っていく。
「ま、まて! お前ら! これを見ろ!」
奥から縛られナイフを首に当てられた男性と女性、男の子が山賊に連れて来られていた。
「それ以上抵抗するならこいつらの命は無いぞ!」
「人質とは卑怯だぞ!」
「山賊に卑怯もなにもねぇ!」
「くそっ!」
これでは手出しできない。
「よし、そのまま動くなよ」
「へへ、形勢逆転だな」
山賊がにじり寄ってくる。
山賊の意識が俺達に集中していると、捕まっていた男の子が行動した。
「いてぇ!」
男の子を捕まえていた山賊が足を踏みつけられ、手を離した隙に男の子が走って逃げた。
「この餓鬼ー!」
足を踏まれた山賊が男の子に向かってナイフを投げる。
ナイフは男の子の背中に命中し倒れてしまう。
「「タケル!!」」
男性と女性はこの男の子の両親なのだろう。
男の子が倒れる所を見ると暴れて山賊の手から抜け出し男の子の元へ駆け寄る。
今だ!
俺は剣を握りしめて山賊に駆け寄ろうとした。
「翔さんはあと親子の元へ行って下さい。 この山賊は私が!」
シャルに言われたように俺はすぐに親子の元へ駆け寄り、シルクを召喚する。
「青く澄んだ清流の流れよ 盟約に基づきその姿を見せよ!」
シルクは召喚されると男の子に駆け寄り回復魔法をかける。
「あ、あの!?」
「大丈夫です! 任せて下さい」
俺は3人の縄を切ると3人とシルクを守るために山賊の前に立ちはだかる。 シャルを確認するとシャルは山賊に囲まれている。
「大丈夫ですわ」
心配したが、シルクに言われ剣を山賊に向け構え直す。
「どうすんだ? ねぇちゃんを守る騎士様は向こうに行っちまったぜ」
「…………」
「安心しな。 その顔には傷つけねぇ。 けど、さっきの仕返しはさせてもらうぜ」
「……ません……」
「あ?」
「許しません! あんなに幼い子を傷つけるなんて!」
シャルは両手を天に掲げると足元に魔法陣が現れ、石飛礫がシャルの周りを舞い次々と山賊に向けて発射される。
山賊は切られるより酷い状態で、石飛礫が山賊の顔、腕、足など体の肉を削り取って行く。
魔法がおさまるとシャルの周りには山賊だった物が転がり血溜まりが出来ていた。
「な、なんだこいつ!?」
「バケモノだ!」
「ならこいつだけでも!」
山賊の頭は剣を手に俺の方に走って来るが、シルクは魔法で山賊達はあっさり首を切られた。
逃げる山賊もシャルは石飛礫で全員を山賊だった物に変えた。
「もう大丈夫ですよ」
俺は男の子の両親に笑顔で伝えるが、この惨状を見ていた2人はドン引き。
シャルがこちらに来るも、足元の血溜まりを見て、その場にふせて「命ばかりは……」と……。
とりあえず落ち着くまで待って、事情を聞いてみた。
その間に血で汚れてしまっていたシャルには一度魔法陣に戻ってもらいもう一度召喚した。
聞いた所、なんでもストークレイルからディメールに商品を買いに行った帰りに山賊に襲われたようで、ギルドで用心棒として雇った冒険者は山賊に殺されたという。
「俺達もこれからストークレイルへ行く所なんで、よければ一緒に行きませんか?」
「本当ですか?! 助かります」
「お兄ちゃんありがとう」
男の子も元気になったようで、ストークレイルまでランダ親子と一緒に行く事になった。
「お姉ちゃん強いね」
男の子はシャルの隣りに行き話しかける。
「そ、そうですか?」
シェルは少し驚いたように返事をしている。
「僕タケルって言うんだ!」
「わ、私はシャルです」
タケル君はシャルと歩きながらずっと喋っている。
「ところでカケルさんはストークレイルに何しに?」
「ストークレイルで何かあるって聞いたので」
「ああ、なら漁場祭に?」
「漁場祭?」
「ええ、漁場祭はストークレイルで年に一度のお祭りなんですよ」
「祭り!」
異世界で初めての祭り! これはワクワクが止まらない!
『祭りってなんだ?』
聞いてたのか。 祭りってのは神様にお供えをして今年のお礼と収穫をお願いする行事だよ。
『収穫?』
沢山ご馳走が食べれますようにってお祈りするのさ。
『へ~』
「それでカケルさんはそちらの女性と踊られるのですか?」
シルクを見て父親のエリオさんが聞いてくる。
「踊る?」
「そうですよ。 漁場祭は海の神様に収穫を祝うお祭りですが、神様の前で一緒に踊った2人は結ばれると言われています」
「しかも今年の豊穣の巫女に選ばれるのですよ」
母親のケリーさんはうっとりしながら何か思い出しているようだ。
「私もエリオとお祭りで踊ったのよ」
ケリーさんとエリオさんは少し照れくさそうにしている……仲がいいことだな。
「翔様、踊りましょう!」
海、水と言えばシルクは適任なのかも知れない。
『翔! あたしだろ!』
『兄ちゃん僕だよね?!』
決めるのが難しい……。
「俺は踊りなんて出来ませんけど……」
「大丈夫、大丈夫。 リズムに合わせて楽しく体を動かせば良いだけですから」
そうは言ってもな……。
山道を抜け、広い草原まで出ればストークレイルまであと少し。
「今日はここで一泊しましょう」
「しかし、私達は荷物を山賊に取られてしまい何も持っていないのです」
「大丈夫ですよ」
俺は荷物からテントを取り出し、ランダ親子に使って下さいと差し出した。
「いえ、助けて頂いたのにそこまでして頂くわけには……」
「良いんですよ。 ついでに見張りもやっておきますから」
「ありがとうございます。 お言葉に甘えさせて頂きます」
そして今日はランダ親子もいる事だし夕飯を多めに作る事にし、ランダ夫妻は食事処を経営しているらしく、夕飯は任せる事にした。
「でもなんであんな山賊がいる山を越えようとしたんですか?」
普通は山道を迂回して行くのが一般的だと言う。
「はい、お祭りに間に合わせたくて近道をしたんですけど、まさか山賊に襲われるとは……甘かったです」
「でもお兄ちゃんやお姉ちゃんが山賊をやっつけてくれたから助かったよね」
「でももうあんな危ない事してはダメですよ」
「は~い、シャル姉ちゃん」
タケルくんはシャルにだいぶ懐いてるようだな。
ランダ夫妻が作ってくれた芋と肉のスープとパンで食事を済ませると夜も更けてきた。
タケル君はシャルの膝上に頭を乗せて眠ってしまっている。
「カケルさん達はストークレイルで泊まる所はあるんですか?」
エリオさんが白湯を飲みながら聞いてくる。
「いえ、着いてから探そうと思ってます」
「今から宿を探すのは難しいと思いますよ」
「このお祭りの時期は何処の宿もいっぱいですから。 もし宜しければうちに泊まりませんか?」
「え? でも……」
「助けて頂いた恩もありますし、護衛だけでなく食事までご馳走になってしまいましたので、そのくらいはさせて下さいな」
ケリーさんもそう言ってくれるならご厄介になろう。
「よろしくお願いします」
「食事の方も楽しみにしていて下さいね。 腕によりをかけますよ」
「それは楽しみですわ」
シルクは美味しい食事が出来ると聞いて笑顔で体を左右に揺らし2つの山も揺れている。
「楽しみにしています」
『あたしも楽しみにしとくぜ』
『僕も僕もー!』
食事に反応する辺り、精霊ってのは皆んな食いしん坊なのか?
『今まで食べ物なんて必要無かったからな』
そうか、体が無ければ食べれないか。
シャルがタケル君をテントで寝かせると、ランダ夫妻もテントへ。
俺は焚き火の番をしながら横になりウトウトしはじめる。
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