俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第23話 精霊達との別れ

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 ヴァテイントとの戦いでエルザは消え、シルク、マリスに遠くに弾き飛ばされてしまった。

 3人共魔法陣へ戻っているかもと、呼びかけたが返事は無い……。
 シャル……、なんで……、なんで役に立たない俺が逃された?
 役に立たないからか?
 俺やシャルが加勢してたら3人共無事だったとかは無いか?
『翔さん……、あの2人を相手には勝つ事は出来なかったでしょう。 今回の事は前から皆んなで決めていた事なんです』
 何故だ!? 役に立たない俺を逃して何になる!?
『私達が翔さんの事を好きだからですよ』
 そんな理由で……。

 マリスの風が勢いを無くし、崖底に落下した。
 シルクの泡で落下のダメージは無く、弾みながら底まで落ちると泡は消えた。

『翔さん、ゆっくりはしていられません。 早く近くの街まで行きましょう! ここからならストークレイルが近いと思います』
 ……いや、いい……。
『翔さん!』
 俺は皆んなの所に戻る。
『ダメです! あの2人に会ったら私1人では翔さんを守れません!』
 あいつらに会ったら俺が殺してやる。
『私でも勝てないのに翔さんに勝てる訳が無い!! 決まっているじゃないですか!』
 そんなのやってみなきゃわからないだろ!!
『わかります!!』

 そんな事はわかりきっている。
 でも少しでも……、一太刀でも、傷の一つでもつけないと……。

『わかりました、少しお話しします。 もしこの先私達では対処できない相手が現れた時、翔さんだけは逃す手段を皆んなで前もって話し合っていたのです』
 何故そんな事を!!
『これには訳があります。 ですからその訳をお話しするために大精霊様の所に向かう必要があります』
 大精霊? もしかして皆んなが生き返る方法も知っているとかか?
『それは……わかりません……、でももしかしたら……』
 わからない……か……。

『ですが、ここにいては危険です。 いつ魔物が出てくるかわからないんです。 私を召喚して下さい』
 もしかしてシャルが加勢しなかったのは……。
『はい、翔さんを逃した後の護衛のためです』
 そうか……。
 なぁ、シャル達精霊は召喚主が死んだらどうなるんだ?
『契約が解除されて地に戻るか大精霊様の所に戻ると思います』
 そうか……、なら俺がここで死ねばシャルともう1人の精霊は自由になるって訳だ。
『なにを言ってるんですか!! 翔さんを生かす為に3人共頑張ったんですよ!!』
 そうなのかも知れないが、俺に守ってもらうそんな価値なんて無い。 何の力も無いただの人だ! 皆んなの命を背負うなんて出来ないんだよ……。

 俺は壁を背にしてその場に座り込む。

 もう良いんだよ、シャル。
 俺は生きるのを完全に諦めた。 死ねば皆んなの元に行けるかも知れないし。
『翔さん……』
 シャルはなにかと色々言っているが、俺は3人の事が頭から離れず、シャルの言葉は全く耳に入らず日が暮れていった……。
 多分もう日も暮れて夜になっているだろう。
 月の光が眩しく感じる。

『……さん! 翔さん!!』
 …………。
『魔物の気配がします! それも一匹や二匹じゃありません! 早く私を召喚して下さい!!』
 召喚……? 召喚してどうする? 魔物と戦うのか? シャルも?
 その時脳裏によぎったのはエルザが炎の蛇に飲み込まれる瞬間だ。
 エルザの顔、シルク、マリスの覚悟の顔が浮かぶ。
 ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!
 召喚なんてできる訳がない!

『翔さん!!』
 無理だ!!
 それに俺が死ねば自由になれるんだ。 何も問題は無いだろ。
『翔さん……』

 崖上から黒い毛皮に赤い瞳の狼の魔物【ルヴォル】がどんどん降りて来ると俺を囲んだ。
 その数10匹以上。
 「グルルルル」と唸り声を上げてジリジリと近寄ってくる。

『翔さん、私達が翔さんが死んで自由になって喜ぶとでも思ってるんですか!!』
 シャルがいくら言ってもこの状況だ。 もう無理だろう。
 1匹のルヴォルが飛びかかってきた瞬間、俺の目の前に緑の魔法陣が展開され、ルヴォルが弾かれる。
 俺は召喚なんてしていない。
 その魔法陣はいつものと違い、バチバチと音を立て、ボヤけているような魔法陣だ。

『あああああああああああ!!」
 その魔法陣から左手が出て来ると、シャルが苦しい表情で無理矢理魔法陣から出て来た。

「シャル! なにやって!?」

 その姿はいつもと違い、服もボロボロ、右腕も消えているし、所々消えかかっている。

「シャル!!」
「言いましたよね、私にはやる事があると。 3人の思いを無駄にする訳にはいきません!!」

 直ぐにシャルの石飛礫がマシンガンの様にルヴォルに向かって放たれた。

 シャルも強いが多勢に無勢、力も半分も出ていなそうだし、俺を守りながら戦うなんて無茶だ!
 それでも石飛礫を飛ばし、地面から棘を出し、ルヴォルと対等に戦うが消えかかっていた右足も消え、その場に倒れる。

「シャル!! もう止めるんだ!! お前まで消えちまうぞ!!」
「大丈夫です。 私は負けません」

 這いつくばりながらもルヴォルを攻撃し、残ったルヴォルは逃げて行く。
 倒し終えたシャルはその場から動けない……。

「シャル!!」

 駆け寄って抱き抱えるとシャルの全身が薄くなり消えかかっている。

「早く魔法陣へ戻るんだ!!」
「翔さんごめんなさい。 召喚呪文も無しに無理に魔法陣から出て来たから……、もう戻れないの……」
「そん……な……、なら俺の魔法力を全部使えば!」
「それも……無理です。 召喚呪文で召喚されないと、術者との繋がりが持てなくて……、でも、翔さんを助けられました」

 シャルはにこやかに笑う。

「なんで俺なんかの為に……」

 涙を流している俺の頬を今にも消えそうな左手で俺の頬を撫でる。

「なんかじゃ……ありません……。 皆んな翔さんだから頑張ったんですよ……。 だから、最後は誉めて……下さい……」
 
 体はどんどん透け、朝日と共に俺の腕の中で消えてしまった。

「シャルーー!!」


 俺は日が真上まで昇るまでその場に座り込んでしまっていた。
 シャル……、エルザ……、シルク……、マリス……。
 ………………………………………………。

 皆んなの事を考えているとシャルの言葉を思い出す。
(大精霊様に会いに行きましょう……)
 大精霊か……、そうか! 大精霊なら皆んなを戻せるかも知れない。
 こんな所でへこたれている場合じゃない! なんとしてもみんなを蘇らせるんだ!
 俺はどうにかして大精霊に会いに行く決意を固め、立ちあがろうとするが、足に力が入らない。
 剣を杖代わりにヨロヨロとしながらも、なんとか立ち上がると下山を始めた。
 しばらく歩くと川の流れる場所に行き着く。
 これを下れば海に着くかも知れない。 そうすればストークレイルが見つかるはずだ。

 「グガァ!!」

 歩いている所で突然1匹のルヴォルに襲われた。 手に持っていた剣で牙で喰われるのは免れたが勢いで吹っ飛ばされる。
 地面を3度程転がり、何とか立ち上がると目の前には3匹のルヴォルが俺にジリジリと近寄って来ていた。
 恐らくシャルとの戦闘で逃げ延びた奴らだろう。

 すかさず剣を鞘から抜き、構える。 が、俺にルヴォルを3匹も倒せるだろうか……?
 今まで皆んなの力で魔物を倒して来た。
 1匹でもかなりキツイだろう……。
 だけど今は戦うしか無い。
 大精霊に合わないといけないのだから。

 3匹が一斉に襲いかかってくる。
 距離をとりつつ1匹に剣を振るうが躱され、2匹の牙が腕と足を襲う。
 
「ぐっ!」

 手足をルヴォルの牙がかすめる。
 ルヴォルの牙は鋭く、噛まれたら簡単に肉を引き裂き骨まで砕かれるだろう。
 かすめた場所から血が滲む。 だけどここでやられる訳にはいかない。
 こちらからも攻撃しなくては!!
 噛まれるのだけは何とか回避し、全身血まみれになりながら何とか1匹の額に刃を突き立て倒した。

 だけどもう体力も限界だ。
 腕に力が入らない。
 いつ剣を落としてもおかしくないくらい感覚がなくなって来た……。

 残りの2匹の攻撃を転がりながら何とか躱し耐えていると雨がポツポツと降り始め、次第に暴風雨となり雷が鳴り始める。

 雨と風、暗闇でルヴォルの姿が見えない。
 何処から来るかわからず、ジリジリと後ろに下がってしまうといつの間にか川縁まで下がっていた。
 増水していた事に気が付かない俺は川に落ち、そのまま川の勢いで流されてしまう……。
 川の中で意識が朦朧としている時、頭の中に声が聞こえた……。
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