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第27話 精霊の森と試練
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妖精の森で知り合いになったルマに連れられ、やっと精霊の森の結界前にやって来れた。
「さぁ、ここよ」
示された先には森が続いているが、蜃気楼のように歪んで見える。
これが結界か?
『それが結界ですよ』
頭の中からラジュナの声が聞こえる。
どうすればいい? ラジュナに聞いてみる。
『私を召喚して下さい。 但し、結界を解除したら私は直ぐに戻ります』
わ、わかったよ。
『では……、全てを貫き黄色|《こうしょく》に輝く一筋の光よ 盟約に基づきその姿を見せよ! です』
「全てを貫き黄色に輝く一筋の光よ 盟約に基づきその姿を見せよ!」|
俺の前に黄色い魔法陣が現れ、ラジュナが姿を現し……?
「いっくにゃーー!!」
「へ?」
「にゃにゃにゃーー!!」
ラジュナは手? をかざすと歪んでいた結果に波の様な波紋が浮かぶ。
「ら……ラジュナさん……?」
ラジュナは黄色いボサボサな髪の毛を揺らし、髪の間から見える耳。 手には猫の肉球の様な手袋をして、お尻には尻尾がある。
「なにグズグズしてるにゃ! 波の中心をその剣で切るにゃ!」
はっ! と我に帰ると急いで妖精の剣を抜く。
結界に向けて剣を振り上げた時……。
ズキンッ!
胸の奥が疼く。
「ぐっ……、な……、なんだ……」
ふらつき、ヨロヨロと後ずさる……。
「しまったにゃ! そこの妖精! 翔を結界に突き飛ばすにゃ!」
「え!? え!?」
ルマはいきなり言われて戸惑ってしまう。
「早くするにゃ!」
「わ、わかったわよ! どうなっても知らないから! えーい!!」
結界に向かって、ふらつく俺に向かってルマは思いっきり後ろから体当たりをし、俺はふらつきながら結界の前に。
「いまにゃ! 皆んなを助けるにゃ!」
……、皆んな……、そうだ……、結界を……。
一瞬我に帰ると俺は思いっきり剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣によって結界の一部が消えると、ラジュナは直ぐに魔法陣の中へ戻る。
「妖精、後は任せたにゃ!」
「え!? 私?」
ラジュナが戻ると胸の奥の疼きは止まり、普通に戻った。
今のはなんだったんだ?
ラジュナに問いかけても返事は無い。
俺は剣を納め、結界の中へと入った。
「カケル! あなた凄いじゃない!!」
俺の隣で飛んでいるルマが目を輝かせて肩を叩いてくる。
「ど、どうした?」
「どうしたじゃないわよ! あなた精霊様を召喚出来るなんて!」
「ん?」
「精霊様はこの世界の守り手よ! そんな精霊様を召喚出来る人なんて見たこと無いわ! 聞いた事も無い! さっきの精霊様は雷の精霊様ね。 姿はなんであんななのかちょっと良くわからないけど、やっぱり私の見る目は間違って無かったわ! で、仲間を助けに大精霊様に会いに行くって事だけど、仲間ってもしかして精霊様?」
ルマは興奮しているのか、早口に捲し立てる。
良く喋るな……。
「そうだよ」
「ほんとにほんと? 精霊様1人でも凄いのに他にも!? やっぱりカケルとは契約しとかないとな……。 助ける仲間の精霊様はどなたかしら?」
「エルザ、戦いと酒が好きな火の精霊。 シルク、皆んなを癒やしてくれる優しい水の精霊。 マリス、元気で妹の様な風の精霊。 シャル、頭も良く、いつもみんなの事を気にかけてくれる土の精霊。 4人は俺を助ける為に……」
「そう……、でも凄いわ! 雷の精霊様だけじゃ無くて、他に4人も精霊様を仲間にしてるなんて! そんなカケルに会えるなんてもう運命ね。 私も力を貸してあげるわ」
「ありがとう、助かるよ」
ルマと話しながら森を進む。
しばらく進むと光の玉がふわふわと沢山飛んでいる場所に出た。
「うわぁ! 綺麗……」
「そうだな」
俺がふわふわ浮かぶ光る玉に手をかざすと光る玉はブワッと俺達から離れ、消えてしまった。
「な、なんだ?」
「どうしたのかしら?」
『外の住人を見るのが初めてで少し怯えているだけですよ』
頭の中からラジュナの声がする。
ラジュナ! 良かった。 声かけても返事が無いから心配したよ。
『すいません。 ちょっと理由がありまして……』
大丈夫なら良いんだ。
でも、さっきのはラジュナだよな?
猫耳に尻尾、語尾がにゃー! だし、喋り方まで変わってた気がするんだけど……?
『それは忘れて下さいーー!! あの姿と話し方は翔さんのせいなんですから!!』
お、俺のせい?
『そうです! 私達精霊は実体が無いのはご存知ですよね?』
そう言えばそうだったな。
『皆さん翔さんの記憶などから実体を作って召喚されてますが、同じ姿で召喚されないでしょう? 皆んな別々の姿で召喚されます』
ふむふむ。
『翔さんの記憶で最後に印象に残ってた姿が私に振られちゃったんです! だから翔さんのせいです!』
そ、そうなんだ……、なんかゴメン。
『わかれば良いです。 でも私は翔さんの中でやる事があるから召喚はしないようにお願いします』
ピンチになったら?
『ピンチになってもです!』
……、よっぽど召喚した時の姿を見られたく無いんだろうな……。
しばらく歩くと、巨大な大木に着いた。
「でっけー!」
その巨木は大きいだけでは無く、美しさや神々しさも感じる。
「お気に召しましたか?」
巨木の前に急に現れた背の高い精霊に思わずビックリした。
「貴方が翔さんですね?」
「はい、あなたは?」
「私は貴方達が言う所の大精霊です」
「あなたが大精霊様! お願いがあります! 仲間の精霊達を……」
俺の言葉を遮る様に大精霊様が目の前に手をかざす。
「全て知っています。 ここに来た理由もわかっています。 ですが出来ません」
「な! 大精霊様ならなんとか出来るのでは?!」
「出来るかも知れません……。 ですが、復活したとしてまた彼女達を死なせる事になるのでは?」
「そ、それは……」
「お引き取り下さい。 そして貴方の中にいる精霊もこちらに返して頂きます」
「待って下さい! 俺が強くなって彼女達を守ります!」
「彼らに勝てると?」
大精霊様が言っている彼等とはおそらく【ヴァテイント】と【ルーギィ】の事だろう。
「勝てます!」
俺は勝算も無いが、皆んなを取り戻す事を考えたら思わず言葉が出た。
「……そうですか……。 ではこちらに……」
大精霊様が巨木に手をかざすと扉が浮かび上がった。
「中にどうぞ」
言われた通りに中に入ると、そこは広いホールがあり、天井にはシャンデリア、窓からは温かな日差しが差し込み、床一面芝生の様な絨毯。
水が流れ、小さい滝まである。
「すげぇ……」
「は~……」
俺もルマも中を見て圧倒された。
木の中がこんな城の中の様になっているなんて……。
「ラジュナ、この中なら出て来て大丈夫ですよ」
大精霊様が俺に向かって声をかけると、召喚呪文を唱えていないのに魔法陣が現れ、ラジュナが出てきた。
「お久しぶりですにゃ、大精霊様」
「久しぶりねラジュナ。 その耳可愛いわよ」
「にゃへへ」
大精霊様に言われてラジュナはご満悦のよう。
階段を登り、長い廊下を歩くと玉座があるそんな部屋に入ると、木の蔓や葉で作られた玉座に大精霊様が座る。
周りには外にもいた光の玉がふわふわ沢山浮かんでいる。
「さて、翔さんにお話しがあります」
「はい」
「精霊の復活は貴方にかかっていますが、復活しても貴方との今までの記憶は全て消え、覚えていないでしょう。 それでも復活を望みますか?」
「もちろんです。 思い出ならまた作れば良いんですから」
「そうですか……。 では貴方は先程皆を守れるようになると言いましたね。それを証明して頂きます」
「どうすれば?」
「まずは彼女達を見て頂きましょう」
大精霊様が手を叩くと扉が開く。
扉から出て来たのは4人の幼女。
年は4、5歳位かな?
走って大精霊様の椅子の後ろに隠れてこっちをひょこっと見ている。
赤い髪の子、青い髪の子、白い髪の子、緑の髪の子……。
何処かで見たことが……、ある! ある筈だ!
「エルザ! シルク! マリス! シャル!」
生きててくれたのか!!
俺がいきなり名前を叫んだから、4人はビクッとしてマリスとシャルが泣き出す。
シルクは2人を泣き止ませようと頭を撫でているが、次第に自分も泣き出す。
エルザは大精霊様に抱きついている。
「大丈夫ですよ」
大精霊様は4人を懐に抱きしめると泣き止んだ。
「翔さん、大きな声を出してはいけません」
「え、でも、あの……、皆んな……生きて……」
俺も膝をついて皆んなを見ているだけで視界が歪む。
そんな俺の元にエルザがトテトテとやって来て、「何処か痛い?」と聞いてくる。
シルク、マリス、シャルもやって来て、シルクとシャルには背中を撫でられ、マリスには近くの葉っぱをちぎって俺の頬を拭いてくれる。
「好かれていますね……、見て頂いた通り、4人共、子供の様な状態です。 翔さんへの記憶も有りません。 あの戦いに敗れた後、皆光の玉となりここへ戻って来ました。 そして数日で人の姿へとなったのです。 まるでもう一度翔さんに会う為に……」
俺は4人の頭を交互に撫でながら大精霊様に問いただす。
「どうすれば皆んなは元に戻るんですか?」
「そうですね、姿だけなら1人1人に合った精霊命珠が必要となります」
「精霊命珠?」
「そうです。 火の精霊なら火の精霊命珠が必要です。 それら全てを探して持ち帰って下さい」
「それが有れば皆んなが元に戻るんですね!? 俺やります!」
「お願いします。 ではそこの妖精さん」
「は、はい! 私ですか?!」
急に指名を受けてびっくりしてる。
「貴方はここに残って4人の世話をして頂きます」
「え!? そんな……、そ、そうだ! 私の友達でどうですか? 2人いますので大精霊様のお力になれると思いますよ!」
「ふふ……、仕方無いですね。 ではお友達をお呼びしましょう」
大精霊様は指をパチンと鳴らすとピピとンパが現れた。
「え?」
「ん?」
急に呼び出された2人は状況が分かっていない様子で、辺りを見回している。
「あれ? ルマじゃないか。 なんでここに?」
「あ、妖精の剣の人……、カケルさん? なんで?」
2人共状況が把握しきれていないようだ。
「2人共、後ろ後ろ」
ルマが2人に後ろを見るように促している。
「「?」」
「うわぁ! 誰だ?」
ンパは自分の真後ろにいた人を見てびっくり。
「ルマ、こちらの方は?」
「2人共、 ごしょごしょ……、と言う訳なのよ」
「「えーーーー!!」」
「この方が大精霊様!」
「私達が大精霊様のお手伝い!!」
どう言う風に言われたのやら。
「ンパ、どうしよどうしよ」
「ピピ、落ち着け、落ち着け、まずは深呼吸だ、吸って、吸って、吸って、吸っ……て、すっ…………、ぶは~!! はー、はー……」
「ンパ、あなたが落ち着きなさいよ!」
ルマは2人を落ち着かせ、ここまでの経緯を話し、大精霊様のお手伝いをさせる事に成功した。
「では翔さん、全ての精霊命珠が集まったら妖精の森まで来て下さい。 待っていますよ」
大精霊様はそれだけ言うと、指をパチンと鳴らし、俺とルマを迷い森前まで転移させた。
ラジュナも俺の中に戻っている。
「んで、カケル、これから何処に行くの?」
ルマに言われるまで気がついていなかった……、精霊命珠って何処にあるんだ?
ラジュナ、何か知らないか?
『私も詳しくは……、でも精霊命珠は精霊の力が強く感じる場所にあるって聞いたことあります』
そうか……、ひとまずアイゼスト王国まで戻って、事の経緯を王様とマリウスさんに話してみるか。
何か知っているかも知れないしな。
俺とルマはアイゼスト王国に向けて歩き出した。
あれ? そう言えば、なんでルマがいるんだ? 妖精は契約無しに妖精の森から出られないんじゃなかったっけ?
『ルマさんは翔さんともう契約されてますよ』
え!? いつの間に?
『大精霊様に外に転移される時には既にされてましたね』
マジか……。
契約してしまっているなら仕方ない……。
「ルマ、これからよろしくな」
「当然でしょ。 やっと外に出られたんだから楽しまなくちゃ」
テンションが上がっているのか、そこら中を飛び回っている。
「おい、他の人に見られないようにしろよ」
「大丈夫よ。 そんなヘマはしないわよ~。 それに……、見てこれ」
ルマは何処からか紐の先に赤い宝石が付いた首飾りを出してきた。
「カケルにはこれを身につけてもらうからね」
「嫌だよ」
「ダメよ、これは契約の証と、私の家になるんだから」
そう言ってルマは俺の首にかけると、赤い宝石の中に入って行った。
そして直ぐに出てきた。
出入りは自由のようだ。
「どう? 凄いでしょ?」
「これ、道具袋に入れとくのはダメか?」
「ダメよ! 私が自由に出入り出来ないじゃない!」
自由に出入りされても困るんだけどな。
「アイゼスト王国に着いたら中に入ってろよ」
「わかったわよ」
歩きながら皆んなの姿を思い出す。
皆んな生きていてくれた。
絶対に精霊命珠を見つけて来てやるからな。
俺は心に固く誓うのだった。
「さぁ、ここよ」
示された先には森が続いているが、蜃気楼のように歪んで見える。
これが結界か?
『それが結界ですよ』
頭の中からラジュナの声が聞こえる。
どうすればいい? ラジュナに聞いてみる。
『私を召喚して下さい。 但し、結界を解除したら私は直ぐに戻ります』
わ、わかったよ。
『では……、全てを貫き黄色|《こうしょく》に輝く一筋の光よ 盟約に基づきその姿を見せよ! です』
「全てを貫き黄色に輝く一筋の光よ 盟約に基づきその姿を見せよ!」|
俺の前に黄色い魔法陣が現れ、ラジュナが姿を現し……?
「いっくにゃーー!!」
「へ?」
「にゃにゃにゃーー!!」
ラジュナは手? をかざすと歪んでいた結果に波の様な波紋が浮かぶ。
「ら……ラジュナさん……?」
ラジュナは黄色いボサボサな髪の毛を揺らし、髪の間から見える耳。 手には猫の肉球の様な手袋をして、お尻には尻尾がある。
「なにグズグズしてるにゃ! 波の中心をその剣で切るにゃ!」
はっ! と我に帰ると急いで妖精の剣を抜く。
結界に向けて剣を振り上げた時……。
ズキンッ!
胸の奥が疼く。
「ぐっ……、な……、なんだ……」
ふらつき、ヨロヨロと後ずさる……。
「しまったにゃ! そこの妖精! 翔を結界に突き飛ばすにゃ!」
「え!? え!?」
ルマはいきなり言われて戸惑ってしまう。
「早くするにゃ!」
「わ、わかったわよ! どうなっても知らないから! えーい!!」
結界に向かって、ふらつく俺に向かってルマは思いっきり後ろから体当たりをし、俺はふらつきながら結界の前に。
「いまにゃ! 皆んなを助けるにゃ!」
……、皆んな……、そうだ……、結界を……。
一瞬我に帰ると俺は思いっきり剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣によって結界の一部が消えると、ラジュナは直ぐに魔法陣の中へ戻る。
「妖精、後は任せたにゃ!」
「え!? 私?」
ラジュナが戻ると胸の奥の疼きは止まり、普通に戻った。
今のはなんだったんだ?
ラジュナに問いかけても返事は無い。
俺は剣を納め、結界の中へと入った。
「カケル! あなた凄いじゃない!!」
俺の隣で飛んでいるルマが目を輝かせて肩を叩いてくる。
「ど、どうした?」
「どうしたじゃないわよ! あなた精霊様を召喚出来るなんて!」
「ん?」
「精霊様はこの世界の守り手よ! そんな精霊様を召喚出来る人なんて見たこと無いわ! 聞いた事も無い! さっきの精霊様は雷の精霊様ね。 姿はなんであんななのかちょっと良くわからないけど、やっぱり私の見る目は間違って無かったわ! で、仲間を助けに大精霊様に会いに行くって事だけど、仲間ってもしかして精霊様?」
ルマは興奮しているのか、早口に捲し立てる。
良く喋るな……。
「そうだよ」
「ほんとにほんと? 精霊様1人でも凄いのに他にも!? やっぱりカケルとは契約しとかないとな……。 助ける仲間の精霊様はどなたかしら?」
「エルザ、戦いと酒が好きな火の精霊。 シルク、皆んなを癒やしてくれる優しい水の精霊。 マリス、元気で妹の様な風の精霊。 シャル、頭も良く、いつもみんなの事を気にかけてくれる土の精霊。 4人は俺を助ける為に……」
「そう……、でも凄いわ! 雷の精霊様だけじゃ無くて、他に4人も精霊様を仲間にしてるなんて! そんなカケルに会えるなんてもう運命ね。 私も力を貸してあげるわ」
「ありがとう、助かるよ」
ルマと話しながら森を進む。
しばらく進むと光の玉がふわふわと沢山飛んでいる場所に出た。
「うわぁ! 綺麗……」
「そうだな」
俺がふわふわ浮かぶ光る玉に手をかざすと光る玉はブワッと俺達から離れ、消えてしまった。
「な、なんだ?」
「どうしたのかしら?」
『外の住人を見るのが初めてで少し怯えているだけですよ』
頭の中からラジュナの声がする。
ラジュナ! 良かった。 声かけても返事が無いから心配したよ。
『すいません。 ちょっと理由がありまして……』
大丈夫なら良いんだ。
でも、さっきのはラジュナだよな?
猫耳に尻尾、語尾がにゃー! だし、喋り方まで変わってた気がするんだけど……?
『それは忘れて下さいーー!! あの姿と話し方は翔さんのせいなんですから!!』
お、俺のせい?
『そうです! 私達精霊は実体が無いのはご存知ですよね?』
そう言えばそうだったな。
『皆さん翔さんの記憶などから実体を作って召喚されてますが、同じ姿で召喚されないでしょう? 皆んな別々の姿で召喚されます』
ふむふむ。
『翔さんの記憶で最後に印象に残ってた姿が私に振られちゃったんです! だから翔さんのせいです!』
そ、そうなんだ……、なんかゴメン。
『わかれば良いです。 でも私は翔さんの中でやる事があるから召喚はしないようにお願いします』
ピンチになったら?
『ピンチになってもです!』
……、よっぽど召喚した時の姿を見られたく無いんだろうな……。
しばらく歩くと、巨大な大木に着いた。
「でっけー!」
その巨木は大きいだけでは無く、美しさや神々しさも感じる。
「お気に召しましたか?」
巨木の前に急に現れた背の高い精霊に思わずビックリした。
「貴方が翔さんですね?」
「はい、あなたは?」
「私は貴方達が言う所の大精霊です」
「あなたが大精霊様! お願いがあります! 仲間の精霊達を……」
俺の言葉を遮る様に大精霊様が目の前に手をかざす。
「全て知っています。 ここに来た理由もわかっています。 ですが出来ません」
「な! 大精霊様ならなんとか出来るのでは?!」
「出来るかも知れません……。 ですが、復活したとしてまた彼女達を死なせる事になるのでは?」
「そ、それは……」
「お引き取り下さい。 そして貴方の中にいる精霊もこちらに返して頂きます」
「待って下さい! 俺が強くなって彼女達を守ります!」
「彼らに勝てると?」
大精霊様が言っている彼等とはおそらく【ヴァテイント】と【ルーギィ】の事だろう。
「勝てます!」
俺は勝算も無いが、皆んなを取り戻す事を考えたら思わず言葉が出た。
「……そうですか……。 ではこちらに……」
大精霊様が巨木に手をかざすと扉が浮かび上がった。
「中にどうぞ」
言われた通りに中に入ると、そこは広いホールがあり、天井にはシャンデリア、窓からは温かな日差しが差し込み、床一面芝生の様な絨毯。
水が流れ、小さい滝まである。
「すげぇ……」
「は~……」
俺もルマも中を見て圧倒された。
木の中がこんな城の中の様になっているなんて……。
「ラジュナ、この中なら出て来て大丈夫ですよ」
大精霊様が俺に向かって声をかけると、召喚呪文を唱えていないのに魔法陣が現れ、ラジュナが出てきた。
「お久しぶりですにゃ、大精霊様」
「久しぶりねラジュナ。 その耳可愛いわよ」
「にゃへへ」
大精霊様に言われてラジュナはご満悦のよう。
階段を登り、長い廊下を歩くと玉座があるそんな部屋に入ると、木の蔓や葉で作られた玉座に大精霊様が座る。
周りには外にもいた光の玉がふわふわ沢山浮かんでいる。
「さて、翔さんにお話しがあります」
「はい」
「精霊の復活は貴方にかかっていますが、復活しても貴方との今までの記憶は全て消え、覚えていないでしょう。 それでも復活を望みますか?」
「もちろんです。 思い出ならまた作れば良いんですから」
「そうですか……。 では貴方は先程皆を守れるようになると言いましたね。それを証明して頂きます」
「どうすれば?」
「まずは彼女達を見て頂きましょう」
大精霊様が手を叩くと扉が開く。
扉から出て来たのは4人の幼女。
年は4、5歳位かな?
走って大精霊様の椅子の後ろに隠れてこっちをひょこっと見ている。
赤い髪の子、青い髪の子、白い髪の子、緑の髪の子……。
何処かで見たことが……、ある! ある筈だ!
「エルザ! シルク! マリス! シャル!」
生きててくれたのか!!
俺がいきなり名前を叫んだから、4人はビクッとしてマリスとシャルが泣き出す。
シルクは2人を泣き止ませようと頭を撫でているが、次第に自分も泣き出す。
エルザは大精霊様に抱きついている。
「大丈夫ですよ」
大精霊様は4人を懐に抱きしめると泣き止んだ。
「翔さん、大きな声を出してはいけません」
「え、でも、あの……、皆んな……生きて……」
俺も膝をついて皆んなを見ているだけで視界が歪む。
そんな俺の元にエルザがトテトテとやって来て、「何処か痛い?」と聞いてくる。
シルク、マリス、シャルもやって来て、シルクとシャルには背中を撫でられ、マリスには近くの葉っぱをちぎって俺の頬を拭いてくれる。
「好かれていますね……、見て頂いた通り、4人共、子供の様な状態です。 翔さんへの記憶も有りません。 あの戦いに敗れた後、皆光の玉となりここへ戻って来ました。 そして数日で人の姿へとなったのです。 まるでもう一度翔さんに会う為に……」
俺は4人の頭を交互に撫でながら大精霊様に問いただす。
「どうすれば皆んなは元に戻るんですか?」
「そうですね、姿だけなら1人1人に合った精霊命珠が必要となります」
「精霊命珠?」
「そうです。 火の精霊なら火の精霊命珠が必要です。 それら全てを探して持ち帰って下さい」
「それが有れば皆んなが元に戻るんですね!? 俺やります!」
「お願いします。 ではそこの妖精さん」
「は、はい! 私ですか?!」
急に指名を受けてびっくりしてる。
「貴方はここに残って4人の世話をして頂きます」
「え!? そんな……、そ、そうだ! 私の友達でどうですか? 2人いますので大精霊様のお力になれると思いますよ!」
「ふふ……、仕方無いですね。 ではお友達をお呼びしましょう」
大精霊様は指をパチンと鳴らすとピピとンパが現れた。
「え?」
「ん?」
急に呼び出された2人は状況が分かっていない様子で、辺りを見回している。
「あれ? ルマじゃないか。 なんでここに?」
「あ、妖精の剣の人……、カケルさん? なんで?」
2人共状況が把握しきれていないようだ。
「2人共、後ろ後ろ」
ルマが2人に後ろを見るように促している。
「「?」」
「うわぁ! 誰だ?」
ンパは自分の真後ろにいた人を見てびっくり。
「ルマ、こちらの方は?」
「2人共、 ごしょごしょ……、と言う訳なのよ」
「「えーーーー!!」」
「この方が大精霊様!」
「私達が大精霊様のお手伝い!!」
どう言う風に言われたのやら。
「ンパ、どうしよどうしよ」
「ピピ、落ち着け、落ち着け、まずは深呼吸だ、吸って、吸って、吸って、吸っ……て、すっ…………、ぶは~!! はー、はー……」
「ンパ、あなたが落ち着きなさいよ!」
ルマは2人を落ち着かせ、ここまでの経緯を話し、大精霊様のお手伝いをさせる事に成功した。
「では翔さん、全ての精霊命珠が集まったら妖精の森まで来て下さい。 待っていますよ」
大精霊様はそれだけ言うと、指をパチンと鳴らし、俺とルマを迷い森前まで転移させた。
ラジュナも俺の中に戻っている。
「んで、カケル、これから何処に行くの?」
ルマに言われるまで気がついていなかった……、精霊命珠って何処にあるんだ?
ラジュナ、何か知らないか?
『私も詳しくは……、でも精霊命珠は精霊の力が強く感じる場所にあるって聞いたことあります』
そうか……、ひとまずアイゼスト王国まで戻って、事の経緯を王様とマリウスさんに話してみるか。
何か知っているかも知れないしな。
俺とルマはアイゼスト王国に向けて歩き出した。
あれ? そう言えば、なんでルマがいるんだ? 妖精は契約無しに妖精の森から出られないんじゃなかったっけ?
『ルマさんは翔さんともう契約されてますよ』
え!? いつの間に?
『大精霊様に外に転移される時には既にされてましたね』
マジか……。
契約してしまっているなら仕方ない……。
「ルマ、これからよろしくな」
「当然でしょ。 やっと外に出られたんだから楽しまなくちゃ」
テンションが上がっているのか、そこら中を飛び回っている。
「おい、他の人に見られないようにしろよ」
「大丈夫よ。 そんなヘマはしないわよ~。 それに……、見てこれ」
ルマは何処からか紐の先に赤い宝石が付いた首飾りを出してきた。
「カケルにはこれを身につけてもらうからね」
「嫌だよ」
「ダメよ、これは契約の証と、私の家になるんだから」
そう言ってルマは俺の首にかけると、赤い宝石の中に入って行った。
そして直ぐに出てきた。
出入りは自由のようだ。
「どう? 凄いでしょ?」
「これ、道具袋に入れとくのはダメか?」
「ダメよ! 私が自由に出入り出来ないじゃない!」
自由に出入りされても困るんだけどな。
「アイゼスト王国に着いたら中に入ってろよ」
「わかったわよ」
歩きながら皆んなの姿を思い出す。
皆んな生きていてくれた。
絶対に精霊命珠を見つけて来てやるからな。
俺は心に固く誓うのだった。
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~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
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