37 / 72
第37話 闇市
しおりを挟む
アイジャの様子を見に、ルマも盗賊のアジトへ確認しに行った。
ルマも戻って来ないな……何かあったか!?
俺はゆっくりと砂漠を進みアジトの入口へ向かう。
そっと中を覗き込むと背中をポンッと叩かれた。
「うわっ!」
「……お前がカケルか?」
しまったバレたか! どうする? 1人位なら薙ぎ倒して侵入するか……?
腰の剣に手をかけようと身構えたが、「やめた方が良い……」 心を読んだかのようにその男は語りかけてくる。
「……こっちだ」
男に案内され、盗賊のアジトへ入っていく。
一つのテントに通されると中には……。
「あ、カケル! モグモグ……」
アイジャが奥で座って何かを食べている。
「カケル! 遅かったじゃない!」
ルマもテーブルに置かれているフルーツ盛りをつまんでいた。
「……2人共なにやってんだ?」
「ほれなん……だけどね……モグモグ……」
「口の中の食べ物を飲み込んでから喋れ」
「ん……、ゴク……、この人達、悪い人ではなかったのよ」
盗賊が悪い人では無い?
「この盗賊の頭領は前女王の近衛兵の隊長だった人よ。 お母……、女王様が亡くなってキュリス王子に近衛兵をクビにされたらしいの」
「ま、そう言うわけだ」
俺を案内したこの男が、前女王の側近だったのか。
道理で強そうなわけだ。
「王子の計画を知ってクビになったけど、仲間を連れて盗賊になったフリをして王子から腕輪を守ってたってわけ」
ルマが肩に飛んで腰を下ろす。
「アイジャ王女が次期女王になる為には、腕輪がどうしても必要だったのでな。 王子の元にあるよりは盗賊でも俺の手元にあったほうがましだからな。 腕輪が無ければアイジャ王女の身も安全なはずだ」
「ちょ! ……ちょっと! なに言ってんのよ! 私は王女なんかじゃ……」
アイジャ……やっぱりそうだよね~、知ってた。
アイジャはオロオロしながらこちらを見ている。
盗賊のこの人には直ぐに正体がバレて話しがいってるらしい。
「ち、違うの……」
「わかった、わかった。 アイジャが王女だろうと無かろうと、アイジャには変わりない。 生意気で上から目線なのがアイジャだろ!?」
「なによー!!」
アイジャに笑顔が戻り俺をポカポカ殴ってきた。
「さて、これからどうするつもりなんだ?」
テーブルを囲んでこれからの予定を話し始める。
「腕輪は儀式直前にアイジャ王女に渡す予定だったんだがな」
盗賊の頭領【トーマ】はアイジャが城を抜け出すとは思って無かったらしい。
「その儀式の日に腕輪を持ってアイジャと城に乗り込めば良いんじゃ無い?」
ルマは俺の肩に座ったまま話している。
「恐らく警備が厳重になっているだろうし、ヘタをするとアイジャが盗賊と手を組んだとして捕まる可能性がある」
「私だけ城に戻れば良いのか?」
「それもどうかな? 城の者達は王子の息がかかった者が多いはずだ。 アイジャが腕輪を盗んだとして儀式が終わるまで閉じ込められるだろうな」
「じゃあどうするの?」
「儀式直前に王子には偽物を渡し、本物をアイジャ王女が持ち儀式に入るようにすれば良い。 アイジャ王女は私の手がかかった者達が捕らえ、儀式が終わるまで閉じ込めておくと伝えておこう」
「それならアイジャちゃんも安全ね」
「なるほど、確かにそれなら王子を出し抜ける」
「決まりだな」
儀式までこのアジトで過ごすこととなった。
「でもどうしてトーマは私に協力してくれるの?」
アジトで暇そうに過ごしているアイジャは、トーマに質問している。
「前王女様には世話になってな。 自分にもしもの事があったらアイジャ王女を守ってくれと頼まれていたのだよ」
「お母様が……」
アイジャは亡き母を思い出している様子だ。
「そんな訳でアイジャ様、これからは命をかけてお使えいたします」
「様はやめて! アイジャで良いわ。 それに命をかけるなんて言わないで!」
「しかし……」
「私はまだ女王になった訳じゃないし、儀式も終わっていない。 何より民達を命をかけて守るのが王族の使命。 民達のいない王なんて意味ないわ。 民達あっての国だもの」
アイジャのその言葉に、トーマと周りにいた者含め、アイジャにひざまついた。
流石王族の血筋だな。 アイジャなら良い女王様になれるだろう。
儀式の日までまだ2週間はある。 この1週間は砂漠に出て魔物を狩ったり、トーマさんに剣の相手をしてもらっていたりした。
そして今夜、闇市が開催され、変装したアイジャと俺、ルマ、トーマさんで闇市に来ている。
オアシスより離れた山岳地帯で開催されている。
闇市の中に入るにはトンネルを抜けて行く。
トンネルの入口には大きな男か2人、通る者に話しかけている。
「いいか、中に入るまで喋るな」
トーマさんについて来た俺達は決まり事なんて知らないからな、従わないと。
「証は持ってるか?」
男が聞いてくる。
トーマさんは懐から何か取り出し、男に見せると通る事を許された。
トンネルを抜けるとかなり広い場所に様々な出店が沢山出ている。
「カケル! きっとここなら精霊命珠の情報があるはずよ!」
アイジャは精霊命珠なんて知らなかった。 その事を3日前に話してきた。
俺達に力を貸してもらう為に嘘をついた事をひたすら謝ってきたが、別に怒ったりはしないし、もとよりそうだとは思っていたし。 その話しを聞いたトーマさんが闇市の話しを持ちかけてくれた。
精霊命珠がこの闇市にあるかはわからないが、ちょっと期待せずにはいられない。
売られている物は見た事無い物ばかり、宝石、何に使うかわからない野草、瓶に入った魔物の頭や体の一部、明らかに呪われそうな武器や防具などなど。
ルマがいつもの調子で出店に近づこうとするとトーマさんに止められた。
「あまり近づくな。 妖精なんて珍しいから直ぐに誘拐されるぞ! そしてお目当て以外は商品に触れるな。 ここはやばい物が多すぎる」
ルマには念のため首飾りに入ってもらった。
確かに周りを見ると皆んな黒いフードを被っていて顔が見えない。
出店の店主も顔が見えない人ばかりだ。
「あれは?」
アイジャが大きなテントに気がつくと、その入口には見た事のないマークが入っている。
「アイジャ様、近寄らないようお願いします。 あれは奴隷市場のテントです」
「奴隷だと!」
「はい、様々な場所から集められた奴隷が競売にかけられております」
「助けないと!」
「おやめください。 なかには無理やりの者もいるかも知れませんが、事情があって奴隷落ちした者もいるでしょう。 その者が買われる所によっては良い暮らしができる為、奴隷達も納得しているはずです」
「しかし……」
「奴隷と言っても乱暴に扱われたりはしておりません。 高く売る為には状態が良く無いと値段が上がりませんし、買った方も高い買い物をしているのですから手荒に扱う事は殆どございません」
「そ、そうか……」
アイジャには刺激が強すぎたか……。
俺も色々思うが、この世界ではこれが普通なら何も言えない。
……しばらくあちこち見ていると1人の男が声をかけて来た。
「兄さん達、何かお探しで?」
この男は顔はハッキリ見せてくるが、いかにも詐欺師っぽいやらしい顔出立ちをしているな。
「まぁな」
「あっしに出来る事が有れば協力いたしますぜ。 もちろん対価は頂きやすが」
「精霊命珠って知ってますか?」
「エレメン……? なんですかそりゃ?」
「この位の宝石の用な物で、人には触れ無い物なんだが」
「触れない宝石……、もしかしてあれかなぁ……?」
男は知っている風に首を傾げる。
「何か知ってるなら、情報を買うぞ」
トーマさんは男に袋の中をチラつかせる。
「この情報は貴重なんでね、その袋じゃ足りないんで、そこの兄さんが連れていた【妖精】でいかがで?」
ルマの事を見て声をかけて来たのだろう。
「ルマは売り物じゃない!」
「……そうですか~、それは残念。 わかりました、この話は無かった事で。 ではまた」
男はすんなりと引き下がり、歩いて行ってしまった。
なんて奴だ!
俺はルマを物扱いされた事に怒りを感じていた。
「ちょっとカケル! 良かったの?」
首飾りの中で話しを聞いていたルマが飛び出して来た。
「情報とルマを交換なんてできる訳ないだろ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、このままじゃ精霊命珠の場所がわからないままよ?」
「なんとか見つけて見せるさ」
もっと良く探せば何かしらの手がかり位はあるはずだ!
トーマさんとアイジャ、俺とルマは手分けして何か情報が無いかと探し始めた。
いくつかの出店を覗いて見るが、役に立ちそうな情報は無い。
ここにも情報は無いか……。
諦めかけていた時、さっきの男がまた声をかけて来た。
「いやー、兄さん方もなかなかやりますね。 さっきの所であっしの後ろを着いてこないとは、思ってませんでしたよ」
「当たり前だろ! ルマを物扱いしやがって」
「いやいや、申し訳ねぇ、そのお詫びでもさせてくれませんかね?」
「お詫び?」
「さっきの情報ではいかがです?」
「そんな事してお前になんの徳がある?」
「いえいえ、あっしの事はいいんでさぁ、あくまでもお詫びですから。 この業界信用が1番なんでね」
「なら精霊命珠についての情報だけもらう」
「へい、ありがとうございます! では……、そのエレメなんとかは恐らく王家の墓にあると思いますぜ」
「王家の墓?」
「代々王族しか入れない墓なんですが、その墓の中にデッカい緑の宝石があると聞いたことがあるです」
「それが精霊命珠って言う保証は?」
「この盗賊やら盗人やらが集まる場所にそんな大層なお宝を持ち出した事があるって事を聞かないのはおかしか無いですか? さっき兄さんが言っていたように、人に触れないのなら納得出来ませんかね?」
「確かに……」
「でしょう!? ならこれで兄さんとあっしの取引は完了したと言うことで」
「取引?」
「あ、いやいや、お詫びは終わったと言う事でさぁ。 じゃあ、あっしはこれで失礼しやす」
男は足早に行ってしまった。 でもこれで情報が手に入った。
アイジャとトーマさんにも報告して王家の墓に行ってみないとな。
「アイジャ! トーマさん!」
待ち合わせ場所で待っていた2人にさっきの男から聞いた情報を2人に話した。
「ちょっとまてカケル、妖精はいるか?」
「ルマなら首飾りに入ってもらってるけど?」
「呼び出してみろ」
「ルマ、聞いたろ? ちょっと出てきてくれ」
首飾りにいるルマに話しかけるがルマは出てこない。
寝ちゃってるのか?
軽くノックをして再度呼んでみるが、返事は無いし、出てこない。
……まさか……。
「ここの連中はお詫びなんて事でわざわざ情報をタダで渡したりしない。 取引の契約がここでの正義だ」
「早く探さないと!」
アイジャが焦り始めたが、俺はもっと焦っている。
「くそっ! あの野郎!」
あの男を追おうとしたが「無駄だ」とトーマさんに止められた。
「でも!」
「仮に追いついたとしても、取引が完了している以上あの男は妖精を返さないだろう」
「なら力ずくでも!」
「それもやめておけ。 ここでの争いは厳禁だ」
「ならどうすんだ!!」
「私に良い考えがある」
「アイジャ! 冗談言ってる場合じゃないんだ!!」
「冗談ではない! ちゃんと取引をしてルマを取り戻せば良いのだろう? 任せておけ」
あまり信用出来ないアイジャの提案だが、トーマさんも納得している。
アジトに戻って来た俺達はアイジャの提案を聞いた。
「まず、カケルは王家の墓に行き、精霊命珠とやらを手に入れる。 そして我が儀式を終えて女王になった時、男とルマを探しだして交渉しよう。 王族との取引なら価値は高いはず」
「それまでにルマが、売り飛ばされたらどうするんだ!?」
「そう簡単には売らないでしょう。 仮にも妖精、そう簡単に売れる値段ではない。 売るならちゃんとした場所を設けるでしょう」
男の居場所もわからない、取引出来る金も無い、ならアイジャの提案にかけるしかない。
「わかった……」
「うむ、ではカケル、王家の墓から1週間で戻って来るのだぞ」
「わかった」
ルマを助ける為には時間をかけられない。
アイジャが女王様になったら直ぐ取引出来る用にする為、王家の墓から1週間で戻って来ないといけない。
王家の墓まで往復4日、墓の中で精霊命珠を見つけて持ち出すまで3日しか無い。
王家の墓はトラップや魔物もいるし、かなり広いと聞いている。
全力で挑まなくては。
「ルマ待ってろ! 必ず助ける!」
ルマも戻って来ないな……何かあったか!?
俺はゆっくりと砂漠を進みアジトの入口へ向かう。
そっと中を覗き込むと背中をポンッと叩かれた。
「うわっ!」
「……お前がカケルか?」
しまったバレたか! どうする? 1人位なら薙ぎ倒して侵入するか……?
腰の剣に手をかけようと身構えたが、「やめた方が良い……」 心を読んだかのようにその男は語りかけてくる。
「……こっちだ」
男に案内され、盗賊のアジトへ入っていく。
一つのテントに通されると中には……。
「あ、カケル! モグモグ……」
アイジャが奥で座って何かを食べている。
「カケル! 遅かったじゃない!」
ルマもテーブルに置かれているフルーツ盛りをつまんでいた。
「……2人共なにやってんだ?」
「ほれなん……だけどね……モグモグ……」
「口の中の食べ物を飲み込んでから喋れ」
「ん……、ゴク……、この人達、悪い人ではなかったのよ」
盗賊が悪い人では無い?
「この盗賊の頭領は前女王の近衛兵の隊長だった人よ。 お母……、女王様が亡くなってキュリス王子に近衛兵をクビにされたらしいの」
「ま、そう言うわけだ」
俺を案内したこの男が、前女王の側近だったのか。
道理で強そうなわけだ。
「王子の計画を知ってクビになったけど、仲間を連れて盗賊になったフリをして王子から腕輪を守ってたってわけ」
ルマが肩に飛んで腰を下ろす。
「アイジャ王女が次期女王になる為には、腕輪がどうしても必要だったのでな。 王子の元にあるよりは盗賊でも俺の手元にあったほうがましだからな。 腕輪が無ければアイジャ王女の身も安全なはずだ」
「ちょ! ……ちょっと! なに言ってんのよ! 私は王女なんかじゃ……」
アイジャ……やっぱりそうだよね~、知ってた。
アイジャはオロオロしながらこちらを見ている。
盗賊のこの人には直ぐに正体がバレて話しがいってるらしい。
「ち、違うの……」
「わかった、わかった。 アイジャが王女だろうと無かろうと、アイジャには変わりない。 生意気で上から目線なのがアイジャだろ!?」
「なによー!!」
アイジャに笑顔が戻り俺をポカポカ殴ってきた。
「さて、これからどうするつもりなんだ?」
テーブルを囲んでこれからの予定を話し始める。
「腕輪は儀式直前にアイジャ王女に渡す予定だったんだがな」
盗賊の頭領【トーマ】はアイジャが城を抜け出すとは思って無かったらしい。
「その儀式の日に腕輪を持ってアイジャと城に乗り込めば良いんじゃ無い?」
ルマは俺の肩に座ったまま話している。
「恐らく警備が厳重になっているだろうし、ヘタをするとアイジャが盗賊と手を組んだとして捕まる可能性がある」
「私だけ城に戻れば良いのか?」
「それもどうかな? 城の者達は王子の息がかかった者が多いはずだ。 アイジャが腕輪を盗んだとして儀式が終わるまで閉じ込められるだろうな」
「じゃあどうするの?」
「儀式直前に王子には偽物を渡し、本物をアイジャ王女が持ち儀式に入るようにすれば良い。 アイジャ王女は私の手がかかった者達が捕らえ、儀式が終わるまで閉じ込めておくと伝えておこう」
「それならアイジャちゃんも安全ね」
「なるほど、確かにそれなら王子を出し抜ける」
「決まりだな」
儀式までこのアジトで過ごすこととなった。
「でもどうしてトーマは私に協力してくれるの?」
アジトで暇そうに過ごしているアイジャは、トーマに質問している。
「前王女様には世話になってな。 自分にもしもの事があったらアイジャ王女を守ってくれと頼まれていたのだよ」
「お母様が……」
アイジャは亡き母を思い出している様子だ。
「そんな訳でアイジャ様、これからは命をかけてお使えいたします」
「様はやめて! アイジャで良いわ。 それに命をかけるなんて言わないで!」
「しかし……」
「私はまだ女王になった訳じゃないし、儀式も終わっていない。 何より民達を命をかけて守るのが王族の使命。 民達のいない王なんて意味ないわ。 民達あっての国だもの」
アイジャのその言葉に、トーマと周りにいた者含め、アイジャにひざまついた。
流石王族の血筋だな。 アイジャなら良い女王様になれるだろう。
儀式の日までまだ2週間はある。 この1週間は砂漠に出て魔物を狩ったり、トーマさんに剣の相手をしてもらっていたりした。
そして今夜、闇市が開催され、変装したアイジャと俺、ルマ、トーマさんで闇市に来ている。
オアシスより離れた山岳地帯で開催されている。
闇市の中に入るにはトンネルを抜けて行く。
トンネルの入口には大きな男か2人、通る者に話しかけている。
「いいか、中に入るまで喋るな」
トーマさんについて来た俺達は決まり事なんて知らないからな、従わないと。
「証は持ってるか?」
男が聞いてくる。
トーマさんは懐から何か取り出し、男に見せると通る事を許された。
トンネルを抜けるとかなり広い場所に様々な出店が沢山出ている。
「カケル! きっとここなら精霊命珠の情報があるはずよ!」
アイジャは精霊命珠なんて知らなかった。 その事を3日前に話してきた。
俺達に力を貸してもらう為に嘘をついた事をひたすら謝ってきたが、別に怒ったりはしないし、もとよりそうだとは思っていたし。 その話しを聞いたトーマさんが闇市の話しを持ちかけてくれた。
精霊命珠がこの闇市にあるかはわからないが、ちょっと期待せずにはいられない。
売られている物は見た事無い物ばかり、宝石、何に使うかわからない野草、瓶に入った魔物の頭や体の一部、明らかに呪われそうな武器や防具などなど。
ルマがいつもの調子で出店に近づこうとするとトーマさんに止められた。
「あまり近づくな。 妖精なんて珍しいから直ぐに誘拐されるぞ! そしてお目当て以外は商品に触れるな。 ここはやばい物が多すぎる」
ルマには念のため首飾りに入ってもらった。
確かに周りを見ると皆んな黒いフードを被っていて顔が見えない。
出店の店主も顔が見えない人ばかりだ。
「あれは?」
アイジャが大きなテントに気がつくと、その入口には見た事のないマークが入っている。
「アイジャ様、近寄らないようお願いします。 あれは奴隷市場のテントです」
「奴隷だと!」
「はい、様々な場所から集められた奴隷が競売にかけられております」
「助けないと!」
「おやめください。 なかには無理やりの者もいるかも知れませんが、事情があって奴隷落ちした者もいるでしょう。 その者が買われる所によっては良い暮らしができる為、奴隷達も納得しているはずです」
「しかし……」
「奴隷と言っても乱暴に扱われたりはしておりません。 高く売る為には状態が良く無いと値段が上がりませんし、買った方も高い買い物をしているのですから手荒に扱う事は殆どございません」
「そ、そうか……」
アイジャには刺激が強すぎたか……。
俺も色々思うが、この世界ではこれが普通なら何も言えない。
……しばらくあちこち見ていると1人の男が声をかけて来た。
「兄さん達、何かお探しで?」
この男は顔はハッキリ見せてくるが、いかにも詐欺師っぽいやらしい顔出立ちをしているな。
「まぁな」
「あっしに出来る事が有れば協力いたしますぜ。 もちろん対価は頂きやすが」
「精霊命珠って知ってますか?」
「エレメン……? なんですかそりゃ?」
「この位の宝石の用な物で、人には触れ無い物なんだが」
「触れない宝石……、もしかしてあれかなぁ……?」
男は知っている風に首を傾げる。
「何か知ってるなら、情報を買うぞ」
トーマさんは男に袋の中をチラつかせる。
「この情報は貴重なんでね、その袋じゃ足りないんで、そこの兄さんが連れていた【妖精】でいかがで?」
ルマの事を見て声をかけて来たのだろう。
「ルマは売り物じゃない!」
「……そうですか~、それは残念。 わかりました、この話は無かった事で。 ではまた」
男はすんなりと引き下がり、歩いて行ってしまった。
なんて奴だ!
俺はルマを物扱いされた事に怒りを感じていた。
「ちょっとカケル! 良かったの?」
首飾りの中で話しを聞いていたルマが飛び出して来た。
「情報とルマを交換なんてできる訳ないだろ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、このままじゃ精霊命珠の場所がわからないままよ?」
「なんとか見つけて見せるさ」
もっと良く探せば何かしらの手がかり位はあるはずだ!
トーマさんとアイジャ、俺とルマは手分けして何か情報が無いかと探し始めた。
いくつかの出店を覗いて見るが、役に立ちそうな情報は無い。
ここにも情報は無いか……。
諦めかけていた時、さっきの男がまた声をかけて来た。
「いやー、兄さん方もなかなかやりますね。 さっきの所であっしの後ろを着いてこないとは、思ってませんでしたよ」
「当たり前だろ! ルマを物扱いしやがって」
「いやいや、申し訳ねぇ、そのお詫びでもさせてくれませんかね?」
「お詫び?」
「さっきの情報ではいかがです?」
「そんな事してお前になんの徳がある?」
「いえいえ、あっしの事はいいんでさぁ、あくまでもお詫びですから。 この業界信用が1番なんでね」
「なら精霊命珠についての情報だけもらう」
「へい、ありがとうございます! では……、そのエレメなんとかは恐らく王家の墓にあると思いますぜ」
「王家の墓?」
「代々王族しか入れない墓なんですが、その墓の中にデッカい緑の宝石があると聞いたことがあるです」
「それが精霊命珠って言う保証は?」
「この盗賊やら盗人やらが集まる場所にそんな大層なお宝を持ち出した事があるって事を聞かないのはおかしか無いですか? さっき兄さんが言っていたように、人に触れないのなら納得出来ませんかね?」
「確かに……」
「でしょう!? ならこれで兄さんとあっしの取引は完了したと言うことで」
「取引?」
「あ、いやいや、お詫びは終わったと言う事でさぁ。 じゃあ、あっしはこれで失礼しやす」
男は足早に行ってしまった。 でもこれで情報が手に入った。
アイジャとトーマさんにも報告して王家の墓に行ってみないとな。
「アイジャ! トーマさん!」
待ち合わせ場所で待っていた2人にさっきの男から聞いた情報を2人に話した。
「ちょっとまてカケル、妖精はいるか?」
「ルマなら首飾りに入ってもらってるけど?」
「呼び出してみろ」
「ルマ、聞いたろ? ちょっと出てきてくれ」
首飾りにいるルマに話しかけるがルマは出てこない。
寝ちゃってるのか?
軽くノックをして再度呼んでみるが、返事は無いし、出てこない。
……まさか……。
「ここの連中はお詫びなんて事でわざわざ情報をタダで渡したりしない。 取引の契約がここでの正義だ」
「早く探さないと!」
アイジャが焦り始めたが、俺はもっと焦っている。
「くそっ! あの野郎!」
あの男を追おうとしたが「無駄だ」とトーマさんに止められた。
「でも!」
「仮に追いついたとしても、取引が完了している以上あの男は妖精を返さないだろう」
「なら力ずくでも!」
「それもやめておけ。 ここでの争いは厳禁だ」
「ならどうすんだ!!」
「私に良い考えがある」
「アイジャ! 冗談言ってる場合じゃないんだ!!」
「冗談ではない! ちゃんと取引をしてルマを取り戻せば良いのだろう? 任せておけ」
あまり信用出来ないアイジャの提案だが、トーマさんも納得している。
アジトに戻って来た俺達はアイジャの提案を聞いた。
「まず、カケルは王家の墓に行き、精霊命珠とやらを手に入れる。 そして我が儀式を終えて女王になった時、男とルマを探しだして交渉しよう。 王族との取引なら価値は高いはず」
「それまでにルマが、売り飛ばされたらどうするんだ!?」
「そう簡単には売らないでしょう。 仮にも妖精、そう簡単に売れる値段ではない。 売るならちゃんとした場所を設けるでしょう」
男の居場所もわからない、取引出来る金も無い、ならアイジャの提案にかけるしかない。
「わかった……」
「うむ、ではカケル、王家の墓から1週間で戻って来るのだぞ」
「わかった」
ルマを助ける為には時間をかけられない。
アイジャが女王様になったら直ぐ取引出来る用にする為、王家の墓から1週間で戻って来ないといけない。
王家の墓まで往復4日、墓の中で精霊命珠を見つけて持ち出すまで3日しか無い。
王家の墓はトラップや魔物もいるし、かなり広いと聞いている。
全力で挑まなくては。
「ルマ待ってろ! 必ず助ける!」
0
あなたにおすすめの小説
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる