俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第58話 幻夢の蝕

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 マシュールスの町より北にある洞窟で、ルマにそっくりな人間大のマルに出会う。
 記憶が無い様だが、ルマと同じ顔、同じ魔法を使い、同じ様に話す。
 これも八首斬影やしゅざんえいの罠なのだろうか? でも、本当にルマの生まれ変わりだとしたら?
 そんな事を考えながら、洞窟を進む。

「ねぇねぇ、僕の事も覚えて無い?」
「う~ん……、ごめんなさい」
「いいよ、いいよ。 僕はマリスって言うんだ。 また友達になろうよ」
「友達?」
「うん!」
 
 マリスはマルと手を繋いで歩き出した。
 マリスに頼まれて少しの間だけと、召喚したのだ。

「ねぇカケル、この先に何があるの?」
「わからないけど、もしかしたら八首斬影やしゅざんえいがいるかも知れない」
「八首斬影《やしゅざんえい》?」
「俺達、いや、この世界に住む全ての敵さ」
「そんなのがいるの?」
「ああ」

 マルは八首斬影《やしゅざんえい》の事は知らないのか?
 それとも知らないふりなのか……?
 洞窟を進むと、奥が明るい。 どうやら出口のようだ。

 洞窟を出ると、そこには青々とした木々、雪の無い草原、雲一つない青空が広がっている。

「どう言う事だ!?」
 
 山を丸々抜ける程の距離は歩いていない。
 急に雪が無くなるなんて変だ。
 また幻を見せられているのか?

「凄い綺麗」
 
 洞窟を抜けたマルは青空を始めて見た様に空を眺めている。

『翔さん、これは絶対におかしいです。 木々の息吹を感じません』
 ああ、わかってる。
 シャルも何か気になったようだ。

『翔さん! 奥から強い魔力を感じます!』
 八首斬影《やしゅざんえい》か?
『いえ、これは……、前に会った剣士の人だと思います! それと、もう一つ、どんどん弱まって行く魔力を感じます』
 魔力に敏感なラジュナは気が付いたようだ。
 この先で戦闘がある事に。

「マリス、戻ってくれ」
「わかった」
 
 マリスには魔法陣へ戻ってもらう。

「カケル、私は?」
「この先は危険だからマルはここにいてくれ」
「わかった」

 マルには洞窟の前で待っていてもらう。

 よし、行くぞ!!

 木の間を抜けて行くと、エクリシュさんと誰かが戦っている音が聞こえて来る。
 恐らく八首斬影やしゅざんえいの誰かだろう。

 少しでも手助けのために急ぎ向かう。

「なっ!」

 そこで見たのは、ジュリムさんが倒れ、エクリシュさんも片腕を失って戦っている光景だった。

「やろおーー!!」
 
 エクリシュさんの剣技は凄い。 さすがG級だ。 でもそれを難なく躱している八首斬影やしゅざんえいのスビルトは笑っている。

「そんなもんなのか!! G級さんとやら!!」
 
 攻撃を躱しながら魔力でエクリシュさんをふっと飛ばしてしまう。

 俺達も早く加勢しないと!!

『翔様まずは、わたくしを召喚して下さいませ! ジュリムさんの様子を見ますわ!!』
 わかった! 頼む!

「蒼く全てを凍てつかせし聖なる氷流よ 盟約に基づきその真なる姿を見せよ!」

 シルクを召喚し、ジュリムさんを見てもらう。
 その間に俺は剣を取り、エクリシュさんと戦っているスビルトの間に入る。

「おっと、ん……? お前……? そうか、森で会った奴か」
 
 スビルトは最後の精霊命珠エレメンタルメージュを取りに行った場所で会ったのを覚えているようだ。

「邪魔すんじゃねぇ! こいつは俺の獲物だ!!」
 
 2人の間に割って入ったのが気に入らなかったのか、エクリシュさんに剣を向けられる。

「獲物って……、協力しないで倒せる相手じゃ無い!」
「うるせぇ! お前はジュリムの様子でも見てろ! はぁっ!!」
 
 そう言ってエクリシュさんはスビルトへ向かって行く。

 エクリシュさんは片腕を失っているとは思えない程、怒涛の攻撃を繰り出している。
 そのため、俺が割って入る事が出来ない。

「翔様! ジュリムさんはもう大丈夫です!」
「良かった.、シルクありがとう」
 
 ジュリムさんをそっと寝かせ、シルクを戻す。

『この広い場所ならあたしだな。 翔、合体だ!』
 これだけ広い場所なら、確かにエルザの力が発揮出来るだろう。

「赤き紅より業火に燃えし聖なる炎 盟約に基づきその真なる姿を見せよ!」

 エルザの炎に燃えている魔法陣が現れる。

 魔法陣の中に入り、エルザと融合……、出来ない!?

 どうなってる!?
『あたしだってわからないよ!』
 これもスビルトの力か?
 融合出来ないとなると、全員召喚しても勝ち目があるか……。

『翔さん、私と融合してみてください』
 シャル、何かわかったのか?
『憶測ですか、お願いします』
 わかった。

「緑の恩恵を受けし聖なる大地よ 盟約に基づきその真なる姿を見せよ!」

 緑の魔法陣が現れると、光緑の蔦で覆われる。

 魔法陣へ入ると、融合が出来た。

「出来た! よし、エクリシュさんの手助けに行くぞ!」

 エクリシュさんは何度もスビルトの攻撃を受け、血まみれになっても攻撃の手を休めず切り掛かっている。

 スビルトはエクリシュさんと戦いながらも、俺に気がつき、こちらを見ながら相手をしている。

「お? お前が精霊使いか。 ルーギィの言ってた奴だな。 それじゃまずはこのG級を殺してから相手してやるから、こいつの相手して待ってろ」

 スビルトが俺に向かって魔法を飛ばすと、土煙の中からマルが出て来た。

「マル! なんでここに!」
「え? え? なんで? わかんないよ~」
「ここは危ない。 早くこっちへ」

 俺が近いた時、マルが俺の腹に向かって、魔力で出したナイフを突きつけて来た。

「マル! 何をするんだ!!」

 寸前の所で、地面から伸びた蔓がマルのナイフを止める。

「わ、わからないよ! 体がかってに動くんだもん!」
 
 マルは喋りながらもナイフを俺に向かって振り回して来る。
 とにかく動きを封じないと。
 蔓でマルの手足を絡め取り、動きを封じた。

『翔さん、やっぱりこの場所は幻術です』
 やっぱりか!? だが変な場所だがどう見ても本物だ。 木の感触や風もちゃんと感じるし、匂いもする。

『私が精霊命珠エレメンタルメージュでパワーアップしたからわかりますが、木々の反応が、やはりありません。 恐らくスビルトの力で幻を見せられているようです』

 と言う事は、やっぱりこのマルは罠か。
 またルマ(仮)の姿を使いやがって!!
 俺は蔓で動けない幻のマルに向かって剣先を突きつけると、マルは「なんで……」 と涙を流す。

 そんな顔しないでくれ……。

 俺の手が震える。
 2度も……、斬るのか……?

「それはやめといた方が良いわよ」
 
 突然マルの後ろからルーギィが現れた。

「ルーギィ!!」
「あら怖い。 せっかく良い事教えてあげようと思ったのに」
「何!」
「この子は、ある意味で本物って事よ」
「どう言う事だ!」
「スビルトの能力はね、幻を見せるの」
「そんな事はわかっている!」
「でもね、その幻は見ている人の思いが強ければ強い程、本物になるのよ」
 
 ルーギィは震えるマルの顔をさすりながら、話しを続ける。

「簡単に言えば、病も気からってやつかしら。 だからこの子は、あなたの思いが相当強いって事ね」
「本物……、この幻のマルは本物のルマって事か!」
「そうねぇ……でもぉ、スビルトが倒されちゃったらこの子も消えちゃうかも」
「な……」
 
 俺は一歩も動けず、その場に立ち尽くしてしまった。

「それじゃ、楽しませてね~」
 
 ルーギィはマルに纏わりついた蔦を全て消し去ると、消えた。
 そしてマルは、また俺に襲いかかってくる。

「やめるんだ! マル!」
「何が何だかわからないよ! 体が勝手に動くんだ! もう一度縛ってよ!」

 もう一度蔓で拘束する。 が、蔓を引きちぎらんとする程の力で、暴れ始める。

「マル! やめろ!」
 
 手首や足首から血が滴る。
 血が出ているって事はやはり本物なんだ。

「今、解いてやる」

『翔さん! 駄目です!』
 シャルにそう言われたが、俺にはマルがこれ以上傷つく所を見たく無い。

 拘束を解くと、マルは泣きながら攻撃してくる。

「もう私を切って! これ以上カケルに襲い掛かりたく無い!」
「くそ!」
 
 俺はマルの腕を掴み、動きを封じる。

 どうすれば良い?
 このままじゃ、マルが元には戻らない。 でもスビルトを倒すとマルが消えてしまうかも知れない。

「なんだ、もう遊びはお終いか?」
 
 スビルトがこちらに歩いて来る。

「エクリシュさんはどうした!」
「ほれ、あれだ」
 

スビルトの指す方を見ると、エクリシュさんが倒れている。

「まぁまぁ面白かったが、まだたりねぇな」
「スビルト!」
 
 俺は地面から岩の棘をスビルトに向かって飛ばす。

「つまらねぇ児戯をするんじゃねぇ!」
 
 岩の棘は全てスビルトの前で阻まれる。

「なら、これなら!」
 
 スビルトを挟む様に、地面から岩の壁を出し、挟み込む。
 スビルトを倒せばマルが消えてしまうかも知れないが、今はスビルトをどうにかしないと、ジリ貧だ。
 俺はマルをどかすと、剣を取って、岩壁に埋まっているスビルトめがけて突進する。
 スビルトはこの位で倒されはしない。

「ちょっとは面白れぇじゃねぇか」
 
 岩壁が壊され、スビルトが中から笑いながら出てくる。

 この時を狙って、剣を振り下ろした、だが振り下ろす事が出来なかった。

 マルがスビルトの前に立ちはだかったのだ。

「マル! 退いてくれ!」
「こんな奴守りたく無い。 守りたく無いのに……」
 
 泣きながらも、大の字でスビルトの前から動かない。

 く、どうすれば……。

「おい、何つまらねぇ事してんだよ!」
「がふっ!!」
 
 スビルトの腕がマルの腹を貫いている。

「マルッ!!」

 スビルトはそのままマルをぶん投げ、マルの体が転がる。
 俺は直ぐにマルの元へ駆け寄ると、シャルとの融合を解除して、シルクを召喚しようとする。

「待って……、カケル……、これでいいの……。 私は1度死んでるんでしょ……? もう一度カケルに会えただけでも、もうけ……も……の……よ……」
「マル! もしかして、ルマの記憶が!? 待ってくれ! 消えないでくれ!!」
 
 マルは俺の腕の中で光の粒となって行く。

 その光の粒は首飾りの中へ吸い込まれるように消えていった。
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