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「第一部隊、整列!」
朝靄の中、オーウェンのキビキビとした声が響き渡る。
詰め所で仮眠を取った隊員は、早朝五時に王宮の裏庭に集まった。
季節はまだ秋だが、頬に触れる空気はひんやりと冷たい。
ずらりと一列に並んだ第一部隊の端には、入隊したばかりのフィルとクリスティーナの姿もある。
この二人について、ひと晩頭を悩ませていたハリスは、結論を出せずに仕方なく流れに任せることにした。
近衛隊全五部隊が集まると、ハリスは声を張って士気を高める。
「これより西の国境、イズールを目指す。必ずや敵国の侵入を阻止し、我がコルティア国の平和を守り抜く。行くぞ!」
うおー!と皆が雄叫びを上げて馬に飛び乗る。
「フィル!クリス!俺のそばを離れるな」
振り向いて二人に声をかけると、オーウェンはハリスのすぐ後ろについた。
クリスティーナはフィルと共にオーウェンのあとを追う。
(さすがは精鋭部隊と言われるだけあるわ。すごい速さ)
乗馬には自信があったクリスティーナだが、今はついていくのが精いっぱい。
(これで敵と戦うことになれば…)
そこまで考えると、クリスティーナはゴクリと唾を飲む。
(怯んでいる場合じゃないわ。私が必ずお父様をお守りする!)
クリスティーナはグッと奥歯を噛みしめると、オーウェンの先、左手だけで手綱をさばく父の背中を見据えた。
五時間かけてようやく西の国境イズールに到着した。
町を見下ろせる高台で、砂埃を巻き上げながらハリスが馬を止める。
それに続いたクリスティーナは、眼下に広がる光景に言葉もなく呆然とする。
(酷い。こんなにも私の町と違うなんて…)
小さなレンガ造りの家はあちこちが壊され、畑や庭も荒らされている。
人の姿も見当たらず、不気味に静まり返っていた。
「住民は皆、町外れの教会に避難しているとのことです」
オーウェンの言葉を背中で聞いたハリスが頷く。
「まずは我が陸軍と合流する。行くぞ」
「はっ!」
皆はまた馬を駆り、高台を一気に下りると森の中に入った。
木の枝につけられた小さな目印を頼りに進むと、やがていくつかのテントが張られているのが見えた。
ハリスは左手を横に伸ばしてオーウェン達に待ての指示を出すと、一人で馬を降りてテントに近づく。
するとその姿を確認した陸軍の大佐が現れた。
「ジェラルド連隊長殿!」
「ピエール大佐。無事だったか?」
「はっ!しかし我が軍は、ほぼ壊滅状態。残された兵は十五人ほどです」
「なんと…」
予想以上に悪い状況に、ハリスは眉をしかめる。
「ですが、我々はただ黙ってやられた訳ではありません。敵にも同じように深手を負わせました。おそらく今は攻撃する余力も残っていないでしょう。互いに息を潜めています」
「そうか、でかした。だが向こうも同じように、味方と合流している頃だろう。いつ動き出すか分からん。こちらも気を抜かずに対策を練っておこう」
そしてハリスは、皆に休息と食事を取れと指示を出した。
漆黒の闇が広がる中、簡易的なテントの中で、クリスティーナはふと目を覚ます。
疲れのせいか、ゴツゴツとした地面に薄い毛布を敷いただけの寝床でも、いつの間にかまどろんでいたらしい。
横になったまましばらくじっと目を凝らしていると、少しずつ闇に目が慣れてきた。
隣に眠るオーウェンとフィル。
そしてその奥には父のハリスの姿もある。
夜明けと共に一気に襲撃に向かう為、今は皆、体力の回復に努めていた。
夜明けまではまだ数時間ある。
だがクリスティーナは、なぜだか胸騒ぎがして目が冴えた。
(どうしたのかしら。何かが張り詰めているような気がする。それに異様なほど静か。まるで誰もが息を潜めているみたいに…)
そこまで考えた時、テントの入り口で小さくパキッと小枝が踏まれる音がした。
目を向けると、見張りをしているはずの兵がぐらりと倒れていくのが影で分かった。
クリスティーナはハッと息を詰め、枕元の短剣をそっと握りしめる。
ゆっくりと静かにテントの入り口から誰かが身を屈めて入って来た。
(落ち着いて、落ち着くのよクリスティーナ)
己に言い聞かせながら怪しい人影を目で追う。
(敵は一人?いや、違う。テントの外にあと二人)
冷静に状況を把握しながら、テントの奥へと進んでいく人物に目を凝らす。
ハリスが寝ているすぐ後ろまで来ると、ピタリと動きを止め、右手を大きく振りかざす。
今だ!とクリスティーナは毛布をはねのけると、敵に背後から飛びついて剣を喉元に当てた。
「敵襲!」
そう叫ぶクリスティーナの声よりも一瞬早く、オーウェンとフィル、そしてハリスも飛び起きた。
あっという間にテントから飛び出したオーウェンとフィルが、外にいた敵の兵二人を捕らえて戻って来る。
そしてクリスティーナが剣を突きつけて動きを封じていたもう一人も、すぐに縄で締め上げた。
時間にして三十秒足らず。
(え?もしやみんなも起きていたの?)
確かめるまでもなく、皆は平然としながら敵の三人をテントの真ん中に横たわらせた。
「連隊長、ご無事ですか?」
「ああ、もちろん。お前達は?」
「なんともありません」
そう言ってオーウェンは、同意を求めるようにクリスティーナとフィルに顔を向ける。
二人も大きく頷いた。
「しかし、こいつら。まるで連隊長のテントがここだと最初から分かっているようでしたね。他のテントは襲われている気配もありませんから」
「そうだな。中を確認もせず、一直線に私の背後まで来た。おそらく情報が漏れている」
「どうしましょう。吐かせましょうか?」
オーウェンが、縄を口に噛ませた三人に近寄ると、三人とも怯えたようにオーウェンを見上げる。
「いや、時間の無駄だ。それより作戦を練り直そう。ここにいる四人だけでな」
そう言ってハリスはオーウェン、フィル、最後にクリスティーナと目を合わせた。
*****
三十分後。
襲撃に向かわせた三人が戻って来たのを見て、国境の敵軍の見張りは慌てて駆け寄る。
「どうだった?上手くいったのか?」
「それがまんまと嵌められた。ガセネタだったんだ。コルティアの陸軍はイズールではなく北のガルパンで応援部隊と落ち合い、夜明けと共に奇襲をかけてくる」
「なに?!本当か?それは」
「ああ。ガセネタを吹き込んだ張本人を絞め上げて吐かせた。急ぎガルパンに向かえ!あそこには将軍が待機しておられる。お守りするのだ!」
「分かった!」
見張りは急いで馬に跨ると、一目散に去っていく。
「ほい、ご苦労さん。なかなかの名演技だったぞ」
三人の背後から弓を構えたオーウェンが現れる。
「そんじゃ、仲良くお座りくだされ」
おとなしく地面に座り込む三人の手足は、互いに縄で結ばれていた。
これでは逃げようにも逃げられない。
オーウェンは更に三人を木に縛りつけると、じゃあな!と言い残して馬に跨り、一気に走り出した。
*****
その頃、北の地ガルパンでは…。
オーウェンより一足早く辿り着いたハリス、フィル、そしてクリスティーナが、敵陣を少し離れた場所から注意深く見張っていた。
そこに、息を切らせた兵が駆け込んでくる。
「た、大変です!将軍。夜明けと共にコルティアの部隊が攻め込んで来ます!」
「なに?!ここにか?」
「はい!イズールで落ち合うというのはガセネタでした。ここガルパンで陸軍と合流した応援部隊と共に、既にこちらに向かっている模様です」
「なんだと?!ここにはわずかしか兵はいないではないか。皆、イズールに向かわせ奇襲させる計画だったであろう!おのれ、誰がこんな事態を招いた!」
「も、申し訳ありません!」
頭を床にこすりつけて詫びる兵に、将軍が剣を抜く。
「この場で叩き斬ってやるわ!」
その時、また別の兵が滑り込んできた。
「将軍!敵が峠を超えて姿を現しました。直ちに避難を!」
「くそっ!」
剣を納めると、将軍はマントを翻して背を向ける。
今だ、とハリスはフィルとクリスティーナに目配せした。
「動くな!」
素早く将軍の背後に回り込んだクリスティーナが、剣を喉元に突きつけた。
フィルは剣を構えてその場にいる三人の敵を牽制する。
「おのれ、たかだかお前達二人で何が出来る。おい、私に構うな。やれ!」
将軍の言葉に、三人は一斉に剣を抜く。
「動くと将軍の命はないぞ」
クリスティーナがさらに剣を突きつけて脅すも、将軍はニヤリと笑う。
「お前ごとき、私が倒せないとでも?」
そう言うと、クリスティーナの腕を掴んでねじり上げる。
思わず力が緩んだ刹那、将軍は身を翻してクリスティーナの腕から逃れ、剣を抜いた。
それを合図に、三人も一斉にフィルに飛びかかる。
剣と剣のぶつかり合う音が響く中、ハリスはいつでも飛び出せるように、物陰に隠れながら左手で剣を抜いた。
クリスティーナは将軍の攻撃をかわしながら、冷静に反撃の機会をうかがっている。
そしてフィルもまた、三人の相手をしながら、チャンスを狙っていた。
一見相手に押され気味の劣勢に見えるが、クリスティーナもフィルも冷静だ。
闇雲に剣を振りかざしていた三人に、ついにフィルが仕掛けた。
相手の剣を受け止めると、そのまま力を込めて振り払う。
相手の手から剣が飛ばされ、将軍と対峙しているクリスティーナの足元に刺さった。
するとクリスティーナは、一瞬目を落とした後、その剣を左手で抜く。
「ええ?!」
敵に応戦しながらも、フィルは思わず声を上げてクリスティーナを見る。
「どうするつもりだ?!クリス」
「フィル、油断は禁物!」
そう言ってクリスティーナは、将軍を睨みつける。
(あんまり時間をかけると力負けしてしまうわね。そろそろ決めさせていただくわ)
左手の剣で将軍の振りかぶった剣を止めると、クリスティーナは一気に間合いを詰め、右肘を折って将軍の喉元にかざした。
ピタリと喉に触れる横向きの剣に、将軍はウッと呻いて動きを止める。
その隙に、クリスティーナは左手を大きく下からすくい上げ、将軍の右手から剣を振り飛ばした。
「へえ。やるな、クリス」
キン!と相手の剣を受け止めながら横目で見ていたフィルが口角を上げる。
「じゃあ、俺もそろそろ…」
フィルは両手で剣を構えると、右足を後ろに引いて腰を落とした。
飛びかかってくる相手の剣を受け止めると、そのままくるりと剣を返し、上に弾き飛ばす。
すかさずもう一人が剣を振り下ろすが、高い位置で受け止めてから、懐に飛び込んでみぞ落ちに肘を食らわせた。
ウグッと相手が膝を折って倒れ込む。
「そこまでだ!…って、あれ?」
部隊を率いて飛び込んできたオーウェンは、床に転がった敵の兵と将軍に剣を突きつけているクリスティーナ、そして同じく剣で兵の動きを封じているフィルを見て、キョトンとしていた。
朝靄の中、オーウェンのキビキビとした声が響き渡る。
詰め所で仮眠を取った隊員は、早朝五時に王宮の裏庭に集まった。
季節はまだ秋だが、頬に触れる空気はひんやりと冷たい。
ずらりと一列に並んだ第一部隊の端には、入隊したばかりのフィルとクリスティーナの姿もある。
この二人について、ひと晩頭を悩ませていたハリスは、結論を出せずに仕方なく流れに任せることにした。
近衛隊全五部隊が集まると、ハリスは声を張って士気を高める。
「これより西の国境、イズールを目指す。必ずや敵国の侵入を阻止し、我がコルティア国の平和を守り抜く。行くぞ!」
うおー!と皆が雄叫びを上げて馬に飛び乗る。
「フィル!クリス!俺のそばを離れるな」
振り向いて二人に声をかけると、オーウェンはハリスのすぐ後ろについた。
クリスティーナはフィルと共にオーウェンのあとを追う。
(さすがは精鋭部隊と言われるだけあるわ。すごい速さ)
乗馬には自信があったクリスティーナだが、今はついていくのが精いっぱい。
(これで敵と戦うことになれば…)
そこまで考えると、クリスティーナはゴクリと唾を飲む。
(怯んでいる場合じゃないわ。私が必ずお父様をお守りする!)
クリスティーナはグッと奥歯を噛みしめると、オーウェンの先、左手だけで手綱をさばく父の背中を見据えた。
五時間かけてようやく西の国境イズールに到着した。
町を見下ろせる高台で、砂埃を巻き上げながらハリスが馬を止める。
それに続いたクリスティーナは、眼下に広がる光景に言葉もなく呆然とする。
(酷い。こんなにも私の町と違うなんて…)
小さなレンガ造りの家はあちこちが壊され、畑や庭も荒らされている。
人の姿も見当たらず、不気味に静まり返っていた。
「住民は皆、町外れの教会に避難しているとのことです」
オーウェンの言葉を背中で聞いたハリスが頷く。
「まずは我が陸軍と合流する。行くぞ」
「はっ!」
皆はまた馬を駆り、高台を一気に下りると森の中に入った。
木の枝につけられた小さな目印を頼りに進むと、やがていくつかのテントが張られているのが見えた。
ハリスは左手を横に伸ばしてオーウェン達に待ての指示を出すと、一人で馬を降りてテントに近づく。
するとその姿を確認した陸軍の大佐が現れた。
「ジェラルド連隊長殿!」
「ピエール大佐。無事だったか?」
「はっ!しかし我が軍は、ほぼ壊滅状態。残された兵は十五人ほどです」
「なんと…」
予想以上に悪い状況に、ハリスは眉をしかめる。
「ですが、我々はただ黙ってやられた訳ではありません。敵にも同じように深手を負わせました。おそらく今は攻撃する余力も残っていないでしょう。互いに息を潜めています」
「そうか、でかした。だが向こうも同じように、味方と合流している頃だろう。いつ動き出すか分からん。こちらも気を抜かずに対策を練っておこう」
そしてハリスは、皆に休息と食事を取れと指示を出した。
漆黒の闇が広がる中、簡易的なテントの中で、クリスティーナはふと目を覚ます。
疲れのせいか、ゴツゴツとした地面に薄い毛布を敷いただけの寝床でも、いつの間にかまどろんでいたらしい。
横になったまましばらくじっと目を凝らしていると、少しずつ闇に目が慣れてきた。
隣に眠るオーウェンとフィル。
そしてその奥には父のハリスの姿もある。
夜明けと共に一気に襲撃に向かう為、今は皆、体力の回復に努めていた。
夜明けまではまだ数時間ある。
だがクリスティーナは、なぜだか胸騒ぎがして目が冴えた。
(どうしたのかしら。何かが張り詰めているような気がする。それに異様なほど静か。まるで誰もが息を潜めているみたいに…)
そこまで考えた時、テントの入り口で小さくパキッと小枝が踏まれる音がした。
目を向けると、見張りをしているはずの兵がぐらりと倒れていくのが影で分かった。
クリスティーナはハッと息を詰め、枕元の短剣をそっと握りしめる。
ゆっくりと静かにテントの入り口から誰かが身を屈めて入って来た。
(落ち着いて、落ち着くのよクリスティーナ)
己に言い聞かせながら怪しい人影を目で追う。
(敵は一人?いや、違う。テントの外にあと二人)
冷静に状況を把握しながら、テントの奥へと進んでいく人物に目を凝らす。
ハリスが寝ているすぐ後ろまで来ると、ピタリと動きを止め、右手を大きく振りかざす。
今だ!とクリスティーナは毛布をはねのけると、敵に背後から飛びついて剣を喉元に当てた。
「敵襲!」
そう叫ぶクリスティーナの声よりも一瞬早く、オーウェンとフィル、そしてハリスも飛び起きた。
あっという間にテントから飛び出したオーウェンとフィルが、外にいた敵の兵二人を捕らえて戻って来る。
そしてクリスティーナが剣を突きつけて動きを封じていたもう一人も、すぐに縄で締め上げた。
時間にして三十秒足らず。
(え?もしやみんなも起きていたの?)
確かめるまでもなく、皆は平然としながら敵の三人をテントの真ん中に横たわらせた。
「連隊長、ご無事ですか?」
「ああ、もちろん。お前達は?」
「なんともありません」
そう言ってオーウェンは、同意を求めるようにクリスティーナとフィルに顔を向ける。
二人も大きく頷いた。
「しかし、こいつら。まるで連隊長のテントがここだと最初から分かっているようでしたね。他のテントは襲われている気配もありませんから」
「そうだな。中を確認もせず、一直線に私の背後まで来た。おそらく情報が漏れている」
「どうしましょう。吐かせましょうか?」
オーウェンが、縄を口に噛ませた三人に近寄ると、三人とも怯えたようにオーウェンを見上げる。
「いや、時間の無駄だ。それより作戦を練り直そう。ここにいる四人だけでな」
そう言ってハリスはオーウェン、フィル、最後にクリスティーナと目を合わせた。
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三十分後。
襲撃に向かわせた三人が戻って来たのを見て、国境の敵軍の見張りは慌てて駆け寄る。
「どうだった?上手くいったのか?」
「それがまんまと嵌められた。ガセネタだったんだ。コルティアの陸軍はイズールではなく北のガルパンで応援部隊と落ち合い、夜明けと共に奇襲をかけてくる」
「なに?!本当か?それは」
「ああ。ガセネタを吹き込んだ張本人を絞め上げて吐かせた。急ぎガルパンに向かえ!あそこには将軍が待機しておられる。お守りするのだ!」
「分かった!」
見張りは急いで馬に跨ると、一目散に去っていく。
「ほい、ご苦労さん。なかなかの名演技だったぞ」
三人の背後から弓を構えたオーウェンが現れる。
「そんじゃ、仲良くお座りくだされ」
おとなしく地面に座り込む三人の手足は、互いに縄で結ばれていた。
これでは逃げようにも逃げられない。
オーウェンは更に三人を木に縛りつけると、じゃあな!と言い残して馬に跨り、一気に走り出した。
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その頃、北の地ガルパンでは…。
オーウェンより一足早く辿り着いたハリス、フィル、そしてクリスティーナが、敵陣を少し離れた場所から注意深く見張っていた。
そこに、息を切らせた兵が駆け込んでくる。
「た、大変です!将軍。夜明けと共にコルティアの部隊が攻め込んで来ます!」
「なに?!ここにか?」
「はい!イズールで落ち合うというのはガセネタでした。ここガルパンで陸軍と合流した応援部隊と共に、既にこちらに向かっている模様です」
「なんだと?!ここにはわずかしか兵はいないではないか。皆、イズールに向かわせ奇襲させる計画だったであろう!おのれ、誰がこんな事態を招いた!」
「も、申し訳ありません!」
頭を床にこすりつけて詫びる兵に、将軍が剣を抜く。
「この場で叩き斬ってやるわ!」
その時、また別の兵が滑り込んできた。
「将軍!敵が峠を超えて姿を現しました。直ちに避難を!」
「くそっ!」
剣を納めると、将軍はマントを翻して背を向ける。
今だ、とハリスはフィルとクリスティーナに目配せした。
「動くな!」
素早く将軍の背後に回り込んだクリスティーナが、剣を喉元に突きつけた。
フィルは剣を構えてその場にいる三人の敵を牽制する。
「おのれ、たかだかお前達二人で何が出来る。おい、私に構うな。やれ!」
将軍の言葉に、三人は一斉に剣を抜く。
「動くと将軍の命はないぞ」
クリスティーナがさらに剣を突きつけて脅すも、将軍はニヤリと笑う。
「お前ごとき、私が倒せないとでも?」
そう言うと、クリスティーナの腕を掴んでねじり上げる。
思わず力が緩んだ刹那、将軍は身を翻してクリスティーナの腕から逃れ、剣を抜いた。
それを合図に、三人も一斉にフィルに飛びかかる。
剣と剣のぶつかり合う音が響く中、ハリスはいつでも飛び出せるように、物陰に隠れながら左手で剣を抜いた。
クリスティーナは将軍の攻撃をかわしながら、冷静に反撃の機会をうかがっている。
そしてフィルもまた、三人の相手をしながら、チャンスを狙っていた。
一見相手に押され気味の劣勢に見えるが、クリスティーナもフィルも冷静だ。
闇雲に剣を振りかざしていた三人に、ついにフィルが仕掛けた。
相手の剣を受け止めると、そのまま力を込めて振り払う。
相手の手から剣が飛ばされ、将軍と対峙しているクリスティーナの足元に刺さった。
するとクリスティーナは、一瞬目を落とした後、その剣を左手で抜く。
「ええ?!」
敵に応戦しながらも、フィルは思わず声を上げてクリスティーナを見る。
「どうするつもりだ?!クリス」
「フィル、油断は禁物!」
そう言ってクリスティーナは、将軍を睨みつける。
(あんまり時間をかけると力負けしてしまうわね。そろそろ決めさせていただくわ)
左手の剣で将軍の振りかぶった剣を止めると、クリスティーナは一気に間合いを詰め、右肘を折って将軍の喉元にかざした。
ピタリと喉に触れる横向きの剣に、将軍はウッと呻いて動きを止める。
その隙に、クリスティーナは左手を大きく下からすくい上げ、将軍の右手から剣を振り飛ばした。
「へえ。やるな、クリス」
キン!と相手の剣を受け止めながら横目で見ていたフィルが口角を上げる。
「じゃあ、俺もそろそろ…」
フィルは両手で剣を構えると、右足を後ろに引いて腰を落とした。
飛びかかってくる相手の剣を受け止めると、そのままくるりと剣を返し、上に弾き飛ばす。
すかさずもう一人が剣を振り下ろすが、高い位置で受け止めてから、懐に飛び込んでみぞ落ちに肘を食らわせた。
ウグッと相手が膝を折って倒れ込む。
「そこまでだ!…って、あれ?」
部隊を率いて飛び込んできたオーウェンは、床に転がった敵の兵と将軍に剣を突きつけているクリスティーナ、そして同じく剣で兵の動きを封じているフィルを見て、キョトンとしていた。
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