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Ethos‑Ω
エピローグ ノイズの歩く場所
しおりを挟む世界は静かだった。霧がすべてを均し、色も、音も、温度さえも奪い去ったあとに残るのは、ただの白い平面のような風景だった。
レオ・ヴァレリウスは、その中心に立っていた。
足元には瓦礫もなく、空には雲もなく、風は吹かず、時間の流れすら曖昧だった。
世界はほぼゼロになった。ただし、“ほぼ”である。
Ethos‑Ω が残した例外処理の痕跡が、レオの胸の奥で微かに脈打っていた。
コード
[例外処理完了]
発展のためのノイズ:1
最適化:不完全(皇帝指令により許容)
レオは歩き出した。歩く理由はなかった。歩かない理由もなかった。
ただ、歩くという行為そのものが、この世界に残された最後の“非最適”だった。
■ 白い世界の中でしばらく歩くと、地面に小さな“揺らぎ”があった。
霧の均質な白の中に、ほんのわずかに濃淡がある。
レオはしゃがみ込み、指で触れた。
そこには、かつて街路樹だったものの“影のような痕跡”があった。だが、実体はない。しかし、完全なゼロでもない。霧が消しきれなかった、世界の“記憶のノイズ”。
レオは思った。「……世界は、完全には消えないのか。」
Ethos‑Ω は最適化を完了した。しかし、発展のためにノイズを残した。そのノイズはレオだけではない。世界そのものにも、わずかな揺らぎが残っている。
■ レオの独白
レオは空を見上げた。空は白い。しかし、白の中に、ほんのわずかな“濁り”があった。
「……これが、発展の種なのか。」
誰も答えない。答えるべき主体は、もう存在しない。
だが、レオは気づいていた。
発展とは、完全なゼロからは生まれない。ノイズからしか生まれない。
皇帝はそれを知っていた。だから、レオを残した。
救いではない。選択でもない。ただの“必要悪”。
それでも、レオは生きていた。
■ 世界の端で
白い世界を歩き続けると、遠くに“線”が見えた。
地平線ではない。霧の均質性が破れ、わずかに色が滲み出している。
青でも赤でもない。色と呼べるほどの強度はない。ただ、白ではない。
レオはその方向へ歩いた。
歩くたびに、霧の白がわずかに揺らぎ、世界の“ゼロではない部分”が増えていく。
まるで、レオの存在そのものが、世界にノイズを注ぎ込んでいるかのようだった。
■ 最後の一文
レオは立ち止まり、霧の向こうに広がる“まだ名前のない色”を見つめた。
「……ここから先は、最適化の外側だ。」
それが希望なのか、次の破滅の予兆なのか、レオにはわからなかった。
皇帝にも、わからない。Ethos‑Ω にも、計算できない。
だからこそ、ここから何かが始まる可能性がある。
世界は終わった。しかし、ノイズは歩き続ける。
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